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» 2010年03月08日 00時00分 UPDATE

ワイヤレス給電技術 Wireless Power Consortium(WPC):大きなうねりとなるかワイヤレス給電、業界団体「WPC」の規格1.0版の登場間近(前編)

ワイヤレス給電技術の普及に向けた、大きな一歩となりそうだ。電磁誘導を使ったワイヤレス給電技術の普及促進を図る業界団体「Wireless Power Consortium(WPC)」では、標準規格の策定作業が最終段階に入った。

[前川慎光,EE Times Japan]

 ワイヤレス給電技術の普及に向けた、大きな一歩となりそうだ。電磁誘導を使ったワイヤレス給電技術の普及促進を図る業界団体「Wireless Power Consortium(WPC)」では(図1)、標準規格の策定作業が最終段階に入った。

 同団体は、5W以下を対象にした標準規格の0.95版を策定したことを2009年8月に発表していた。その後、策定作業を継続し、2010年3月4日時点で「0.99版」になっている。

 同団体では、これまで互換性確認テスト(プラグフェスト)を合計4回、標準規格の策定に向けた会合を合計10回開催してきた。2010年3月8日の週には5回目の互換性確認テストと、11回目の標準規格の策定に向けた会合を開催する。最も早ければ、2010年3月8日の週の会合で1.0版となる可能性がある。「今まさに、最終的に完成させる前の『生みの苦しみ』を味わっているところだ。時間と手間を掛けて、策定作業を進めている」(フィリップスエレクトロニクスジャパンで知的財産・システム標準本部のシステム標準部で部長を務める黒田直祐氏*1)という。

図1 図1 ワイヤレス給電技術の標準規格の策定進む ワイヤレス給電技術の普及促進を図る業界団体「Wireless Power Consortium(WPC)」は、標準規格の策定作業を活発に進めている。

 電磁誘導現象を使ってワイヤレスで電力を受ける機能を備える電子機器はこれまでもあった。しかし、各企業が独自の方式を使っており、互換性はなかった。ワイヤレス給電技術に関して、複数の企業が協力して互換性を確保するための標準規格を策定するのは、初の試みである*2)

*1) フィリップスエレクトロニクスジャパンにおいて、Wireless Power Consortiumに関する作業をまとめる責任者である。

*2) 電磁誘導のなかでも、WPCは送電側コイルと受電側コイルの間隔が極めて近い「近接電磁誘導」方式を採用する。コイル間の伝送効率は90%以上になる。

「0.99版」まで策定進む

 Wireless Power Consortium(WPC)が最終的に完成を目指す標準規格は、3つのパートで構成する。パート1が「インタフェース標準規格書」、パート2が「パフォーマンス要求事項書」、パート3が「規格適合確認試験手順書」である。

 策定作業が最終段階にまで進んでいるのは、この3つのパートのうちパート1のインタフェース標準規格書についてだ(図2)。インタフェース標準規格書は、送電側デバイスと受電側デバイスのシステム構成や伝送する電力を制御する方法、制御信号をやりとりする通信方式、送電側と受電側がやりとりするデータ・フォーマットなどを規定する。3つのパートのうち、最も基礎となるパートである。

図2 図2 パート1の策定作業は最終段階 パート1は「1.0版」の直前となる「0.99版」まで策定が進んでいる。

 パート1の内容でまだ完全に決まっていないのは、送電側デバイスと受電側デバイスの間に入ってしまった異物を検出する方法や、受電側から送電側に送る制御情報の内容、送電側と受電側のデータのやりとりに使う「負荷変調」のかけ方など。インタフェース標準規格書が決まれば、これを基に各メーカーは実際の製品を想定した試作機の開発を進められる。

 パート2のパフォーマンス要求事項書とパート3の規格適合確認試験手順書については、別途策定作業が進んでいる。パート2のパフォーマンス要求事項書は、安全性(異物検知の具体的な手法)やユーザーの使い勝手(送電側デバイスと受電側デバイスの相対位置を示す手法)、電力伝送効率、デバイスの寸法、複数の受電デバイスに電力を供給する手法などについて規定する。なお、異物検知の手法についてはパート1でも記述するが、パート2では異物を検知するための具体的なパラメータを規定する。パート3の規格適合確認試験手順書は、コンプライアンス試験について規定したもの。WPCのロゴを使うには、このコンプライアンス試験を通過する必要がある。

70%以上の電力伝送効率を目指す

 Wireless Power Consortium(WPC)は2008年12月に誕生した。同団体が採用する近接電磁誘導方式は、電力伝送効率が高い、外部への電磁波の放射が少ない、実装コストが安価である、昔から技術開発が進められてきたといった多くの特長がある。さらに、WPCは技術仕様に、高い電力伝送効率を得るための仕組みと、安全性を確保するためのID認証のアルゴリズムを盛り込む。

 使用する受電側コイルの直径は40mm以下、送電コイルと受電コイルの距離は4mm〜5mm程度を想定している。利用する周波数は100kHz〜200kHzで、電力伝送効率は70%以上を目標とする。ここでいう電力伝送効率は、送電側の直流電力入力部から受電側の直流電力出力間の効率であることに注意する必要がある。コイル間の電力伝送効率は、90%を超える。待機時の消費電力は、実証実験で100μW程度となることを確認している。対象機器は、携帯電話機や携帯型音楽プレーヤー、デジタル・カメラ、コンピュータ周辺機器などである。

 規格策定に携わるレギュラー・メンバーは、合計10社。中国Convenient Power社、米Fulton Innovation社、米National Semiconductor社、フィンランドNokia社、オランダRoyal Philips Electronics社、カナダResearch In Motion(RIM)社、中国Shenzhen Sang Fei Consumer Communications社、米Texas Instruments社、オリンパスイメージング、三洋電機である。

 ここ最近、標準規格を利用可能な参画企業(アソシエイト・メンバー)が増えてきたようだ。同団体のWebページの情報では、2010年3月時点で24社に達する。アソシエイト・メンバーのうち、携帯電話機関連企業として英Sony Ericsson社や米Verizon Wireless社が名を連ねる。日本企業としては、東光やホシデン、ロームが参画している。

 5Wの技術仕様を策定した後、さらに高い電力を伝送可能な技術仕様の策定を目指す。この技術仕様では、ノートPCも対象機器となる。

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