フレキシブル・エレクトロニクスが民生市場で萌芽へ ~ 【CES直前特集】2009年の注目技術
電子回路を印刷工法で作製する「プリンテッド・エレクトロニクス」技術――皆さんはどのような用途を思い浮かべるだろうか。折り曲げたり、丸めたりできる、あるいは微生物などによって分解される特性(生分解性)を備えた日用の電子機器から、フレキシブル・ディスプレイに至るまで、プリンテッド・エレクトロニクス技術を適用したさまざまな応用製品が商品化を待っている。
拡大を続けるデジタル家電市場で、フレキシブル・エレクトロニクスが徐々にではあるが、本流に躍り出ようとしている。その先導役を務めるのが、米Applied Materials社である。同社は最近、ディスプレイ事業部門である子会社の米AKT社を通して、米Arizona State Universityの「Flexible Display Center(FDC)」で進められているプロジェクトに、アソシエート・メンバーとして加わった。同社の参加により、フレキシブル・ディスプレイは量産に向けて大きく前進するものと期待される。まずは軍事用、次に民生機器用と実用化が進む。
FDCは、米軍とArizona State Universityが締結した10年間の共同研究開発契約に基づいて設立された官学共同の研究機関であり、フルカラー表示に対応したフレキシブル・ディスプレイ技術の開発と商用化を目的とする。FDCのパートナー企業には、韓国LG Display社や米Hewlett-Packard(HP)社、米E Ink社、米Universal Display社、帝人デュポンフィルム、オーストリアEV Group社に加えて、ディスプレイ技術をシステム・インテグレータの立場で利用する米General Dynamics社や米Raytheon社、米Boeing社、米Honeywell社、米L3 Communications社なども名を連ねている。
FDCの所長を務めるGregory B. Raupp氏は、「Applied Materials社は、FDCのプロジェクトに参加することで、業界最先端の薄膜形成手法の試験から、最新の先進技術を駆使したフレキシブル・ディスプレイ用薄膜トランジスタ(TFT)の初期バージョンの製造に至るまで、当センターのインフラを最大限に活用できる」と話す。
このほか、ドイツのドレスデンに新設された「Center for Organic Materials and Electronic Devices Dresden(COMEDD)」も、フレキシブル・ディスプレイの量産に向けて動き出している。同センターでは、有機EL(OLED)ディスプレイの製造を計画している。ロール・ツー・ロール方式のコーティング装置を使って、フレキシブル基板上に有機ELを作製する。
市場調査を手掛ける英IDTechEx社によれば、2009年には、プリンテッド・エレクトロニクスによって家電市場に新たな動きが起こりそうだという。同社は一例として、米Plastic Logic社製の電子ブック・リーダー端末を挙げる。IDTechEx社のCEO(最高経営責任者)であるRaghu Das氏によれば、このリーダー端末はフレキシブルなプラスチック基板を用いており、「従来の製品に比べて、薄型化と画面の大型化を実現している」という。
また、韓国Samsung SDI社は、2008年10月29日~31日に横浜で開催された展示会「FPD International 2008」で、本のように折り畳めるフレキシブル・ディスプレイを備えた携帯電話機のプロトタイプを公開した。
ただし、これまでに紹介した製品は、プリンテッド・エレクトロニクス技術が民生機器市場を開拓する小さな一歩にすぎない。フレキシブル・ディスプレイをはじめとするフレキシブル・エレクトロニクス機器を実際にウエアラブル(身に着けられる)にしたり、微生物などによって分解できるようにするには、材料技術の進展や、インターコネクトの開発、スケーラビリティの確保が必要である。
こうした課題や研究の着実な進展を考えれば、2009年には民生機器にフレキシブル・ディスプレイの普及がさらに進むと予想できる。しかし、フレキシブル・ディスプレイを搭載した製品が家電量販店の店頭に並ぶのは、さらに2~3年先になりそうだ。
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