トランジスタを生んだベル研究所が半導体の研究から撤退
1974年にトランジスタを発明した、William ShockleyとJohn Bardeen、Walter Brattainの3名である(画像のクリックで拡大します)。出典:フランスAlcatel-Lucent社/米Bell Laboratories
米Bell Laboratories(ベル研究所)が半導体チップの研究から撤退する。2008年8月29日(米国時間)に表明した。
同研究所は現在、仏Alcatel社と米Lucent Technologies社が2006年11月に合併して誕生した仏Alcatel-Lucent社の傘下にある。過去6人ものノーベル物理学賞受賞者を輩出してきた。ただし、同研究所が半導体事業を分離独立させて以来、この6年間で材料科学や半導体デバイス物理の研究グループは衰退の一途をたどってきた。今や、量子コンピュータや高速エレクトロニクス、ナノテクノロジなどを研究する小規模なグループが残るだけである。
同研究所の半導体研究で最もよく知られる業績は、トランジスタの発明である。1945年に、物理学者のWilliam Shockley(ウィリアム・ショックレー)率いる固体物理グループ(Solid State Physics Group)を結成し、真空管の代替になる素子の開発に取り組んだ。
同研究所のバイス・プレジデントで研究主幹(Head of Research)を務めるGee Rittenhouse氏は、「当研究所が材料科学や半導体デバイス物理の研究分野から手を引いたのは事実である。これは半導体事業から撤退した結果である。ただし、基礎研究には引き続き取り組んでおり、研究所全体で活発に研究を続けている」と話した。
さらに同氏は、「米国ニュージャージー州のマリーヒル(Murray Hill)にあるCMOSチップの製造工場を閉鎖した。高性能の製造ラインだけを保有し続ける方針である。この製造ラインはGaAs(ガリウムひ素)チップや、カスタム対応部品、光学部品などに使う」と述べている。
同研究所は現在、全世界で約1000名の研究者を雇用しており、年間の研究開発予算は20億米ドル弱に達する。ほとんどの事業はニュージャージー州の本部で行われているが、パリやドイツ、アイルランド、インド、中国などにも研究開発拠点を擁している。
市場調査会社である米ABI Research社でリサーチ・ディレクタを務めるLance Wilson氏は、「ベル研究所の歴史を振り返ると、半導体研究が始まった1940年代後半は、その分野の研究のかなりの部分を同研究所がけん引していた。しかし現在、半導体研究は世界中の大学や企業で広く行われている。もはや単一の機関が半導体の研究を独占する時代ではない。つまり現代では、ある機関が撤退したからといって、世界における半導体研究に大きな影響が及ぶことはない」と指摘する。
ベル研究所のRittenhouse氏は、同研究所の今後の活動について、「無線やネットワーク、光学、コンピュータ・サイエンスの各分野の基礎研究に加えて、物理学の基礎研究も続けていく。ただし最も注力する分野は、量子コンピュータと高速エレクトロニクス、ナノテクノロジである」とした。さらに同氏は、「直接的な成果が期待できない段階の研究案件への支援は続けるが、これまでに比べて規模は縮小する。例えば、かつて当研究所は天文学の分野の研究も手掛けていたが、現在では手を引いている。現在は、成功の道筋が見えている研究に焦点を絞っている」と述べている。
PR










