エンタープライズ分野にも普及、用途が拡大するSSD
2008年は、SSD(Solid State Drive)の市場が立ち上がった一年だった。今後もハード・ディスク装置(HDD)を置き換える動きは着実に進むと見られる。エンタープライズ・サーバー向けストレージの分野では特に、採用の動きが活発化しそうだ。価格低減の要求が強いノート・パソコン向けと、ハイエンドのエンタープライズ・サーバー向け、ストレージ分野の両端からSSDの普及が進む。
大規模サーバーに向く
大規模なエンタープライズ・サーバー向けストレージの分野で、SSDを採用するメリットは大きい。例えば、米EMC社の説明によると、ストレージの性能を表す指標であるIOPS(Input Output per Second)*1)は、ファイバ・チャネルを採用した同容量のエンタープライズ・サーバー向けHDDに比べて30倍にも向上する。HDDを使う場合には、高いIOPSを得るためにHDDを複数並列に接続して使う必要があった。IOPS値が高ければ、証券取引や電子決済などで使われるサーバー向けといった、マイクロ秒オーダーの高速アクセスが求められる用途で威力を発揮する。
SSDを採用したエンタープライズ・サーバー向けストレージは、今後続々と市場に登場する見込みだ。日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)は「実際に、ストレージ・システムのベンダーから要求がある」という。
2008年3月にEMC社がSSDを採用した機種を発売したのに続いて、日立製作所はエンタープライズ・サーバー向けディスク・アレイ・サブシステム「Hitachi Universal Storage Platform V」にSSD採用機種を追加し、2009年1月末に出荷を開始する。
SSD採用機種を追加した理由について同社は、システムの性能当たりの費用(コスト・パフォーマンス)を高められることを挙げる。「HDDにSSDを組み合わせることで、IOPSはシステム全体で最大30倍に高められる」(同社)という。一方、コストに関しては、「ビット当たりの価格で比較するとSSDはHDDの20数倍」(同社)。今回の機種では、最大1152台のディスク装置を搭載可能で、そのうちSSDが占める割合は最大128台と少ない。SSDの記憶容量は、146Gバイトまたは73Gバイトと小容量である*2)。従って、コスト・パフォーマンスを大きく高められるというわけだ。米Sun Microsystems社もSSDを採用した機種を市場投入する予定である。
エンタープライズ・サーバー向けストレージの分野では、SSDに対して求められる技術的要件がノート・パソコンなどとは異なる。応答時間の短さや、高いデータの書き込み/読み出し速度が強く求められる。IOPSを向上させることに直結するからだ。
このような技術的要件を満たすSSDの開発を各社が進めている。例えば、日立GSTと米Intel社は、エンタープライズ・サーバー向けSSDを共同で開発すると発表した*3)。「極めて高いIOPSが求められる用途に向けたSSDを開発する」(日立GST)。日立GSTは、「エンタープライズ・サーバー用ストレージのインターフェース技術に強みを持つほか、ストレージ・ベンダーそれぞれの仕様に関するノウハウを有する」という。これを生かすことで、競争力の高いSSDを開発したい考えだ。シリアル・アタッチドSCSIとファイバ・チャネルに対応した品種を開発する。2010年初頭の出荷を目指す。
Intel社はサーバーやワークステーション、ストレージ・システムに向けたSSD「X25-E Extreme」の量産出荷を開始した。「HDDの100倍のIOPSを実現した」(同社)。4Kバイトのデータ容量をランダムに読み出すときのIOPSは3万5000で、ランダムに書き込むときには3300である。シリアルATAインターフェースを採用した品種で、記憶容量は32Gバイト。64Gバイト品も用意する。韓国Samsung Electronics社も、単位消費電力当たりのIOPSがHDDに比べて100倍高いとするSSDの量産出荷を始めた。記録容量は32Gバイトと64Gバイトである。
【脚注】
*1)IOPSとは、あるデータ容量を単位時間にやりとり可能な回数を指す。具体的には、IOPS=1/(アクセス時間+特定の容量のデータをやりとりする時間)。
*2)システム全体ではSSDのほか、ファイバ・チャネル・インターフェースを採用したHDDとSATAのHDDを用いる。ファイバ・チャネル品の記録容量は最大450Gバイト、SATA品は1Tバイト。システムの総データ容量はペタ・バイト級である。
*3)HDD業界大手の米Seagate Technologies社もまた、2009年中にエンタープライズ・サーバーに向けたSSDを製品化する予定である。
【EE Times Japan 2009年1月号「Building Blocks」、p.18掲載記事】
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