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» 2009年03月18日 11時00分 UPDATE

エネルギー技術 エネルギーハーベスティング:廃熱から電力を回収、熱電モジュールの開発進む

温度差によって起電力(電力)を生み出す熱電素子の製品化が進んでいる。250℃の温度差があるボイラーなどでは太陽電池以上の効率で電力を生み出す。室温と体温という小さな温度差でもファンを回転させることができる。熱電素子の材料選択が性能向上には欠かせない。

[畑陽一郎,EE Times Japan]

 pn接合部に温度差を与えると起電力が発生する「ゼーベック効果」*1)。可動部がなく、小型化が容易で、起電力を生む熱電素子が劣化しにくいため、エネルギーハーベスティング技術としても注目されている*2)。国内ではKELK(旧小松エレクトロニクス)、産業技術総合研究所、昭和電線ホールディングス、東芝、村田製作所などが熱電素子や熱電モジュールの開発に取り組んでいる(図1)。

*1)逆に、pn接合に電圧を印加することで冷却効果を生むペルチェ素子はすでに広く製品化されている。

*2)熱電素子を利用した例として、セイコーとセイコーインスツルメンツ(現セイコーインスツル)は、1998年に体温を熱源とした腕時計「セイコーサーミック」を、シチズン時計は1999年に腕時計「エコ・ドライブ サーモ」を発売している。太陽光が利用しにくい外惑星探査機では、放射性熱源を利用する熱電素子が使われている。

ALT 図1 KELKの熱電モジュール Bi2Te3を用いた微小な素子を組み合わせてモジュールを形成した(左)。体温と室温の温度差でも50mm角のファンが回転する(右)。

 「発電コストを商用電源並みまで下げられる見込みがないため、これまでは熱電モジュールの市場性は低いと考えていた。近年、環境重視の機運の高まりが廃熱の利用にも及んだため、熱電モジュールの製品化に踏み切った。設置場所によっては太陽電池よりも面積当たりの出力を高くできる」(KELK 素子事業部で部長を務める八馬弘邦氏)。KELKの発電モジュール(50mm角)*3)は、250℃の温度差下では変換効率7.2%、出力20W(0.8W/cm2)である。一方、変換効率20%の太陽電池では20Wの出力を得るために32cm角の面積が必要となるため、面積当たりの出力では0.02W/cm2になる計算だ。

*3)寸法50mm×50mm×4.2mm、重量47g。高温側が280℃で低温側が30℃という条件の場合、出力は24W(電圧8V)。2009年5月に受注を開始する。価格は3万円。

 熱電素子は、高温部の金属板1枚と、n型半導体とp型半導体、低温部の金属板2枚からなる。低温部金属板、n型半導体、高温部金属板、p型半導体、低温部金属板の順番に接続されており、この向きに電流が流れる。100個以上の素子を組み合わせることで熱電モジュールを構成する。

 熱電素子向け半導体に求められる条件は3つある。電気抵抗が低いこと、熱伝導性が低いことと、後述する熱電能が高いことである。最初の条件を満たさないと取り出し電力が低くなってしまう。2番目の条件を満たさないと素子の両端に温度差が生じにくくなるため、起電力が落ちる。3番目の熱電能は、素子の両端に温度差をつけたときの1℃当たりの熱起電力を表す。熱電能が高い物質のうち、相反する1番目と2番目の条件を満たすものを選ばなくてはならない。BiTe(ビスマス・テルル)、SbTe(アンチモン・テルル)、PbTe(鉛テルル)、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)などが有望だ。

 それぞれ適した動作温度と温度差が異なっており、「高温部が300℃以下ではBi2Te3が最適である」(八馬氏)という。この他、産業技術総合研究所ではカルシウム・コバルト酸化物とランタン・ニッケル酸化物の組み合わせを、昭和電線ホールディングスではコバルト酸化物を用いた研究開発を続けている。

 東芝は半導体材料を明らかにしていないが、高温側温度が700℃の場合、36mm×39mmの「gigatopaz」と呼ぶ熱電モジュール1個当たり40Wの出力(2.85W/cm2)を達成したと主張する。同社はgigatopazを用いて自動車の排ガスの熱を利用した燃費向上などを狙うとした*4)

*4)大阪産業大学は、可燃性ガスの燃焼エネルギとgigatopazを組み合わせた1人乗りの自動車「熱電発電ビークル」(TEGV)を開発している。出力は150W。

 より多くの電力を引き出すには2つの方策がある。まず発電モジュールの面積を広げることだ。大面積のモジュールよりも、小面積のモジュールを多数用いる方が好ましいという。例えばKELKのBiTe素子を用いた場合、ディーゼルエンジンの排気(410℃)と64個の素子の組み合わせで、1066Wの出力が得られるという。

 熱源の温度が高い場合は、熱を段階的に電力に変換していく。KELKでは2種類の材料を用いて、580℃の熱源側にはSi(シリコン)を含むシリサイド系素子を設置し、室温側にはBiTe系素子を置いた。このように設置することで、50mm角のモジュールの場合、効率を12%にまで高められるという。

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