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» 2010年10月17日 11時00分 UPDATE

エネルギー技術 太陽電池:太陽電池の未来、変換効率はどこまで高まるか (1/2)

現在主力のSi(シリコン)太陽電池は、変換効率を30%以上に高めることができない。変換効率40%以上を狙う技術は5種類あり、2020年以降の実用化を目指している。

[畑陽一郎,EE Times Japan]

 太陽電池の研究開発目標は、大きく2つある。太陽光を電力に変換する効率を高めることと、部材(BOM)コスト/製造コストを引き下げることだ。日本、米国、欧州のいずれも将来の再生可能エネルギーの比率を総発電能力の1割以上に高めようとしており、効率改善とコストダウンは今後も重要な開発目標であり続けるだろう。太陽電池が生み出した電力の発電コストが、一般の送電網から供給される電力のコストと同等かより安価に供給できる状態「グリッドパリティ」を達成できなければ大規模な普及が望めないからだ。

 2つの目標の重み付けは開発時期や、太陽電池の方式によって変わるが、一般には変換効率が高くなるよう新しい材料や構造を開発し、次に材料コストや製造コストを抑えて量産する。これを繰り返すことで、商用電源よりも安価な電力を太陽光発電で供給するわけだ。

太陽電池の変換効率向上について、最新動向を別途まとめました。併せてご覧ください。

「不安定な」太陽光発電をどのように利用するかについては、こちらをどうぞ。


 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開した、2050年までの太陽光発電に関するロードマップ「PV2030+」では、変換効率と発電コストの目標をさまざまな方式の太陽電池ごとに示している(表1)。今後、効率16%の太陽電池モジュールを用いて発電コストを23円/kWh(家庭用電力相当)まで下げたのち、2017年にはモジュール変換効率20%で14円/kWh(業務用電力相当)を実現する技術を開発し、2025年には25%で7円/kWh(汎用電源相当)を狙う。電気自動車の充電用途に太陽電池を使った場合、発電コストが見合うのは2025年時点だという予測だ。

ALT 表1 太陽光発電に関するロードマップ「PV2030+」 さまざまな方式の太陽電池のセルとモジュールの変換効率の目標。単位は%。出典:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の資料を元に本誌が作成

 最終的には、「超高効率モジュール」を使うことで2050年時点の変換効率を40%にまで高めることが目標だ。

 ただし、40%という目標を計画通りに実現するめどは立っていない。なぜなら、Si(シリコン)などの単一の半導体を使うとバンドギャップが一定の値に決まり、赤外光から近紫外光まで幅広いスペクトルをもつ太陽光のうち一部のエネルギーだけしか利用できないからだ。使用した半導体のバンドギャップよりも低いエネルギーを持つ光子を捕らえることができない他、バンドギャップよりも高いエネルギーを持つ光子を取り込むと、エネルギーの取り出し過程で損失が生まれてしまう。

 Si以外の半導体材料を使ったとしても、40%は実現できない。変換効率を最大にするバンドギャップは1.4eVだが、そのときでも理論効率の上限が約30%だからである。

伸びしろが少ないSi結晶

 国内企業が出荷した太陽電池の86%*1)を占めるSi結晶太陽電池では、すでにセル変換効率が最大25%に達している。NEDOのロードマップでは2017年に至っても現在と同じ25%だと予想しており、2025年に30%に到達できるかどうかは分からない。短期的にはセル表面の形状(テクスチャー)や裏面反射膜を工夫することで入射光を閉じ込め、変換効率を改善できるが、すでに改善は限界に近づいている。

*1)太陽光発電協会(JPEA)が2010年8月26日に発表した、国内企業26社を対象とした統計値。2010年第1四半期(2010年4月〜6月)に出荷した太陽電池セルと同モジュールについての統計である。

 2025年までの課題は、セルを複数接続したモジュールの変換効率を高めることと、コスト低減だ。まずは、現在16%程度のモジュール変換効率を25%まで高める。太陽電池表面の電極の配置などの構造の改良の他、Ag(銀)以外の電極材料開発が必要になる。

 Si結晶太陽電池では、材料コストのうち、Si材料が約1/2を占める。さらにワイヤーソーを用いてバルク状のSiからSiウエハーを切り出す際の削りしろが材料の約1/2を占める。このため、ウエハーと削りしろの両方を薄くする手法が材料コスト低減に有効だ。

効率を高めにくい薄膜系

 Si結晶太陽電池に次ぐ生産量であるSi薄膜太陽電池では、変換効率の向上よりも材料コスト、製造コストの低減を目指した研究が続いている。バンドギャップが異なる複数のSi層を成膜することで、1層の場合より数ポイント変換効率を高められるが、それでも20%以上の実現は難しい。

 CIGS(銅インジウムガリウムセレン)太陽電池は、Si結晶太陽電池と同等の変換効率が実現できる見込みがある。例えば、ドイツZSWは、2010年8月に面積0.5cm2のセルで変換効率20.3%を達成したと発表した。CIGSが有利なのは、厚さ1μm〜2μmの薄膜で、厚さ200μmのSi結晶太陽電池と同じ変換効率が実現できそうな点である。材料コストを低く抑えられるため、量産規模が高まると、Si結晶太陽電池を駆逐していく可能性がある。

 色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池はSi結晶太陽電池とは異なり、バンドギャップの値を変えやすい。低温での製造が可能であることから、製造コストを引き下げやすい。軽量な太陽電池を製造できることから、ビル壁面などSi結晶太陽電池では敷設が難しい空きスペースを有効に活用できるなどの特長がある。

 ただし、変換効率では、Si薄膜太陽電池にも及ばない。これらの太陽電池も高変換効率よりも低コストを狙った方式である。

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