フレキシブル基板にシリコン・インクで回路を形成、米社がRFIDタグで実用化

 折り曲げ可能(フレキシブル)な基板上に、シリコン(Si)・インクで回路を印刷する――こうした技術が実用化時期を迎えそうだ。米Kovio社は2008年10月16日、米国のシカゴで開催された電子タグ情報(EPC:Electronic Product Code)に関するカンファレンスおいて、RFIDタグに向けたシリコン・インク技術を発表した。同社は、シリコン・インク技術の商用化はこれが世界初だと主張している。

 Kovio社は、シリコン・インクをインクジェット印刷することでRFIDタグの回路を形成した。この工法を採用すれば、RFIDタグ1個当りのコストを15米セント削減し、5~10米セントに抑えられるという。さらに、ロール・ツー・ロール式印刷で大量生産すれば、1米セント以下まで低減可能だとする。この技術は将来的には、印刷で形成するセンサー素子からフレキシブル・ディスプレイに至るまで、幅広い応用が期待できるという。

 市場調査会社である米Global Retail Insights社でリサーチ・ディレクタを務めるLeslie Hand氏は、「Kovio社の集積回路印刷技術は、小売り製品から通行証、書類、各種設備など、『あらゆるものにRFIDタグを貼り付ける』というコンセプトの価値を高め、普及を加速するだろう」と述べている。

 Kovio社によると、シリコン・インク技術の競合技術である有機印刷技術は、電子移動度が1/100も低いという。同社のシリコン・インク技術で形成した薄膜CMOS回路は、多結晶シリコン並みの100cm2/Vsの電子移動度が得られ、1GHzの高速動作を実現できるとする。この技術を使ってRFIDタグ上に読み出し専用のメモリーを印刷し、個体認証用のシリアル・ナンバーなどを記録することも可能だという。

 Kovio社でバイス・プレジデントを務めるVik Pavate氏は、「シリコン・インクに基づく当社の回路形成技術を使えば、個体認証機能を含む高度な機能を日用品に搭載できる。将来的には、センサーやディスプレイを単一のデバイスに集積することが可能になるだろう」と述べている。

 現在のRFIDタグでは、個体認証情報を記録するには別のチップを追加しなければならない。通常はメモリー・チップを使うが、メモリー・チップに情報を書き込む作業が必要になる。Kovio社の技術を使えば、「読み出し専用のメモリーを印刷によって形成するため、書き込み作業のコストはゼロになる」(同氏)。

 同社のシリコン・インク技術は、メモリーのみならず、「RFIDタグの機能を実現するすべての回路ブロックを印刷で形成できる。論理回路や整流器、高周波入力信号からクロック信号を取り出すデバイダなどである。コンデンサも印刷で形成可能だ」(同氏)という。

 同社が今回発表した、シリコン・インク技術によるRFIDタグは、厚みが100μmの基板上に形成されており、128ビットのROMを集積する。RFIDタグ側から先にデータを送信する「Tag Talk First(TTF)」方式を採用しており、データ伝送速度は106kビット/秒である。

(R. Colin Johnson:EE Times、翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan)


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