実物模した恐竜ロボットPleo、4本脚と2つの「ARM」で進化する

 米Ugobe社の恐竜型ロボット「Pleo(プレオ)」は、ソニーの犬型ロボット「AIBO」の「足跡」に続く個人向け玩具である。ソニーが1999年6月に発売したAIBOと同様に学習能力を有しており、時間の経過とともに進化することが特徴だ。購入した当初は生まれたばかりの子供という設定で、飼い主との交流を通じて成長する。人間の行動に応じて感情が変化するほか、動作や音声によって意思を伝えたり、入力の変化に応じて動作を変えたりする。これも、AIBOと類似した点である。

 Pleoは、外観や触感が実際の生き物に近いという点で、AIBOを含めこれまでの玩具ロボットと異なる。この違いは、色鮮やかな黄緑色の箱からPleoを取り出したときにすぐに分かる。着色された熱可塑性プラスチックの皮膚と虹彩のある自然な目、いずれもPleoを奇妙ながらも実際の生き物らしく見せている(図1)。

図1 学習能力を備える恐竜ロボット
米Ugobe社の恐竜型ロボットPleoの外観(左上)と、皮膚を模した熱可塑性プラスチックを取った状態である(右上)。頭部前面に実装したCMOSセンサーで撮影した画像を処理することで、障害物を避けたり、口先に置かれた物体を感知したりする。また、赤外線送信・受信モジュールで、ほかの恐竜ロボットと情報を交換する(右下)。左下は、足元から上方を見た図である。腹部に複数のプリント基板が実装してある。

 実物に似た玩具を作るために、皮膚の部分は重要だ。皮膚に似せたプラスチックが、プラスチックの骨格すべてを覆い隠している。目の部分は、まぶたを閉じたり開いたりするという点でも自然である。皮膚の部分を実際の生き物に似せたため、恐竜ロボットが壊れてしまった場合、購入者自身が修復するのは難しい。購入した恐竜ロボットに、補償対象となる何らかの不具合があった場合は、新しい恐竜ロボットと交換するか、Ugobe社に修理を依頼する必要がある。新たな恐竜ロボットと交換するときのために、ロボットが「学習」した内容をほかのロボットに移す仕組みが用意されている。具体的には、恐竜ロボットの腹の部分に、SDメモリー・カード・スロットとUSBポートがある。USBケーブルで接続したパソコン本体またはSDカードに恐竜ロボットの個体情報を保存できる。この仕組みを使って、同社が開発した独自のOS「Life OS」を更新することも可能だ。

SDメモリー・カード・スロットとUSBポートの隣には電池を格納するスペースがあり、単3型電池を6つ格納する。対応する電池はニッケル水素2次電池で、電流容量は2200mAh。尾も含めた外形寸法は15.2cm×19.1cm×52.6cmで、重量は約1.6kgである。

複雑な機械/電気玩具

 恐竜ロボットPleoは、組み立てるのに少なくとも75個のねじが必要である。複雑な機械式玩具であり電気式玩具だと言える。体内には、8つのプリント基板や、合計すると長さが19.2m以上にもなる配線材(直径0.644 mm)、50個弱の電気コネクタ、複数の場所に実装されたセンサーやモーターがある。それらの間を「神経組織」が巡っている。実際には、複数の配線材と電気コネクタが、センサーやモーター、プリント基板などを互いに接続している。

恐竜ロボットを起動するには、充電した電池を組み込んだ後、ロボットの背中に手を当ててゆっくりと揺すればよい。搭載した8つの静電容量式タッチ・センサーで人が触れたことを検出する。8つのタッチ・センサーのうち4つは4本の脚の前面に、2つは背中部分に、残る2つは頭部の上面と下面にそれぞれ設置してある。静電容量式を採用しているため、軽く触れるだけで恐竜ロボットは反応する。

タッチ・センサーを補っているのが、4つの脚の底面に搭載した「オプティカル・インタラプタ」と呼ぶ光学スイッチである。これは、恐竜ロボットが歩いているときにテーブルの端から落ちてしまうことを防ぐ役割を担う。また、床から持ち上げると、4つの光学スイッチがオープン状態に変わり、4つの脚を動かしながら、もがくようなしぐさを採る仕組みになっている。

恐竜ロボットの聴覚は、頭部両端に内蔵した2つのマイクで実現した。マイクから入力された音声の処理は、オランダNXP Semiconductors社の32ビットRISCプロセッサ「LPC2103F」が担う。プロセッサ・コアは、英ARM社の「ARM7TDMI」である。このプロセッサは、米OmniVision社のカラー対応CMOSセンサー「OV 6650」から入力された信号の処理も担っている。このCMOSセンサーを含むカメラ・モジュールが恐竜ロボットの鼻先に搭載されている。これによって、障害物を避けたり、口先に置かれた物体を感知したりする。

カメラ・モジュールの下部には、赤外線送信・受信モジュールがそれぞれ実装されている。顔の部分に向かって左側が送信側、右側が受信側である。これらを使って、ほかの恐竜ロボットと情報を交換する仕組みである。さらにもう1つ、赤外線式のフォトインタラプタが口の先に実装されている。これは、口の中に食べ物を模した玩具が入っていることを感知するためのものだ。何らかの玩具が口に入っていると、口を閉じる仕草をする。

ARM7プロセッサが統合制御

 恐竜ロボットPleoに搭載されているメイン・プロセッサは、両前脚のつけ根部分にあるメイン・ボードに搭載した(図2)。256Kバイトのフラッシュ・メモリーを組み込んだ、米Atmel社の32ビットRISCプロセッサ「AT91 SAM7S256」である。プロセッサ・コアは英ARM社の「ARM7TDMI」である。このプロセッサが、4つの8ビット・マイコンを介して恐竜ロボットの動きを制御しているほか、Life OSを動作させる。プロセッサ内蔵のフラッシュに加えて、Atmel社の4Mバイト・フラッシュ・メモリー「AT45DB321D」が外付けされている。これには、恐竜ロボットの学習の成果を記録保存している。

図2 恐竜ロボットを構成するプリント基板
全部で8つのプリント基板のうち主要な3つを示した。米Atmel社の32ビットRISCプロセッサで恐竜ロボットの動き全体を制御する。モーターの制御には、東芝の8ビット・マイコンを4つ使った。

 採用した8ビット・マイコンはいずれも東芝の「TMP 86FH47AUG」である。合計4つの8ビット・マイコンのうち2つは、恐竜ロボットのそれぞれの脚に搭載した合計8個のモーターを制御する。この8個のモーターを駆動するのは、米Fairchild Semiconductor社の2チャネルのモーター駆動IC「FAN8100N」である。これを4つ使った。

残る2つの8ビット・マイコンで、頭や口、目、胴体、尾の部分を生き物のように動かす合計6個のモーターを制御する。同じFairchild Semiconductor社のモーター駆動ICを3つ使った。

恐竜ロボットが発する鼻息や鳴き声、うなり声などの効果音は、口の内部と、尾の付け根上部に搭載された2つのスピーカから出す。台湾Generalplus Technology社のスピーカ・アンプIC「GPY003A」がスピーカを駆動する。

中国で手作業組み立て

 恐竜ロボットに配置された8つのプリント基板それぞれに付けられた印から推測すると、基板の設計を中国Jetta社に委託したようだ。ロボットの電気系統を接続して最終製品へ組み立てる工程は、中国において手作業で実施するらしい。最終製品として組み立てる際の必要な工程数を考えれば、手作業で組み立てたことは意外ではない。

電子部品の技術進化と、ソニーのAIBOの「歴史」から考えてみれば、将来のPleoはさらに安価で多くの機能を備えるようになるだろう。AIBOが発売されたのは1999年で、その当時の価格は2500米ドルだった。それ以降、音声認識や無線LAN通信、Bluetooth通信、顔認識、自己充電、動体認識といった新たな機能を次々と備えていった。AIBOの生産が2006年に中止されたときには、価格は599米ドルにまで下がった。Pleoは、AIBOの機能をすべて備えているわけではない。しかし、実際の生き物のような外観と行動、そして349米ドルという価格によって、すでに多くのファンを獲得している。

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