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» 2011年02月02日 11時00分 UPDATE

エネルギー技術 電気自動車:SIM-Driveの電気自動車開発、第2号では化学素材や改造電気自動車に取り組む

「エンジンが無くなれば、高熱環境であるエンジンルームに配慮する必要がなくなり、新しい化学素材を利用しやすくなる。化学素材によって車体の軽量化が進めば走行距離がさらに延び、化学素材の加工のしやすさを生かせば製造コスト低減につながる。リサイクル性も上がるだろう」というのがSIM-Driveの代表取締役社長を務め、慶応大学の教授である清水浩氏の主張である。

[畑陽一郎,EE Times Japan]

 電気自動車(EV)の技術開発企業であるSIM-Driveは、2011年1月に開始した第2号の先行開発車プロジェクトに34社が参加すると発表した(図1)。2011年1月〜2012年2月の期間で、EVを設計、開発する。開発した技術はオープンソースとして参加企業に公開する。2014年に参加企業による量産出荷を予定している。量産メーカーの候補として、ナノオプトニクス・エナジーやPSA Peugeot Citroenなどを挙げた。「第2号プロジェクトで開発するEVの具体的な姿は今後参加者と協議して決める。例えば乗用車や多目的車、高性能スポーツカーなどがあり得るだろう」(SIM-Driveの代表取締役社長を務め、慶応大学の教授である清水浩氏)。

ALT 図1 第2号プロジェクトの参加メンバー 中央がSIM-Driveの代表取締役社長を務め、慶応大学の教授である清水浩氏。

 今回参加する企業の顔ぶれの特長は、化学メーカーが多いこと、欧州地域から3社が参加したこと、部品メーカーが加わったことである。例えば、欧州での生産台数2位のメーカーPSA Peugeot Citroenである。同社は、三菱自動車工業と電気自動車の基本契約を締結しており、三菱自動車工業のi-MiEVをベースとした電気自動車の開発を進めている。「SIM-Driveのプロジェクトの成果は、当社の(i-MiEVベースのEVの)次の世代のEVに生かしたい。三菱自動車工業との共同事業でSIM-Driveの技術を利用するかどうかは未定だ」(PSA Peugeot Citroen)。

第1号車は2011年3月に完成

 SIM-Driveが開発するEVは2つの特長を備える。1つは、タイヤ内部にモーターを格納するインホイールモーター技術(SIM-Drive技術)であり、もう1つは車のプラットホーム下部に中空のフレーム構造を設け、電池やインバーターなどEVに必要な主要部品を格納するコンポーネントビルトイン式フレーム技術である。いずれもEVの軽量化に役立ち、搭載する電池の量を増やさなくても走行距離を延ばすことができるという。電池以外の部分の価格は同サイズのガソリン車と同水準になるよう設計、開発を進めるとした。「10万台規模の量産であれば、電池を除いて150万円程度にできるだろう」(清水氏)。

 SIM-Driveは2010年1月〜2011年3月までの予定で、第1号の先行開発車プロジェクトを実施中である。現在、横浜の組み立て工場で、内装を組み立て中である(図2)。第1号プロジェクトにも34社が参加しているが、第2号プロジェクトとは参加社が全て異なる。1号車の成果は2号車に生かし、2号車の成果は1号車の参加企業と共有する。

ALT 図2 組み立て中の第1号先行開発車 詳細は2011年3月に明らかにするとした。車体写真にぼかしをかけた状態で見せた。

 第1号プロジェクトでは2点の技術の開発に成功したという。1点目はすでに完成しているインホイールモーターを有効に使うためのサスペンション構造を開発したこと、2点目は、車体を軽く合理的に作る一般的なモノコック構造とSIM-Driveのコンポーネントビルトイン式フレームを融合するための技術開発である。

 第2号プロジェクトで目指す開発内容は2点ある。まず第1号で開発したEVの改良である。具体的には信頼性や耐久性、安全性の向上に加え、自動車の乗り心地に直結する音や振動、突き上げへの対応、生産性重視設計や材料選定、部品の見直しである。もう1点は、化学産業の参加者を交えた化学材料採用に向けた研究である。

 さらに第2号プロジェクトと並行して、SIM-Driveの自主開発という形で1年間をかけてガソリン車を改造したEV(コンバージョンEV)の開発に取り組む。「これまでのコンバージョンEVと比べて、インホイールモーターと交換する方式だと、走行距離が3割増になる」(清水氏)。すでに慶応大学内で試作を進めており、SIM-Driveとしてサスペンションなどの再設計に取り組むとした。2011年の段階では、コンポーネントビルトイン式フレーム技術はコンバージョンEVに採用しない。

車体に化学素材を適用

 これまでも車体などにエンジニアリングプラスチックを使う研究開発が各社で試みられてきた。EVで化学素材に取り組む狙いは何だろうか。「エンジンが無くなれば、高熱環境であるエンジンルームに配慮する必要がなくなり、新しい化学素材を利用しやすくなる。化学素材によって車体の軽量化が進めば走行距離がさらに延び、化学素材の加工のしやすさを生かせば製造コスト低減につながる。リサイクル性も上がるだろう」(清水氏)。さらに「化学素材を適用することで、車体を1割から2割程度軽量化できると予想している。1割であっても走行距離が15%延び、加速減速の性能が高まる」(同氏)。

 化学素材の適用を進めるため、「電気自動車化学産業研究会(仮称)」の発足を予定している。車メーカーや部品メーカー、化学産業が相互に技術を理解し、化学素材をどのようにEVに生かせるかを研究するという。

営業車としてのEVのメリットも強調

 第2号プロジェクトには、タクシーサービスを運営する東京エムケイが加わっている。タクシーにはEV、それもSIM-DriveのEVが適すると説明した。「1カ月当たり、1台のタクシーのガソリン代は30万円程度だが、SIM-DriveのEVであれば燃費が改善されて1/10になるため、車両自体が高価であっても2年間でガソリン車とコストが釣り合う。タクシーは5年程度運用するため、経営上意味がある」(清水氏)。1回の充電で300km走行でき、6000回の充放電が可能なリチウムイオン二次電池を利用するため、電池を交換するまでに180万km走行できるという。さらに、走行時の騒音が小さいため、早朝や深夜であってもタクシーサービスの運営に問題が少なくなるとした。

 第2号プロジェクトに参加する34社のうち、車の部品メーカーを含む7社は非公開であり、以下の27社が会社名を公開した。Bosch、PSA Peugeot Citroen、旭化成、アドバンテスト、オイレス工業、川崎工業、クラレ、サンスター技研グループ、ソミック石川、タカタ、ダッソー・システムズ、千代田化工建設、ティラド、TBK、デュポン、東レ、東北電力、東京エムケイ、凸版印刷、豊田通商、日本パーカライジング、日立アドバンストデジタル、日立化成工業、ポリプラスチックス、ミクニ、三井デュポンポリケミカル、ミツウロコ。

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