WirelessHDの仕様が公開、2008年下半期にも対応製品登場へ

発表された仕様に対する適合性/相互接続性に関する評価試験に通過した機器にロゴを付与する。

WirelessHD ConsortiumでChairmanを務めるJohn Marshall氏。WirelessHD技術の普及に強い自信をみせた。

 「WirelessHD Consortium」は2008年1月、最大4Gビット/秒と高いデータ伝送速度を実現する60GHz帯利用の無線通信インターフェース仕様「WirelessHD 1.0」を策定したと発表した。物理層からアプリケーション層までを規定したもので、DVDプレーヤやセットトップ・ボックス、高品位(HD)テレビなどの映像/オーディオ機器間を接続する用途を想定する。1080p形式のHD映像信号を圧縮せずに伝送可能だ。「UWB技術を利用したWireless HDMI方式などに比べて、高画質化で低遅延の映像伝送を実現できる。それでいて、チップ・コストは同程度である」(WirelessHD ConsortiumでChairmanを務めるJohn Marshall氏)。まず、HDTVやDVDプレーヤ、セットトップ・ボックスなど民生機器のHDMIコネクタに取り付けるアダプタが2008年下半期に登場する見込みだ。その後、「2009年には今回発表したインターフェースを備えた民生機器が続々と販売されるだろう」(同氏)。試作機の開発もすでに進んでいるという。

2008年半ばに評価試験を開始
 WirelessHDの技術概要はすでに公表されており、これまでは見通し外(NLOS:Non Line of Sight)での安定したデータ伝送について懸念が指摘されていた。さらに、米映画協会(MPAA:Motion Picture Association of America)や米ハリウッドの映画会社などから著作権を保護する技術を盛り込むよう、強く要求されていた。今回の仕様策定に当たって、こうした懸念を解決する方策が盛り込まれた。

 見通せない機器間でも安定してデータを伝送できるようにするため、フェーズドアレイを利用した適応アンテナ技術を採用した。60GHz帯の電波は直進性が強い。このため、送信電波(伝送波)が何らかの障害物に遮られると、安定してデータを伝送することが難しくなる。策定された仕様では、HD映像コンテンツを伝送する役割を果たす伝送波のほかに、別チャネルの無指向の電波を使って、機器間で制御信号をやりとりする。この制御信号を利用して、HD映像の伝送波の利得またはSN比が常に最大になるようにアンテナの指向性を動的に制御する。「送信側機器と受信側機器の間に障害物があっても壁や床、天井などで反射する伝送波を使って、安定して高いデータ伝送速度を確保できる」(John Marshall氏)。

 一方、映像コンテンツの著作権保護に関する対応策については、3つの技術を採用した。1つ目は、デジタル著作権保護技術として「DTCP(Digital Transmission Content Protection)」。2つ目は、暗号化技術として128ビットのAES方式。3つ目は、映像コンテンツの伝送範囲を制限する「proximity control」と呼ぶ機能である。これらのうち、proximity controlは、電波の送信対象を、ある一定距離以内にある機器に限定する機能である。遠くに設置した機器よりも近くに設置した機器の方が制御信号を短時間で戻すことを利用した。

 そのほかの仕様はすでに公表されていた通りだ。すなわち、日本では59G〜66GHz、米国や韓国などでは57G〜64GHzと広い帯域を使って、4Gビット/秒と高いデータ伝送速度を実現する。データ伝送距離は10m程度である。

 発表された仕様に対する適合性および相互接続性に関する評価試験は、2008年半ばに開始する予定だ。「評価試験の方法や内容の詳細を策定した後、複数の独立したテスト・センターで評価試験を実施できるようにする」(同氏)。今回の仕様を採用予定の企業は、2007年12月時点で40社に達したという。チップ・セットは、複数の半導体ベンダーから提供される見込みである。なお、当初予定されていた発表時期は、2007年春ころだった。大幅に遅れた理由について同氏は、「関係団体/機関との仕様策定に向けた調整作業に時間を要したため」と説明し、技術的な問題ではないことを強調した。

(前川慎光:EE Times Japan)


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