充電時間が短く長寿命のバッテリ、HP社がノート・パソコン向けオプション提供へ
米Hewlett-Packard(HP)社は、同社が販売する民生用ノート・パソコンを対象に、既存のバッテリに比べて充電時間が短く、寿命(充放電サイクル数)が3倍と長い新型のリチウムイオン・バッテリをオプションとして販売すると発表した。米国の新興企業であるBoston-Power社が製造するバッテリ「Sonata」を、HP社の「Enviro」ブランドとして、3年間の保証を付けて提供する(参考リンク:Boston-Power社のホームページ)。
このバッテリ・オプションは、HP社の民生用ノート・パソコンの80%に相当する機種を対象に提供されるとみられる。オプション価格は標準品に比べて20%程度高く設定する見込みだ。
HP社が、業務用ノート・パソコンについてもこのバッテリをオプション提供するのか、あるいはすべてのシステムについてこれを標準バッテリとして採用することになるのかは、現時点では明らかになっていない。
HP社に新型バッテリを供給するBoston-Power社にとっては、生産能力の増強が課題になる。現在Boston-Power社は、香港Gold Peak Industries(Holdings)社が運営する台湾の新竹にある工場で、月産30万個規模でバッテリ・セルを製造しており、中国の深センにある自社工場でも量産ラインを立ち上げている。
Boston-Power社の創設者でCEO(最高経営責任者)を務めるChristina Lampe-Onnerud氏は、ノート・パソコン市場では年間10億個ものバッテリ・セルが出荷されていることに言及し、「当社のシェアは非常に小さい」と述べている。「品質を維持しながら製造能力を増強することは、当社にとって最大の課題である。既存の製造拠点において、可能な限り積極的な拡大を行う」(同氏)。
Boston-Power社は2007年2月に、HP社を含む顧客候補に向けてSonataの最初のサンプル供給を始めた。今回のHP社との契約に関する報道発表資料には、生産量の予測は何も示されていない。
一般にバッテリ・メーカーは、新たなカソード材料を採用することで、1回の充電ごとのバッテリの持続時間を段階的に改善している。Boston-Power社のSonataは、充電時間を短くするとともに、寿命を伸ばすため、新方式のセルを採用してゼロから設計したという。
Sonataは、バッテリ・セルの性能を劣化させずに1000回の充放電サイクルを繰り返すことができるという。これは既存のバッテリのおよそ3倍の寿命である。さらに、バッテリの寿命を劣化させずに、30分と短い時間で容量の80%まで充電することが可能だ。現行のバッテリで容量の80%まで充電するためには、一般的に急速充電サイクルを使って1時間ほどかかるが、急速充電を使うと300回の充放サイクルの間にバッテリ・セルの性能を60~80%劣化させる可能性がある。
HP社がSonataを採用した理由の1つは、ノート・パソコン市場に向けて従来のバッテリのほか、環境により優しい選択肢を提供しようというものだ。HP社で民生用ノート・パソコン担当のディレクタを務めるJonathan Kaye氏は、報道発表資料の中で、「Boston-Power社と提携することで、より寿命の長いバッテリを顧客に提供することができ、埋め立て処分されるハイテク廃棄物を減らすことにも貢献できる」と述べている。
HP社との契約は排他的なものではない。実際にBoston-Power社は、HP社以外の顧客からのデザイン・ウイン獲得に取り組んでおり、2009年にも発表したい考えだ。このほかBoston-Power社は、1回の充電当たりの持続時間の改良に主眼を置いた品種の開発も進めているという。
Boston-Power社は長期的には、自動車用バッテリなど、ノート・パソコン以外の市場も目指す。同社は、比較的大規模なシステムに向けた製品の開発に取り組む研究所を開設している。
(Rick Merritt:EE Times、翻訳:仲宗根佐絵、編集:EE Times Japan)
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