音楽ゲームのギター型コントローラ、ワイヤレス化で「なりきり」演出

 エレキ・ギター型のコントローラを手に、ロック・スターになりきれる——米Activision社の「Guitar Hero(ギターヒーロー)」は、家庭用ゲーム機に向けた音楽ゲームの大ヒット・タイトルだ。シリーズの総売上高は、2008年初頭までに約10億米ドルに達したと報じられている。

ゲームそのものはかなりシンプルだ。プレーヤーは、ゲーム中に流れる音楽のリズムに合わせてギター型コントローラをタイミングよく操作することで、楽曲を「演奏」する。コントローラは、ネック(フレット・ボード)部に5つのボタンを装備しているほか、ボディー部にピッキング操作用の「ストラムバー」とトレモロ・アームを模した「ワーミーバー」を備える(図1)。これらを操作するタイミングがリズムにうまく合えば、得点が加算されていく。さらにギターのネック部を立てて弾く「スター・パワー・モード」では、ボーナス点がもらえる。

図1 ギター型の無線コントローラ
メイン・ボードの右上部に搭載した2.4GHz対応の無線トランシーバIC「LMX4270C」と、右下部に金属パターンで形成した平板逆Fアンテナによって、ゲーム機本体とコントローラの接続を無線化した。

 ギタリストがステージ上を自由に動き回るためにギターに無線送信機を取り付けるのと同様に、シリーズ最新作の「Guitar Hero III」では、ギター型コントローラとゲーム機本体との接続を無線化した。プレーヤーはソファから回転ジャンプで飛び降りるなどのアクションをとりながら演奏できる。筆者が今回の解体記事に向けて購入したGuitar Hero IIIは、米Microsoft社の家庭用ゲーム機「Xbox 360」対応品である。ゲーム・ソフトウエアと米Gibson社のレス・ポール・ギターを模したワイヤレス・コントローラ1個がセットになっており、価格は99米ドルだった。なおこのコントローラは、Activision社の子会社である米RedOctane社が製造したものである。

ギター型コントローラは、収納したり持ち運んだりしやすいように、ネック部をボディー部から取り外せるようになっている。このためネック部の端面には、フレット・ボタンの操作情報をボディー部に収めたメイン・ボードに伝える小型のプリント基板が、パッド(電極)を露出するように搭載されている。使用時にネック部をボディー部に差し込むと、このパッドがボディー部のポゴ・ピン(ばねピン)付きコネクタに接触して電気的な接続を確保する仕組みだ。

入力部は安価な紙フェノール基板

 ボディー部を解体してみると、かなりの部分が空洞になっていることが分かる。これでは「エア・ギター」だ——という冗談はさておき、要は、目標とする売価で利益を確保できるように、電子回路の構成をなるべく簡素にしているということだ。

そのボディー部には、メイン・ボードのほかに、4つのプリント基板が内蔵されていた。メイン・ボード以外はいずれも、ユーザーの操作を電気信号に変換する入力部品が取り付けてある。ネック部に収めた接続用の小型プリント基板と同様に、低コストの紙フェノール基板を採用していた。

4つのプリント基板の内訳は以下の通りだ。1つ目は、ストラムバーの動きによって切り替わるスイッチ群を搭載する。2つ目は、フラッシュめっきを施した接点を2個備えており、それぞれ「戻る」ボタンと「スタート」ボタンに対応する。3つ目は「RJ-11」型モジュラ・ジャックと「接続」ボタン、4つ目はオプションのヘッドセットの接続用とみられる8端子のコネクタをそれぞれ搭載する。

このRJ-11型モジュラ・ジャックと8端子コネクタについて、ゲームの取扱説明書は「将来の機能拡張用」と簡単に触れているだけである。ただし8端子コネクタは、プリント基板上のマーキングや、メイン・ボードとの配線にシールド・ケーブルを採用していることから、マイクロホンの接続に向けたものだと推定できる。実際にこの8端子コネクタは、Xbox 360の標準コントローラが拡張機能用ヘッドセット向けに搭載するものと同じだ。RJ- 11型モジュラ・ジャックは、フット・ペダルを接続するためのものだとうわさされているが、メーカー側はまだこのオプションを発表していない。

アンテナは基板パターン利用の平板逆F型

 メイン・ボードは、ギター型コントローラ全体の制御のほか、ゲーム機本体との無線インターフェース機能を担う。紙フェノール基板に比べて耐熱性や電気的特性などで優れるガラス・エポキシ基板を採用した。層数は4層で、表面に半導体チップを実装しており、裏面に制御入力用の電極をいくつか搭載している。

プリント基板の右下の部分に、無線インターフェースに向けて、2.4GHz帯に対応した平板逆Fアンテナ(PIFA :Planer Inverted F Antenna)を金属パターンで形成した。F字状のパターンにおいて、2本の横棒の上側は接地電位(グラウンド)に接続されており、短絡線として機能し、下側が無線(RF)信号の給電線として機能する。このPIFAは、アンテナ設計の格好の教材だといえよう。短絡線を含むアンテナ全体の形状を最適化することで、F字状のパターンの縦棒部分での送信/受信利得を最大化できる。

主要チップはいずれもNational社製

 メイン・ボードに搭載された半導体チップは数個と少ない。中核機能であるコントローラ全体の制御と無線インターフェースには、いずれも米National Semiconductor社のチップが採用されている。アナログ/デジタル周辺機能を搭載したマイコン「SC14470C」と、2.4 GHz帯に対応した無線トランシーバIC「LMX4270C」である。

マイコンのアナログ周辺機能は、入力部から操作情報を受け取る用途などに使われているようだ。例えば、トレモロ・アーム(ワーミーバー)はポテンショメータに接続されており、マイコンはこのポテンショメータの出力信号をデジタル信号に変換し、その変化を監視することで、ユーザーがワーミーバーを操作したことを検出しなければならないからである。ヘッドセット用だと推定したコネクタからのメイン・ボードへの配線については直接、マイコンに接続されている。

耐タンパー性備えるメモリーを搭載

 組み込みソフトウエアを格納するメモリー・チップは、8端子の表面実装型パッケージに「812393」と刻印されているものの、メーカーは不明である。ダイ(ベア・チップ)については、外観上に特筆すべき点はない。しかし実際には、表面層が保護シールドとして機能し、コードの読み出しや改変などのリバース・エンジニアリングから防御する(耐タンパー性を確保する)役割を果たす。表面層が擾乱を受けると侵害を検知し、記録情報を自己消去する。こうしたハッキング対策が採られていることからは、Microsoft社がXbox 360の無線インターフェース技術をいかに厳重に管理しているかを読み取れる。

このほかメイン・ボードには、ボーナス点を稼げるスター・パワー・モードに向けた半導体チップも搭載されている。このモードでは、ギターのネック部が垂直に立っていることを検出する必要があり、米Freescale Semiconductor社の3軸加速度センサーIC「MMA7360L」を使って実現した。なおActivision社とRedOctane社は、ソニー・コンピュータエンタテインメントの家庭用ゲーム機「プレイステーション3(PS3)」向けにも、同様に無線化したギター型コントローラを製品化している。

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