「どこでも映像を楽しめる」、ロケフリ機器内部を解き明かす
放送中のテレビ番組や録画した映像コンテンツを宅内のどこにいても、さらには世界中のどこにいても楽しめる—。テレビやビデオを見るのが大好きな人にとっては夢のような話だろう。インターネット回線を介して映像コンテンツを遠く離れた端末に配信する、ソニーの「ロケーションフリー」というブランドを冠したネットワーク機器を使えば、この夢のような話が実現可能だ。
「どこにいても映像コンテンツを楽しむ」というコンセプトは、米Sling Media社が2005年に発売した「SlingBox」というネットワーク機器によって広く普及した。しかし、このコンセプトを実現する機能そのものは、それよりも前に実用化されていた。一般には、ソニーが2004年に製品化した機器が初めてだとされている。製品化の歴史がどうであれ、これらの機器はネットワークにさえつながっていれば、利用者がどこにいても宅内にいるかのように映像コンテンツを扱い、楽しむことを可能にするものだ。
線LAN機能を新たに搭載
ソニーのロケーションフリー・ブランドの第4世代品に相当する「LF-V30」の販売価格は250米ドルである。インターネットに接続する手段として、イーサネットに加えて、無線LAN(IEEE 802.11a/b/g)を用意したことが特徴だ。無線LANのアクセス・ポイントとしても、クライアントとしても使える。これら2つの動作モードは、スイッチの切り替えで、簡単に変更可能である。このほか、赤外線通信機能を搭載しており、AV機器をリモコンで操作できるという特徴もある。
競合他社品との違いは、ソニーの携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」にも映像コンテンツをストリーミング配信できることにある。PSPだけでなく、ソニーの関連会社である英Sony Ericsson社が製造したスマート・フォン「P990i」や、米Microsoft社のOS「Windows Mobile 6.0」を搭載した携帯電話機にも映像コンテンツを配信可能だ。さらに最近では、配信された映像を見るために必要なソフトウエアが、ソニーのノート・パソコン「VAIO」に、あらかじめインストールされている。
このネットワーク機器には、セットトップ・ボックスやデジタル・ビデオ・レコーダ(DVR)、DVDレコーダなどから高品位(HD)の映像信号を入力できる。しかし、入力されたHD映像をノート・パソコンなどの端末にストリーミング配信する際には、画素数をQVGA(320×240)に落としてしまう。
2種類の基板で構成
このネットワーク機器の筐体は、辞書ほどの大きさである。筐体の前面には動作状態を表示するランプや操作スイッチ、背面には映像信号を入力したり、この機器をネットワークに接続したりするための各種端子がある。一方、筐体の内部はやや複雑だ。映像信号を入出力する役割を担うインターフェース基板と、ネットワークに接続するための半導体チップや映像処理用プロセッサなどを実装したメイン基板がある(図1)。
図1 インターネットを介して映像を配信
左上にあるのが、ソニーのロケーションフリー・ブランドの第4世代品「LF-V30」である。ネットワークさえつながっていれば、どこからでも映像コンテンツを楽しむことができる。右上段は、映像信号を入出力する役割を担うインターフェース用の基板。左中段にあるのは、ネットワークに接続するための半導体チップや映像を処理するプロセッサなどを実装したメイン基板で、mini PCI規格に準拠したインターフェースを備えた無線LANカードを差し込んだ状態である。右下段はこれの裏面。右中段は無線LANカードである。
インターフェース基板は、コンポーネント形式またはコンポジット形式に対応した映像/オーディオ信号入力用RCA端子と、Sビデオ信号を入力するためのS端子を備えている。この端子から取り込んだ映像信号を処理するのは、ブースト/バッファ機能を実現する新日本無線の3つの半導体チップである。具体的には、6チャネルのビデオ・アンプIC「NJM2566」と、2つのデュアル・オペアンプIC「NJM4558」だ。
一方、比較的大型のメイン基板には、プロセッサやマイコンをはじめ、多くの半導体チップが実装されている。mini PCI規格に準拠したコネクタを備えた無線LANカードと組み合わせた構成を採る。メイン基板には、この無線LANカードを差し込むソケットとイーサネット用端子が用意されている。イーサネット・インターフェースを構成するのは、伊仏合弁STMicroelectronics社の10M/100Mビット/秒対応イーサネット物理層(PHY)送受信IC「STE100」と、イーサネットMAC層の処理を担う、東芝の64ビットRISCプロセッサ「TMPR4938」である。
このRISCプロセッサは、無線LANカードとのインターフェース処理やネットワーク・プロセッサとしての役割も担う。主記憶には、韓国Samsung Electronics社のモバイルSDRAM「K4M283233」を2つ利用した。記憶容量は合計32Mバイトである。このほか、プログラム・コードの格納用にSamsung Electronics社のNAND型フラッシュ・メモリーが実装されている。記憶容量は64Mバイトである。ほかに、NECエレクトロニクスの8ビット・マイコン「μPD78F0514」も使われている。これは、機器全体の動作管理や利用者が操作するスイッチの入力処理を担う。
インターフェース基板からメイン基板に入力された映像信号はまず、オランダNXP Semiconductors社の映像/オーディオ・デコーダIC「SAA7136AE」で処理される。どの半導体チップがその次の段階の処理を担当しているか分かりにくい。恐らく、米Texas Instruments社の映像処理用DSP「TMS320DM340」が、スケーリング処理や画質向上を目的とした映像処理を担当しているようだ。このDSPの主記憶として、台湾ProMOS Technologies社のDDR対応SDRAMが外付けされている。記憶容量は32Mバイトである。
PR









