「ブラック・シリコン」実用化へ、ハーバード大学のスピンアウト企業が乗り出す

 米国の新興企業であるSiOnyx(サイオニクス)社は、米Harvard University(ハーバード大学)が保有する浅接合フォトニクス技術に関する特許の使用権を同大学から取得した。同大学は特許使用権と引き換えに、SiOnyx社の株式を受け取るほか、この技術に関して今後発生するロイヤルティを得ることになる。

 この特許は、半導体のフォトニック特性を変化させるとされるレーザー・インプラント技術に関するものだという。同大学で物理学/応用物理学の教授を務めるEric Mazur氏が発見した技術であり、この技術を適用した半導体材料は「ブラック・シリコン(Si)」として知られている。同氏は、2006年に設立されたSiOnyx社の共同創設者でもある。

 SiOnyx社と同大学技術開発局(OTD:Office of Technology Development)が2008年10月13日に共同で発表した声明文によると、ブラック・シリコンは、通常のシリコン材料に比べてほぼ2倍の量の可視光を吸収できる上、一般的なシリコン材料による素子では反応しない赤外線を検出可能だという。同声明文ではさらに、ブラック・シリコンのこうした特性を生かすことで、単純な光検出素子から、高度なデジタル撮像素子、太陽電池に至るまで、多岐にわたる応用分野で光半導体素子の性能を高められると述べている。

 SiOnyx社は現在、超高感度の分光撮像に向けたブラック・シリコン素子の開発に取り組んでいるという。同社によれば、ブラック・シリコンの製造プロセスは既存の半導体製造プロセスと互換性があり、新たな材料も不要だという。同社は、フェムト秒レーザーを使ってターゲットとなる半導体材料を加工し、厚みが300nmと極めて薄い光伝導層を形成する製造プロセス技術について特許を取得済みだと説明する。こうして形成した極薄光伝導層は、バイアスをかけた状態で光を検出する用途と、太陽電池(電力生成)の用途の両方に適用できるとしている。

 SiOnyx社でプレジデント兼CEO(最高経営責任者)を務めるStephen Saylor氏は、「ブラック・シリコンは、光に対する感度という、あらゆるフォトニクス・システムが抱えていた根本的な課題を解決する」と主張する。「当社は、既存の半導体製造インフラをブラック・シリコン向けに低コストで拡張可能だと実証する。その結果、光検出素子や撮像素子、太陽電池などを手掛けるメーカーはこれまでに比べて小型かつ軽量で、効率の高いフォトニクス・システムを実現できるようになり、市場規模が合計100億米ドルに達する光検出素子と撮像素子、太陽電池の市場は大きく変革されるだろう」(同氏)。

 なおSiOnyx社は最近、ベンチャー投資会社であるHarris&Harris社とPolaris Venture Partners社、RedShift Ventures社から合計で1100万米ドルの資金を調達した。

(Dylan McGrath:EE Times、翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan)


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