ホーム・ネットワークは今なお視界不良 ~ 【CES直前特集】2009年の注目技術
ホーム・ネットワーク技術の現状をどのように評価するかは、見方次第である。すなわち、見方によっては成功の輝かしい事例にもなり得るし、惨めな失敗にもなり得る。ホーム・ネットワークに向けて数多くの実現技術が名乗りを上げているにもかかわらず、「新規の配線が不要」であることを訴求するこれらのネットワーク技術は、いずれも高解像度(HD)映像のストリームを複数本、同時に伝送することは難しいからである。
「新規の配線が不要」なことを重視するかどうかが、エンタープライズ(企業)・ネットワークとホーム・ネットワークの境界線の1つだろう。企業は、オフィス間を接続して生産性を高められるのであれば、新規の配線を敷設する投資もいとわない。しかし家庭では、よほどハイエンドのユーザーでなければ、高い信号品質が得られるからといってカテゴリ5/6のより対線ケーブルに取り替えたりはしない。従ってホーム・ネットワークは、ボリューム・ゾーンの市場で成功を収めるためには、データ容量の大きい映像ストリームを扱う場合でさえも、新規の配線を強いないように、完全に無線化するか、さもなければ既存の電話線や同軸線、電力線を利用しなければならない。
IEEE 802.11規格の無線LANは、現在、家庭向けに広く普及している。ただし、無線LANの価格を一般の消費者が利用しやすいレベルまで引き下げたのは、企業向けユーザーだった。残念なことに、無線LAN規格の最新版であるIEEE 802.11nは、課題の多い技術だといえる。長きにわたって繰り広げられた標準規格に関する論争は満場一致の決着には至らず、対応製品の通信距離や通信速度は仕様値に遠く及ばないという事態に陥っている。家庭内で各部屋に高解像度(HD)映像を配信する技術として無線LANが普及するかどうかは、いまだに未知数である。
UWB(Ultra Wideband)技術に基づく「Certified Wireless USB」は、さらに深刻な状況である。パソコン周辺機器の無線接続に関しては市場を築く可能性はあるものの、HD映像の無線伝送については、1つの部屋の中でさえも実現できるかどうかがはっきりしていない。
民生機器メーカーは現在、独自方式の無線リンクを検討しているが、それにもまた課題がある。例えばイスラエルの半導体ベンダーであるAMIMON社は、5GHz帯を利用する独自方式の技術を推進しているが、サポートは限定的である。もし同社の技術がうまく機能するとしても、複数本のHDストリームを無線伝送することは難しいとみられ、結局はコンテンツを圧縮して送るという方向性になるだろう。このほか業界では、60GHz帯を利用する技術も提案されているが、まだ研究開発の段階にあり、現時点では評価を下せない。
なぜわれわれは、室内ネットワークについて議論しているのだろうか? 旧来からのデータ通信と新たな用途であるHD映像のストリーミングの両方に単一の技術で対応できるような、完ぺきなホーム・ネットワークなど存在しない。従って、ある程度近い距離に置く機器群だけに無線接続を適用し、そうした機器群と機器群の間は何らかのバックボーン(基幹回線網)によって有線接続するというシナリオが有力になる。
家庭向けのバックボーンを実現する方式については、まずは同軸ケーブルを使う方式が現実的である。ただし、同軸ケーブルによる接続は、家庭内の一部に限って導入されるだけで、家庭内のすべての部屋に敷設されるわけではない。そこで、通常は各部屋に電源コンセントが設けられているため、電力線通信が選択肢となる。ところが残念なことに、電力線通信では条件によってはHD映像の伝送に求められる帯域幅を確保できない可能性がある。そうかといって、電話線を利用する方式もあまり期待できないだろう。従って当面は、HD映像を家庭内の各部屋に配信する技術としてイーサネットとカテゴリ5/6ケーブルの組み合わせが主流になるとみられる。さて2009年に何が起きるか、注目である。
【CES直前特集】2009年の注目技術 ~ 目次はこちら
【ホーム・ネットワークの関連記事】
・ IEEE 802.11nが無線LANの主役へ、従来版置き換えと用途拡大の動き
・ TZero社がUWB伝送向け参照設計を発表、HDTVなどに向け低価格アピール
・ 宅内AV機器の無線接続、WirelessHDとWHDIが激突か
・ 次世代技術百花繚乱 【無線伝送技術】HD映像を非圧縮で無線伝送、複数メーカーがデモを展示
・ 【CEATEC 2008】WirelessHD規格向け無線伝送モジュールが登場、村田製作所が開発進める
・ WHDIコンソーシアム発足へ、AV機器間無線伝送方式に動き
・ 3つの伝送媒体に対応する宅内有線ネット規格「G.hn」、ITUが物理層規格を承認
・ アプリ層のスループットが280Mbpsに達する高速電力線通信をDS2社が披露
PR









