インタビュー
» 2011年02月21日 11時00分 UPDATE

テキサス・インスツルメンツ シニア・バイス・プレジデント Gregg Lowe氏:エネルギー分野に切り込む

テキサス・インスツルメンツは、長期的に成長が見込めるエレクトロニクス分野として、省電力、代替エネルギー、各国政府が推進するLED照明やスマートグリッドを挙げる。これらの分野にはどのような取り組みが必要なのか。テキサス・インスツルメンツにはどのような強みがあるのか、同社のアナログ事業統括シニア・バイス・プレジデントを務めるGregg Lowe氏に戦略を聞いた。

[畑陽一郎,EE Times Japan]

EE Times Japan(EETJ) テキサス・インスツルメンツが長期的に注力する分野は何か。

Lowe氏 まず重要なのがエネルギーを効率的に利用するために必要な省電力、省エネルギー分野である。どの顧客企業も省電力によって、機器利用時の各種コストを下げ、環境負荷を低くしようと努力している。携帯型機器はもちろんだが、それ以外の機器にも当てはまる。第2に代替エネルギー分野に注力する。太陽光発電やエネルギーハーベスティング、電気自動車(EV)などが含まれる。第2の分野で重要なのはバッテリマネジメントや充電の効率向上、モーター制御の向上などであり、当社が貢献できるものばかりだ。第3に、政府の規制やイニシアチブと直結している分野である。LED照明の普及促進やスマートグリッド推進などだ。このような分野に当社は投資している。

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 当社は競争力のある最終製品を顧客が実現できるようなチップを提供するために、2つの取り組みを進めている。まず社内に例えばLED照明に特化したビジネスユニットやモーターに特化したビジネスユニットを作っている。次に研究開発への投資、次の5年間を見越した投資だ。アナログICメーカーは投資にあまり積極的でないように見える。例えば、2009年1月に当社が開設したキルビー・ラボはこの2年間でアナログICメーカーが開いた唯一の研究所だ。

EETJ 多くの半導体企業がエネルギー分野に注力する方針を示している。テキサス・インスツルメンツにはどのような優位性があるのか。

Lowe氏 以下のように説明すると分かりやすいだろう。機器のシステムブロックダイアグラムを書いたとしよう。まず環境からセンサーを使って何らかの情報を読み出す。まず、アンプICを経由し、次にA-D変換器ICにつながる。そこから組み込みプロセッサに情報が伝わる。これらの3つのICはパワーマネジメントICを通じて電力が供給されている。組み込みプロセッサはD-A変換器IC、さらにアンプICを通じて実世界と情報をやりとりをする。顧客のシステムを抽象的に表すとこうなるだろう。さらに顧客の複数のシステムはインタフェースICを介して接続されている。

 当社がユニークなのは、この図式に登場する全てのICにおいて、業界第1位か、第2位の地位を占めていることだ。例えばアンプやパワーマネージメントICは第1位にある。パワーマネージメントICはエネルギー分野では必要不可欠なICだ。当社以外のアナログICメーカーはどれか特定のICに特化しており、そこで強みを発揮しているかもしれない。だが、すべてのICを対象としているのは当社だけであり、それゆえ市場に訴求でき、よりエネルギー効率の高い、コスト効率の高いソリューションを提供できる。

 当社は研究開発への投資に積極的で、幅広い製品で主要プレーヤーであり、営業部門も強い。他のアナログICメーカーが2009年に合計20カ所の製造拠点を閉鎖していくなか、当社は会津若松や中国の成都、テキサスなどに製造拠点を増やしている。2010年第4四半期の売上高が前年同四半期比で40%成長できたのは、当社にはこのような強みがあるからだ。

EETJ エネルギー分野では先進国を主に狙うのか。

Lowe氏 そうではない。新興国にも切実な需要がある。例えばインドは送電設備が電力需要の増加を満たす速度で成長できておらず、電力不足に陥りがちだ。停電も多い。このため、一般家庭向けのバックアップ電源の需要が高い。低価格で、機器に実装しやすいソリューションが求められている。

 他の例もある。新興諸国では、固定電話網のインフラが十分ではない。設備投資額を小さくするため、セルラーフォンの普及が望まれている。だが、そもそも電力網が未発達な状態で基地局をどうやって動かすのか。そこで小規模な太陽光発電と基地局を組み合わせたソリューションが必要になる。太陽光発電で動作する基地局に向けたICを当社は製品化している。

EETJ 新興国向けに高性能なICを提供しても、ユーザー側ではコスト的に見合わないのではないか。

Lower氏 太陽光発電で駆動する携帯基地局の例で考えてみよう。二次電池から取り出せるエネルギーをアナログICを使って実効的に増やすことができれば、あたかも電池を増設したかのような効果が得られる。ICの価格の分だけ出費が増えているように見えるが、システムコストは下がる。

EETJ エネルギーハーベスティングについては、取り組みがあまり進んでいないように見える。

Lowe氏 エネルギーハーベスティングは古くから使われてきた技術だ。例えば腕時計の自動巻きもそうだろう。現在、欧州を中心にタイヤの空気圧センサーなどでも使われている。

 もっと新しい用途もある。当社が注目しているのはメディカルエレクトロニクスとの組み合わせだ。糖尿病患者が使う血糖値計が内蔵するセンサーを体温で駆動できないかという研究が進んでいる。これも一種のエネルギーハーベスティングだ。

 エネルギーハーベスティングでは、エネルギーを生み出す素子自体よりもそれに接続するパワーマネージメント回路の方が開発が難しい。パワーマーネージメントICでは当社は元から優位にあるが、さらに強化していく。現在、エネルギーハーベスティング機器で利用できるような超低消費電力マイコン「MSP430」を製品化している。最も重要なパワーマネージメントICも近々製品投入する予定だ。


Gregg Lowe(グレッグ・ロウ)氏

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1984年に米Rose-Hulman Institute of Technologyを卒業後、同年にテキサス・インスツルメンツに入社。1989年に欧州のオートモーティブ・セールス・マネジャー、1994年から米国のマイクロコントローラ部門のP&L(調達・物流)の責任者を務める。1998年にASIC部門の責任者に就任し、デザインセンターを統括。2001年にハイパフォーマンス・アナログ事業部、ハイ・スピード・コミュニケーション&コントロールグループ責任者に就任後、2006年4月からアナログ事業統括シニア・バイス・プレジデント。

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