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» 2009年10月19日 11時00分 UPDATE

エネルギー技術 二次電池:電気自動車向けリチウムイオン2次電池が5年以内に半額に

自動車産業調査会社である米CSM Worldwide(CSM)社の予測である。同社によれば、電気自動車やプラグイン・ハイブリッド自動車が適度な市場規模にまで成長するには、6つの重要な要因がそろう必要があるという。

[Christoph Hammerschmidt,EE Times Europe]

 自動車産業調査会社である米CSM Worldwide(CSM)社は、2009年9月にドイツのフランクフルトで開催された「第63回 IAA国際モーター・ショー」で講演し、「技術やインフラ設備の向上に伴い、電気自動車はかなり速いペースで普及する。最も重要な部品である二次電池(バッテリー)の価格は、5年以内に半額になるだろう」という予測を発表した。しかし一方で、同社は、原材料Li(リチウム)の不足がボトルネックとなって、リチウムイオン二次電池の普及には時間がかかるという予測も示した。

 CSM社のチーフ・エコノミストであるGreg Mount氏は、講演の中で「現在の自動車業界の危機的状況は、一時的なものにすぎない。2010年には自動車の需要は安定し、世界的に6%の需要増加が見込まれる。欧州では回復が少し遅れると予測したが、それでも5%上昇するだろう。米国の需要は、世界平均と同じ推移で伸びると予想した」と語った。

EVの普及要因は6つ

 電気自動車やプラグイン・ハイブリッド自動車が適度な市場規模にまで成長するには、6つの重要な要因がそろう必要があるという。ガソリン価格の高騰、インフラの構築、政府による奨励策の実施、当該製品の流通、CO2排出を規制する法案の策定、電気自動車向けリチウムイオン二次電池の開発である。

 このうちリチウムイオン二次電池以外の項目のほとんどは、2024年〜2030年まで状況が固まることはないと思われる。リチウムイオン二次電池の開発には現在、技術者や開発企業が注力しているが、性能向上が止まるのは2017年〜2023年になると見られている。

 リチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド自動車向けの標準技術となったが、価格の高さが普及を阻んでいる。

 CSM社の予測通りであれば、リチウムイオン二次電池の価格はかなり速いペースで下がることになる。同社のシニア・マネジャーであるAndrew Fulbrook氏は、「標準的な容量25kWhの電池の価格は、2015年には現在の2分の1にまで下がり、価格低下は2030年まで続く」と予測する。同氏は、「累計生産量が倍増するごとに部品の単位価格が20%下がるという経験曲線効果が、リチウムイオン二次電池にも当てはまる」と説明した。経験曲線に基づいて予測した場合、2020年には現在の価格の20%にまで下がると考えられる。

 現在、kWh当たりのリチウムイオン二次電池の価格は約1000ユーロ(約1480米ドル)である。kWh当たりの価格帯が約400ユーロに達した時点が、経験曲線効果を決定するポイントになると考えられる。Fulbrook氏は、「この価格帯を境に、リチウムイオン二次電池の需要は急速に増える」と予測する。

標準バッテリーは25kWhか

 「第1世代の電気自動車は、ほとんどが容量25kWhの電池を搭載する」(Fulbrook氏)ため、今後はこの電池が業界の標準サイズとして確立するという予想が成り立つ。

 つまり、リチウムイオン二次電池の導入段階では、電気自動車ベンダーは走行性能を高めるよりも価格を下げることに注力すると予想できる。ただし、ドイツAudi社がIAAで発表した高性能スポーツ・コンセプト・カー「e-tron」のような例外はもちろんある。Fulbrook氏によれば、第1世代の電気自動車の走行距離は100km〜150kmが一般的になるという。「今の時点で重視されるのは、走行距離よりも価格だ。政府の奨励金が支給されたとしても、消費者は走行距離を上げるためにバッテリーに余分なコストをかける気はないはずだ」(同氏)。

 とはいえ、容量25kWhの標準バッテリー以外にも、さまざまな容量や価格帯のバッテリーが登場するのは必至だ。IAAでのインタビューによると、2020年にはkWh当たりの価格が200ユーロの容量30kWhの電池が発売されるといった予測や、2030年までにkWh当たり100〜200ユーロの容量40kWhの電池が米国で投入されるとの予測があった。

 現在、電気自動車の革新的な開発が最も盛んなのは欧州である。Fulbrook氏は、「低公害車や無公害車の普及に向け、日本が欧州より先に幅広い取り組みを始めていれば、また違った状況になっていただろう」と語る。「欧州では他の地域よりも早く、政府による無公害車の奨励策が推進されたため、社会的な需要も高まった。こうした動きは、フランスRenault社など、電気自動車の開発を進める自動車メーカーによって加速された」(同氏)。

 しかし、バッテリーの価格が下がるためには、原材料の供給が安定していなければならない。現在、西側諸国最大のLi埋蔵量を誇るのは、北アフリカのアルジェリアと南米のボリビアである。Fulbrook氏によれば、中国も豊富なLi資源を有するという。こうした社会情勢の不安定な地域でのLi資源の供給状況を予測するのは難しく、CSM社の予測にも社会情勢の変化は考慮されていないという。そのため、「CSM社の予測は、過去に採掘されたLiの価格に基づいて行っている」(同氏)という。同社の予測とは違った状況が発生することも考えられる。

【翻訳 滝本麻貴、編集 EE Times Japan】

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