「QD」視野に高解像度化が進む、ユーザー不在の懸念も ~ 【CES直前特集】2009年の注目技術

台湾HTC社の「HTC Touch」は、3.8インチ型のワイドスクリーンVGAディスプレイを搭載しており、「マルチメディア機能を強化したエンターテインメント・フォーカスのモバイル端末」と銘打たれている。

 高解像度(HD)技術は家電業界におけるここ数年間の目玉であり、テレビの売り上げ拡大にも大きく貢献している。次世代DVD規格の争いで勝利を収めたBlu-ray Disc規格は、対応プレーヤの急激な普及を今か今かと待っている。しかし「その時」はまだ訪れてはいない。しかも景気の後退期に突入した今、アナリストの大半は、HDテレビやBlu-rayプレーヤの売上高が、少なくともこの先2四半期の間、従来の予測を下回る値で推移すると予想している。

 景気が良ければ、消費者は「最新」とか「最高」といったうたい文句に飛びつきやすい。売り手側の思惑通りに、購買意欲を刺激された消費者が、「最高の視聴体験」を求めてHD対応機器に手を出し、売り上げが伸びるというシナリオだ。逆に不景気になると、「ブラウン管テレビや、シングル・ディスク対応のDVDプレーヤで十分だ。最新製品は必要ない」と、消費者が財布のひも締めてしまうため、こうしたシナリオは期待できない。

 市場調査会社の米iSuppli社で家電部門を担当するシニア・アナリストのSheri Greenspan氏は、「今後、2~3四半期の間は、高価な製品が市場で不利になる可能性が高い。消費者は恐らく2009年後半まで、テレビやディスク・プレーヤの買い替えを控えるだろう。というのも、そのころにはこれらの平均小売価格が下がり、出費に見合うだけの価値があると考えるためだ」と予測する。

 今や家電機器メーカーは、テレビ以外の製品でも、市場で競合他社との差別化を図ることを狙ってHD化を進めている。携帯電話機や携帯型インターネット端末、ビデオ・カメラなどである。ただし、特にマクロ経済が停滞している現状においては、HD対応製品に対する需要がそれほど高まっているわけではなさそうだ。

 例えば携帯電話機の場合、台湾HTC社が2008年9月にHD対応の携帯電話機「HTC Touch」を投入したほか、米Apple社が「iPhone HD」を開発中だといううわさが流れている。また、映像圧縮技術を手掛ける米On2 Technologies社は、携帯電話機に向けて複数のフォーマットに対応したHDビデオ・デコーダ回路について、RTL形式のコンフィギュラブルなIPコアを複数品種、ライセンス供給中である。

 しかし、なぜだろう? いったい誰が、3インチの小型ディスプレイ機器に、高い価格を支払ってまでHD対応を望むのだろうか? いったいどんなアプリケーションがあり得るのだろう?

 iSuppli社で無線部門を担当するアナリストのFrancis Sideco氏は、「携帯電話機などの携帯型電子機器に向けて、HD対応のアプリケーション・プロセッサの投入が始まるところだ」と述べる。同氏によれば、これらのほとんどは最大1080pの解像度に対応するものの、一般には3インチ以下の小型ディスプレイで解像度が720pを超えても、人間は画質の違いを認識できないとされている。

 ただし、家電機器メーカー側は、こうした事実には目を向けていない。人間の目に違いが分かろうが、分かるまいが、あらゆる製品をHD対応にするつもりのようだ。しかも、それだけでは終わらない。各社は、解像度がHDの2倍という「QD(quad-definition)」対応ディスプレイの開発にすでに着手しているという。なぜか? 「そこに技術があるから」である。

 こうした過熱気味の開発競争を受けて、iSuppli社の主席アナリストであるJordan Selburn氏は2008年10月に次のように発言した。「ガレージの戸ほどもある巨大なディスプレイを欲しがるユーザーは、ごくわずかだ。それ以外のユーザーは、(人間よりも視力がはるかに優れた)ワシでもない限り、解像度を4倍に高めたディスプレイの違いには気付かないだろう」。


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(Dylan McGrath:EE Times、翻訳:松永恵子、編集:EE Times Japan)


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