「WirelessHD、いよいよ離陸間近」、米SiBEAM社のCEOに聞く
60GHzを超えるミリ波帯を利用する無線通信規格「WirelessHD」。データ伝送速度は4G〜5Gビット/秒と高い。このため、デジタル機器において、1080pのデジタル映像信号を非圧縮で伝送する技術として注目を集めている。韓国LG Electronics社や松下電器産業、NEC、韓国Samsung Electronics社、ソニー、東芝とともにこのWirelessHDを推進しているのが、ファブレス半導体ベンチャー企業である米SiBEAM社である。来日した同社President兼CEO(最高経営責任者)を務めるJohn E. LeMoncheck氏に、WirelessHD対応チップ・セット開発の市場投入計画などについて聞いた。(聞き手:川上利真子)
EE Times Japan(以下、EETJ) WirelessHD対応チップセットの開発状況を聞きたい。
LeMoncheck Wireless HDの最終仕様は2007年夏にも発表される予定だ。当社では仕様が決定し次第、対応チップセットやソフトウエア、リファレンス・デザインなどを2008年1月までに順次発表していく。いずれも当社で開発し、それぞれを1つにまとめてソリューションとして提供する計画だ。2008年1月に開催予定の「International Consumer Electronics Show(CES 2008)」では当社のチップセットを使ったデモを実施する予定である。
EETJ 当初のWirelessHD規格は、どういった通信性能を実現できる見通しか。
LeMoncheck 2006年秋に発表した内容(関連記事)に変化はない。近距離の見通し内通信(LOS:Line of Sight)、すなわち同一室内での通信を対象とする。例えば、セットトップ・ボックスから1080pの高品位(HD)映像信号を非圧縮のまま、テレビに伝送するといった用途を想定する。データ伝送速度は4Gビット/秒、通信可能距離は10mである。当社が製品化する第1世代のチップセットもこの仕様に対応する見通しだ。
EETJ 開発中のチップセットの特徴を説明して欲しい。
LeMoncheck 36素子のフェーズド・アレイ・アンテナ技術を適用した。この技術を「OmniLink60」と呼ぶ。この技術を適用することで、全方位から到達する無線信号を受信できるようになる。このため、機器間に障害物がある場合でも壁や天井、床などに反射して到来する信号を使って、受信を維持できる。アンテナの素子数は、アプリケーションによって変更することが可能だ。
コストを低減するため、CMOSプロセスを適用した。当社はファブレス半導体メーカーであるため、実際の製造は台湾のTSMC社が担当する。
EETJ CMOS技術を適用したミリ波対応受信用チップを東芝も開発した。
LeMoncheck 東芝は「WirelessHD Consortium」の参画企業の1社である。同社が開発したチップは、技術的にはWireless HDに適用可能であり、将来的にわれわれのチップと競合するだろう。ただし、WirelessHDを普及させるといった観点でみれば、当社以外にも対応チップが登場することは歓迎すべきことだと考えている。
EETJ 信号の圧縮/伸長は必要であるものの、デジタル機器間の無線接続技術では、IEEE 802.11nやUWBといった技術がすでに実用化されており、これらに対応した電子機器がすでに発売されている。市場投入の遅れは、WirelessHDの普及にとって障害にならないのか。
LeMoncheck かつて、デジタル映像信号向けインターフェース規格である「HDMI(High Definition Multimedia Interface)」が市場に登場した際も、IEEE1394と対比して同様の議論があった。しかし、結果的には、HDMIの性能の高さが評価され、今やあらゆるデジタル機器にHDMI端子が搭載されている。
WirelessHDは、1080p映像の非圧縮無線伝送が可能であることに加え、802.11nやUWBに比べて高度なコンテンツ保護技術や暗号化技術を採用している。このため電子機器メーカーだけでなくコンテンツ・メーカーからも大きな支持を得ている。デジタル・コンテンツが普及する中、特にテレビとデジタル機器を接続する「ラスト・リンク」技術として期待できる。さらに、電子機器メーカーは、高品位(HD)テレビに対して今後も安定的に投資を続ける意向を示している。テレビに新たな付加価値を提供する技術としてWireless HDの潜在的な市場は非常に大きいといえるだろう。
(川上利真子:EE Times Japan)
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