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» 2010年10月26日 00時00分 UPDATE

Analog ABC(アナログ技術基礎講座):第19回 差動対がオペアンプに変身(4)〜オープン特性を1次傾斜へ〜 (1/2)

今回と次回は、オペアンプの周波数特性に注目します。オペアンプを設計するために、増幅回路のオープン特性が1次傾斜になるように工夫します。

[美齊津摂夫,ディー・クルー・テクノロジーズ]

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 今回と次回は、オペアンプの周波数特性に注目します。本連載では、第16回以降、差動対の基本的な回路から出発して、いくつかの付加回路を使ってオペアンプに近づける方法を紹介してきました。

 オペアンプとして使うには、(1)利得が高いこと、(2)入出力動作範囲が広いこと、(3)オープン特性が1次傾斜であることの3つが必要です。第16回第17回では、能動負荷を使うことで利得が大幅に高められることを示しました。第18回では、エミッタ接地回路と電流源を追加することで、入出力動作範囲を広げられることを紹介しました。

 入出力動作範囲を広げた増幅回路は、前回(第18回)の図3(a)に掲載してありますのでご覧下さい。エミッタ接地のPNP型トランジスタと、電流源のNPN型トランジスタのコレクタ(つまり電流源)どうしが接続されているので、この部分も能動負荷となり、さらに利得を高められます。

 図1にこれまで設計してきたオペアンプの周波数特性を示しました。入出力動作範囲が広げられただけではなく十分な利得が得られたので図2(a)のようなボルテージフォロアとして使って、入力にパルス信号を入れてみましょう。

図1 図1 本連載の16回〜18回で設計してきたオペアンプの周波数特性 今回は、これまで設計してきたオペアンプをボルテージフォロアとして使って、パルス信号を入力したときの動作を確認してみましょう。
図2 図2 ボルテージフォロアにパルス信号を入力し、動作を確認 本連載では第16回以降、差動対から出発して、オペアンプの設計を続けてきました。(a)は、これまでに設計してきたオペアンプをボルテージフォロアに使った構成例。(b)は、ボルテージフォロアにパルス信号を入力したときの出力信号です。激しいリンギングが発生しています。このままでは、オペアンプとして使えません。

 ボルテージフォロアはその名前の通り、電圧が追従する回路です。つまり、入力した電圧に出力電圧が追従する回路で、主にバッファとして使われます。例えば、センサーなどの駆動能力の低い素子から信号を取り出すときに、ボルテージフォロアをバッファとして使います。

出力にリンギングが…

 パルス信号を入力したのは、回路(今回は、ボルテージフォロア)の動作や安定性を確認するためです。正弦波ではなくパルス信号を使うことで、パルス信号が含んでいる幅広い周波数範囲に対する特性を確認することができます。

 図2(b)に示した、ボルテージフォロアの出力電圧の時間変化を見ると、激しいリンギングが発生していることは一目りょう然です。2.9V付近と2.0V付近の電圧において、電圧波形がおよそ1n秒間隔で激しく振動しています。

 このリンギングには、周波数特性の形が深く関係しています。すなわち、リンギングが発生する周波数の利得がほかの周波数よりも高くなっていて、その周波数成分が強調されているのです(図3)。

図3 図3 リンギングの発生には周波数特性の形が深く関係 図2(a)のボルテージフォロアの周波数特性です。出力信号のリンギングには、周波数特性の形が深く関係しています。すなわち、1.2GHz付近の周波数だけが強調されるため、リンギングが発生してしまいます。

 リンギングがあっても大丈夫という設計者の方は別なのですが、オペアンプは帰還をかけて使うことが前提となっています。帰還をかけたとき、リンギングがあったままだと負荷の条件などによっては回路が発振してしまうので、オペアンプとして使うことはできません。

 再度、図2(a)のボルテージフォロアを見て下さい。図2(a)では、オペアンプの出力が入力に接続されていますので、帰還回路となっています。負帰還をかけたオペアンプを発振させずに、安定して動作させるには、位相余裕と利得(ゲイン)余裕を確保する必要があります。

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