調査リポート
» 2010年05月17日 11時00分 UPDATE

製品解剖:5秒で結果が分かる血糖値計、全機能を2チップに集積

ここ数年の間の家庭用血糖値計の進歩は素晴らしい。特に改良されたのが検査速度である。ACCU-CHEK Avivaは、検査結果をわずか約5秒後に液晶画面に表示する。ACCU-CHEK Avivaは測定値を500回分保存する機能を持ち、必要に応じて、7日間の平均値、または14日や30日間の平均値を表示することもできる。

[Steve Bitton,UBM TechInsights]

 糖尿病の患者数が増えている。CDC(米国疾病予防管理センター)によると、年々患者が増え、2007年には2360万人のアメリカ人が糖尿病にかかっている。医療制度への負担が大きく、費用がかかるため、費用対効果の大きい家庭用診断装置が魅力的になりつつある。今では、米国のあらゆる薬局で血糖値を手軽に測定できる血糖値計が手に入る。

 メディカルエレクトロニクス分野の大企業や中小企業が血糖値計市場に注目している。血糖値計を手掛けている企業として、スイスF. Hoffmann La Roche社や米Johnson & Johnson社、ドイツBayer社、米Abbott Laboratories社、米Home Diagnostics社などの名前が挙がる。

 TearDownでは、血糖値計に関する記事を以前掲載したことがある。Bayer社の血糖値計「Ascensia Breeze」を取り上げた「生体インピーダンス利用の体脂肪率計、簡易な回路構成で安価に実現」(2008年1月号)だ。今回は最近米UBM TechInsights社で実施した分解リポートを通じて、F. Hoffmann La Roche社の1部門であるRoche Diagnostics社の「ACCU-CHEK Aviva」(アキュチェックアビバ)の中身を紹介しよう(図1)。

どうやって血糖値計を使うのか

 血糖値を測定するには図1の下に写っている「試験紙」を使う。試験紙の収納容器にはそれぞれコードチップが入っており、チップ内に試験紙ごとの情報が記録されている。例えば使用期限などの情報だ。試験紙に問題がなければ、コードチップをACCU-CHEK Avivaに挿入する。

ALT 図1 血糖値計の内部構造 全体像(左上)と内部構造(右上)、試験紙(下)を示した。穿刺器具は写っていない。

 次に、ユーザーの血液サンプルが必要になる。適量の血液をできるだけ痛みがないように採取できるACCU-CHEK Aviva向け穿刺器具「Multiclix」と使い捨ての針を格納した「lancet drum」を組み合わせて使う。例えば指先などに傷を付けて微量の出血を起こす。最後に、血糖値計に差し込んだ試験紙の吸引部に血液を吸い込ませる。

 ここ数年の間の家庭用血糖値計の進歩は素晴らしい。特に改良されたのが検査速度である。ACCU-CHEK Avivaは、検査結果をわずか約5秒後に液晶画面に表示する。ACCU-CHEK Avivaは測定値を500回分保存する機能を持ち、必要に応じて、7日間の平均値、または14日や30日間の平均値を表示することもできる。アラーム機能も内蔵しており、1日に4つの異なる時刻に設定できる。指定した時刻にブザーが鳴るため、検査を忘れることがない。器具の上部には、赤外線ポートが備わっており、PCと通信することも可能だ。

2つのICに機能を集約

 ACCU-CHEK Avivaの筐体を開けると、特に凝った電子設計ではないことが分かる。プラスチックの筐体の中にはプリント基板が1枚だけあり、液晶画面とユーザーが操作する2個のボタンに接続されていた。部品コストを削減するためだろう、処理に用いる半導体は2つの大きなICにまとめ上げられていた。どちらも米Texas Instruments社のICである。

 血糖値計全体の制御などは、Texas Instruments社の「MSP430U334」が担っている。MSP430の品番コードから判断すると、同ICはMSP430x3xxレガシーシリーズの1つであり、動作周波数は8MHzと低い。MSP430U334は、1KバイトのRAMと32Kバイトの不揮発メモリを備えた液晶ディスプレイコントローラとしても動作する。

 刻印にあった「U」の意味はデータシートには記載されていない。おそらくMSP430U334は、MSP430x3xxシリーズの特別な品種であり、メディカルエレクトロニクスに向けたものなのであろう。このMSP403U334は、赤外線ポートの制御、液晶表示、演算、検査結果の保存など多数の機能を制御している。電流量から血糖値を読み取る

 ACCU-CHEK Avivaは、いわゆる電流測定電気化学反応を利用して血液中のブドウ糖(グルコース)濃度を検出する。測定時点に試験紙を通る電流は、血液中のブドウ糖の量に比例する。電流測定法と電量測定法(クーロメトリー法)は、最新の血糖値計が用いるブドウ糖検出方式の中でも、最も一般的な2つの手法である。

 Texas Instruments社の「7001201」は、試験紙上で起こる電流測定反応を制御する(図2)。試験時に7001201は電圧を血液サンプルに印加する。血液サンプルに印加された電圧によって電流が生じる。7001201は電流値を読み取り、結果をMSP430U334に受け渡すという仕組みだ。

ALT 図2 検体の電流測定反応を制御するチップ 米Texas Instruments社の「7001201」のダイ写真。

 家庭での糖尿病検査のニーズが増大し、また数多くの競合企業がこの市場に参入している。今後登場する血糖値計にはさらに新しい機能が加わり、価格も下がっていくことだろう。


Steve Bitton氏は、電子機器の解体/分解リポートを提供する米UBM TechInsights社のTechnical Intelligenceグループでプロダクト・マネジャーを務めている。同社のホームページ・アドレス

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