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大手メーカーが続々参入、LED電球普及のカギは価格と効率LED/発光デバイス

LED電球普及のカギを握るのは価格と明るさ(効率)だ。明るさについては、白熱電球とLED電球の特性の差が問題になり得る。さらに白熱電球代替には小型化が必要だ。

» 2009年09月29日 11時00分 公開
[畑陽一郎,EE Times Japan]

 白熱電球と同等の外形寸法や形状を採るLED電球が大手電球メーカー各社から出そろってきた。NECライティング、シャープ、東芝ライテック、三菱電機オスラムが既に出荷を開始しており、今後、パナソニックと日立ライティングがそれぞれ2009年10月と11月に出荷を予定している(表1)。

 いずれも明るさは40W形または60W形の白熱電球相当で、白熱電球を置き換えることを目指した製品である。一般的に使われているE26口金のソケットに装着できるため、LED照明普及に大きな弾みが付きそうだ。

 LED電球普及のカギを握るのが価格と明るさである。

 価格については2009年8月に出荷を開始したシャープが流れを作った。シャープは、LED電球の価格を寿命で割った値が、白熱電球など既存の電球と同等になるように設定した。つまり、白熱電球は100円で寿命1000時間、電球型蛍光灯は1000円で寿命6000〜1万2000時間であるため、寿命が白熱電球の40倍(4万時間)あるLED電球の価格は4000円前後という計算だ。これを受け、シャープよりも1カ月早く発売していた東芝ライテックは、シャープの発表後に新製品を発表し、価格を従来品の約半額に相当する5250円(40W形白熱電球相当品)とした。なお、各社が公表しているLED電球の寿命は、どれも4万時間である。

ALT 表1 2009年7月以降に発売された主なLED電球の仕様 *1)この他、E17口金の品種がある。

 価格(導入コスト)以外に、ランニング・コストも重要である。ランニング・コストを左右するのが発光効率だ。発光効率はメーカー間の差が激しい。各社のLED電球の発光効率は、白熱電球の発光効率(15lm/W)の2.5〜5.5倍である。

 明るさについては、白熱電球とLED電球の特性の差が問題になり得る。白熱電球はフィラメントからあらゆる方向にほぼ同等の光を放出する。一方、LED電球が内蔵するLEDの光照射角は、一般に狭い。そのため多くのLED電球では、直下は明るいが、横方向は白熱電球よりも暗い。各社が例えば60W形相当とするLED電球は、ダウンライトなどに組み込んだ場合の直下の明るさが60Wの白熱電球と同じという意味である。

 横方向にも光を放出するために、各社はLEDの配置を工夫した他、電球の管面に光拡散機能を持たせている。

パナソニックは発光効率重視

 パナソニックは、LED電球「EVERLEDS」8品種を2009年10月21日に発売する。色温度が2800Kの電球色タイプ4品種と同6700Kの昼光色タイプ4品種である(図1)。同社は、LED電球の2009年度の売り上げ目標を40万個としている。

ALT 図1 パナソニックのLED電球の外観 右はE17口金向けの品種である。

 価格はオープンだが調光器に対応しない品種については、シャープや東芝ライテックの品種と同水準になるとし、4000円前後の見込みだ。調光器に対応する4品種の価格は5000円前後となる見込みである。

 パナソニックのLED電球の最大の特徴は高い発光効率である。例えば白熱電球40W形相当で白色(昼光色)の「LDA4D-A1」は、消費電力が4Wであり、電球全体の発光効率が85lm/Wに達したという。同社はLED電球としては最も高い効率だと主張する。

 明るさについても表1に取り上げた各メーカーの品種と比べて、パナソニックのLED電球電球が最も高い数値を示す。60W形相当で白色の「LDA7D-A1」の全光束は570lmであり、これは東芝ライテックの565lmやシャープの560lmを上回る。

 LDA7D-A1の場合、直下の明るさは60W形の白熱電球とほぼ等しく、全光束で比較しても40W形の白熱電球と50W形の白熱電球のほぼ中間の値まで高めた。「横方向にも光を拡散させるために、ガラス内部に光拡散膜を形成した」(同社LED事業グループ商品開発チームで主任技師を務める緒方俊文氏)。

 一方、今回のLED電球では演色性を追求していない。8品種とも平均演色評価数(Ra)は74にとどまっており、これは、一般照明に使う普及型蛍光管の60〜70に近い数値だ。

 使用した白色LEDは「波長440nm〜450nmの青色LEDチップと黄色蛍光体を組み合わせたものである。発光効率をなるべく高めるためだ」(緒方氏)という。このタイプのLEDの発光スペクトルは青色と黄色に強いピークが生じ、特に赤色の再現性が落ちる。

小型化が白熱電球代替に必要

 白熱電球を代替しようとした場合、白熱電球と同等かそれ以下の大きさにすることが望ましい。白熱電球の寸法に合わせて設計された灯具が存在するからだ。

 パナソニックのLED電球は表1に取り上げた各社の製品の中で最も小さく、長さ105mm、外径55mmまで小型化した。外径は同社の白熱電球と同じであり、長さは7mm長いにすぎない。

 LED電球が白熱電球よりも大型になる原因は、内部にLED駆動回路を配置しなければならない他、電球表面の一部にフィンなど放熱用の加工を施しているためである。

 「小型軽量化のため、電球表面に配置した熱伝導用のAl(アルミニウム)素材をなるべく薄くした。加えて、Al材の表面に陽極酸化皮膜(アルマイト)層を形成することにより、空気への熱放散能力を同皮膜を形成しないときに比べて10倍に高めた。これによりフィン形状を採らなくても十分な放熱が可能になった」(同社LED事業グループ商品開発チームで主任技師を務める松井伸幸氏)。同社のLED電球の構造を図2に示す。

ALT 図2 パナソニックのLED電球の構造 放熱用のAl(アルミニウム)層の表面にアルマイト層を形成することで熱放散能力を向上させ、効率を高めた。

 このような工夫を施したことで、小型化に加えてLED電球の軽量化と省資源化も実現できた。E26口金対応品の重量100gは、LED電球としては最も軽量であると主張する。筐体外部の放熱用Al使用量を24gに抑えることで、製造時の消費エネルギと原材料の量も抑えたという。


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