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» 2011年02月07日 11時17分 UPDATE

Mobile World Congress(MWC) 無線通信技術:モバイルの祭典が間もなく開幕へ、7つの見どころを紹介

スペインのバルセロナで開催される携帯電話関連の国際展示会「Mobile World Congress 2011(MWC 2011)」。会期は2011年2月14日〜17日だ。主催団体によれば、世界の200カ国から5万人を超える参加者が見込まれるという。EE Timesは、MWC 2011の7つの見どころをまとめた。

[Junko Yoshida, Dylan McGrath,EE Times]

 モバイルの祭典の幕が間もなく上がる ―― スペインのバルセロナで開催される携帯電話関連の国際展示会「Mobile World Congress 2011(MWC 2011)」。会期は2011年2月14日〜17日だ。主催団体によれば、世界の200カ国から5万人を超える参加者が見込まれるという。

 例年のことだが、この展示会はモバイル通信の波乱に富んだ世界で急激な変化が起きているタイミングで開催される。今回は、人類がコミュニケーションしたり情報にアクセスしたりする方法を変えることになるだろう、新たなデバイスとテクノロジの旋風が巻き起こっている。

 EE Timesは、MWC 2011の7つの見どころをまとめた。

目次

  1. 150米ドルのスマートフォンが登場
  2. NFCでついにモバイル決済が商用化
  3. LTEにスポットライトが当たる
  4. フェムトセルの背後に流れる上げ潮
  5. タブレット、タブレット、タブレット
  6. ザ・チャイナファクター
  7. 欧米偏重なのか?
図1

(1)150米ドルのスマートフォンが登場

図2

 スマートフォンの分野で2011年に最もホットな話題は、もうアップルの「iPhone」ではない。150米ドルのスマートフォンだ。「これこそ、スマートフォンの新たなるスイートスポットだ」。DSPコアベンダーのシーバ(Ceva)でCEO(最高経営責任者)を務めるGideon Wertheizer氏はこう指摘する。「実現するには、ベースバンドとアプリケーションプロセッサを1個のチップに集積したシングルチップのソリューションが必要になる。価格の高いチップを2個も使うことはできない」(同氏)。

 市場調査会社であるThe Linley Groupの創設者でプリンシプルアナリストを務めるLinley Gwennap氏もこれに同意する。「2011年のスマートフォン市場では、新興国における低コスト機の売り上げが最も大きく伸びると考えている。スマートフォンを50米ドル〜100米ドルのBOM(部材コスト)で実現するには、アプリケーションプロセッサと携帯電話のベースバンド部を集積したシングルチップ品が不可欠だ」と同氏は述べた。「MWC 2011では、ブロードコムやMarvell Technology Group、クアルコム、ST-エリクソンなどの企業が展示する、スマートフォン向けの低コスト集積化ソリューションに注目してほしい」(同氏)。

 ただし、150米ドルスマートフォンに懐疑的な向きもある。市場調査会社であるForward Conceptsでプリンシプルアナリストを務めるWill Strauss氏は、MWC 2011で150米ドル機の出展があるとみているが、それがすぐに店頭に並ぶかどうかは不透明だと言う。携帯電話事業者は確かにこのコンセプトを押しているだろうが、メーカーは果たしてそんなものを売りたがるのかというのが同氏の指摘だ。

 また同氏は、150米ドルスマートフォンの登場によって、「スマートフォン」と「フィーチャーフォン」の線引きがあいまいになる可能性があるとも付け加えた。同氏によれば、150米ドル機もタッチスクリーンディスプレイは搭載するだろうが、機能の幅については最上位機種に及ばないとみている。「150米ドル機もスマートフォンと呼ぶことはできるだろう。しかし、iPhoneほどスマートというわけにはいかない」(同氏)。

 さらに同氏は、150米ドルスマートフォンを最初に製品化するメーカーの顔ぶれに、インドの携帯電話機メーカーであるMicromax Mobileが入るかどうかは疑わしいと述べた。 エントリーレベルのスマートフォンは、この先数年間で価格がいっそう低くなる可能性もある。無線市場の調査会社であるJuniper Researchが最近発行したリポートによれば、低コストスマートフォンは当初の150米ドルから2015年には80米ドルまで低下する。競争が激化するとともに、低コストチップセットが入手できるようになることが理由だという。同社は、エントリーレベルのスマートフォンの出荷数は、2015年に1億8500万台を超えると予測している。

(2)NFCでついにモバイル決済が商用化

 思えば長い月日がかかったものだ。ついに、あなたの携帯電話機にNFC(Near Field Communication)機能が載る日がやって来る。The Linley GroupのGwennap氏は、NFC機能がさまざまな場面で使われ始めており、「主な用途は店頭での決済である」と言う。同氏によれば、現時点ではNFC機能を搭載する携帯電話機はまだ少ないが、2012年に市場に投入される機種に向けて、複数の半導体ベンダーがNFC機能の追加に使うチップの供給を開始しているという。

 IMS Researchもこれに同意する。同社は最新のリポートの中で、NFCについて「やっと、ものになった」と表現した。さらに、同じリポートの中で同社は、「サムスン電子やノキア、グーグル、アップルなどの企業の取り組みによって、NFC機能を搭載した携帯電話機の2011年の販売数は4000万台を超える見込みだ。長らくお預けになっていた、商用レベルの量産出荷がついに始まる」と付け加えている。

図3 写真の出典:NFC Forum

(3)LTEにスポットライトが当たる

図4

 「今年のMWCでは、『本物』のLTEデバイスを目にすることができるだろう」。高周波ICベンダーであるAnadigicsのCEOを務めるMario Rivas氏はこう話す。もちろん、LTE(Long Term Evolution)はすでに昨年(2010年)のMWCでも、バルセロナの街で人々の話題になっていた。ただし当時はまだ、「私を信じろ、きっとうまくいく」といった調子だったと同氏は付け加える。

 昨年のLTEソリューションは、そのほとんどが3G基地局にLTCカードを取り付けたもので、システム構成が複雑になり、熱やサイズも大きくなっていた。今年は昨年とは対照的に、「LTE基地局の展望がやっと定まった」と同氏はみる。新たなトレンドは、LTEと3Gを同じシステム内の同じチップ上で扱える第2世代のチップが、数多く投入されていることだ。主要なプレーヤー企業としては、テキサス・インスツルメンツやフリースケール・セミコンダクタ、Mindspeed Technologiesなどがある。

 エンドユーザー向けのLTE機器では、サムスン電子やLGエレクトロニクスなどが製品展開する、USBスティック型のLTEデータカードの新製品が数多く並ぶだろう。今のところこれらの製品は、市販チップではなく、大手機器メーカーが社内で設計したチップを用いている。

 ただしLTE機能を内蔵する携帯電話機についてシーバのCEOであるWertheizer氏に尋ねると、このような答えが返ってきた。「いや、私は今はLTE携帯電話機を買わない。出かける先々で電源コンセントにつながなければならないし、電話をかける前に休ませてやる必要もあるからだ」。同氏は率直に、「携帯電話機へのLTEの搭載は、2015年まではそれほど広がらないのではないか」と指摘している。

 IMS Researchは、「携帯電話網の敷設済み基地局のうち、最終的にはかなりの部分がLTEに対応する」との見解を示す。同社は、「2014年までは、世界の敷設済み基地局のうちLTEに対応するのは1%にも満たないだろう。その間ほとんどの携帯電話事業者は、投資済みのW-CDMA(UMTS)網とHSPA網を何とか生かして、エンドユーザーからのデータ通信速度の改善要求に応えるという方策を探るはずだ」と言う。

(4)フェムトセルの背後に流れる上げ潮

 これまで、フェムトセルでのメッセージングは多くの人にとって分かりにくかった。果たしてフェムトセルは住宅で必要になるのだろうか? 企業向けなのか? それとも、公衆フェムトセルこそが進むべき道なのか?

 LTEによって、このビジョンがはっきりするかもしれない。

 無線通信向け半導体のベンダーであるpicoChip Designsによれば、LTEがその潜在能力を発揮するには、携帯電話事業者は大容量の高速データを提供する必要がある。それには、領域の小さいセルが求められるという。同社でコーポレートマーケティング担当ディレクターを務めるAndy Gothard氏は、「LTEでは、その原理上、セルは小さくなる」と述べる。英国のThe Bathは、「小セル」での展開に向けて最適化したLTE製品を前面に押し出している。

 シーバのWertheizer氏も、LTEの商用展開が進むにつれてフェムトセルに明りが差すとの考えを示す。同氏は、公衆フェムトセルを導入すれば、「LTEを近隣に行きわたらせやすくなる」と述べている。

 ただし同氏は、「住宅用フェムトセルゲートウエイの背後にある狙いも明らかになってきた」と指摘した。同氏によれば、ブロードコムはフェムトセル用SoCを手掛けていたPercelloの買収を2010年10月に発表した後、Percelloのエンジニアリングチームをブロードコムの無線グループではなく、DSLグループに組み込んだと言う。この動きから、ブロードコムの狙いは明確だ。つまり、フェムトセルをDSLゲートウエイのような装置に統合することである。

 The Linley GroupのGwennap氏は2010年の秋に、フェムトセル機能のコストが増加し続けており、10米ドル程度になる見込みだと指摘していた。「将来的には、フェムトセル用プロセッサに、DSLモデムやケーブルモデムに加えてイーサネットや無線LANも統合しなければならなくなる可能性がある。ブロードコムは明らかに、そうしたチップを開発するだろう」(同氏)。

図5

(5)タブレット、タブレット、タブレット

図6

 2011年1月にラスベガスで開催された米国最大の家電ショー「2011 International CES(Consumer Electronics Show)」では、数多くのメディアタブレットが所狭しと並んだ。その総数は100機種を超える。

 アナリストたちはMWC 2011も代わり映えは無いだろうと予想しているが、Forward ConceptsのStrauss氏は、「MWCの参加者はモバイル業界の保守的なビジネスパーソンが多く、CESに集まるガジェット好きの集団とは対照的である。そのためMWCで展示されるタブレットは、CESのそれよりもさらに店頭に並ぶまでに時間がかかる機種が多くなるだろう」との見解を示す。「CESでは、数え切れないくらいのタブレットが出展されていた。MWCでも、同じくらい多くのタブレットを目にすることになるはずだ」(同氏)。

 T-MobileでM2M(Machine to Machine)担当ナショナルディレクターを務めるJohn Horn氏は、「CESでは、タブレットに関するうわさがたくさん流れていた。MWCでも同じようになるのではないか」と話す。

 今回のMWCで注目すべきは2つ。こうしたタブレットに使われているモデムチップのベンダーはどこか。そして、それらのモデムチップを駆動するプロセッサチップは何かである。

 The Linley GroupのGwennap氏は、タブレット向けのクアッドコアプロセッサがお目見えするのではないかと期待している。「少なくとも2社は、クアッドコアのタブレット向けARMプロセッサを発表するのではないか。その1つはNVIDIAのモバイルプロセッサ『Tegra 3』だ。それらに加えて、フリースケールはCESで発表したクアッドコア版の『i.MX』プロセッサを展示するだろう。これらのプロセッサによって、来年(2012年)登場するタブレットは、現在のネットブックを超える性能を備えることになるはずだ」(同氏)。

 T-MobileのHorn氏は、タブレットの興隆がモバイル業界のさまざまな力学に影響を及ぼすとみており、M2Mアプリケーションにもインパクトを与える可能性があると言う。「より多くの人々がスマートデバイスを持ち運ぶようになり、より多くのアプリケーションがそうしたデバイスに対応するようになれば、M2M市場の成長に大きなインパクトがあるだろう。M2M市場で現在進行中の案件の多くは工業分野だが、それと同時にスマートデバイスとアプリケーションの拡大も急激に進んでおり、それは個人ユーザーにも影響を与えることになる」(同氏)。

(6)ザ・チャイナファクター

 MWCに参加すれば、経験豊富な中国ウオッチャーであろうとなかろうと、中国がモバイル業界にこれまで以上に広く、深く入り込んでいることを感じるだろう。

 「China Mobileは無視できない」とシーバのWertheizer氏は言う。中国独自のTD-SCDMA方式を掲げ、China Mobileは今や中国の国内市場にとどまらず、インドやインドネシアといった他の新興経済圏にまで手を広げている。

 2010年の秋には、China MobileがTD-SCDMA端末の入札条件として1台当たりの調達価格を150米ドル以下に抑えることを求めており、ノキアやソニー・エリクソン、モトローラ、サムスン電子など「外部」の携帯電話機メーカーのうち、それに応じられる企業は実質的に皆無だと広く報道された。実際に落札したのは、すべて中国国内の携帯電話機メーカーだった。これらのメーカーは、Spreadtrum CommunicationsやLeadcore Technology、ST-エリクソンなどが供給するTD-SCDMAチップセットを用いている。

 China Mobileは携帯電話機メーカーに対し、中国独自規格のTD-SCDMA以外にもいくつかのハードルを課している。例えば、China Mobile独自のOS(Linuxコアを用いているが、Android OSとは微妙に異なる)を使うことや、全ての端末にモバイルテレビを搭載することなどである。しかもこのモバイルテレビは、中国のCMMB(China Mobile Multimedia Broadcasting)規格に基づくものだ。

 こうした仕様は、米国の携帯電話事業者が求める要件と完全に一致するわけではない。しかし携帯電話機メーカーがTD-SCDMA市場に食い込むには、China Mobileが課すこれらハードルを乗り越えなければならないのだ。

図7 写真の出典:Vladimir Menkov/wikimedia.org

(7)欧米偏重なのか?

 Mobile World Congressのテーマは、欧米に都合が良いように不当にゆがめられるようになったのだろうか?

 デンマークのコンサルティング企業であるStrand Consultはそのように考えている。同社は、毎年発行しているMWCのプレビューニュースレターの中で、2011年のMWCのテーマが、米国と欧州それぞれに3億人ずついる携帯電話ユーザーに焦点を絞りすぎていると苦言を呈した。世界にはこの他に、携帯電話を毎日使うユーザーが43億人もいるというのに、そちらには焦点が当たっていないという。

 Strandによれば、第三世界により多くの携帯電話ユーザーが存在しているという事実にもかかわらず、MWC 2011の講演者のほとんどが西ヨーロッパと米国からやってくる。同社は、「実際のところ、このカンファレンスはどういうわけか米国が、もっと言えばシリコンバレーが支配するようになってしまった」との見解を述べた。

 Strandは、「米国は、世界のモバイル市場の7%しか占めていない。それにもかかわらず、モバイル業界についてメディアが報じる情報は、85%が米国に関するものだ」と指摘する。「現在、欧州各地の市場やアフリカの市場、アジアの一部の市場では、米国の市場に比べてかなり厳しい競争が展開されている。米国国内のモバイル市場では、その他のあらゆる地域で多くのモバイル企業が直面している極めて過酷な競争に比べて、競争が非常に制限されている」(同社)。

 仮にMWCが欧米偏重だとして、その理由の少なくとも一部は次のように説明がつく。つまり、先進国におけるスマートフォンの成長と、その他タブレットなど利益率の高いデバイスやサービスの潜在的な成長可能性が期待されているからだ。新興国市場にはより多くのユーザーがいるのかもしれないが、その市場の圧倒的大多数の消費者にとっては、フィーチャーフォンさえも手が届かない存在である。

図8 2010年のMWCで基調講演に立ったグーグルCEOのEric Schmidt氏が、2011年も演台に戻ってくる。 写真の出典:Vladimir Menkov/wikimedia.org
【翻訳/編集:EE Times Japan】

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