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日本の巨大地震が電子部品の供給網に影響、価格高騰の可能性ビジネスニュース アナリストリポート

米国の市場調査会社であるIHS iSuppliは、日本で起こった巨大地震による影響で、電子部品や電子材料が不足し、価格が高騰する可能性があると伝えている。

» 2011年03月17日 16時34分 公開
[Mark LaPedus,EE Times]

 米国の市場調査会社であるIHS iSuppliは、日本で起こった巨大地震による影響で、電子部品や電子材料が不足し、価格が高騰する可能性があると伝えている。

 同社は、今回の巨大地震の影響を受ける部品として、NAND型フラッシュメモリやDRAM、マイコン、標準ロジックIC、液晶パネル、液晶パネル用部品・材料を挙げている。

 同社は、「高密度NAND型フラッシュメモリのスポット価格は、すでに10%も高まっている。DRAMのスポット価格も、地震が発生した2011年3月11日以降、7%上昇している。成約価格は、当面は現状が維持される見通しだが、再取引の際には小幅の値上げが発生していると予想される」と述べている。

 サプライチェーンではこの他にも、主に無線通信に関連する部品が影響を受けるとみられる。英国の投資銀行であるBarclays Capitalは、リポートの中で「携帯電話向けの部品のサプライチェーンが被害を受けているとみられることから、現時点では携帯電話機向けの部品の供給に最も大きな影響があると予想される」と述べている。

 同社は、「地震が起こった東北・関東は、携帯電話機に使用されるコンデンサやフィルタ、インダクタの主要なサプライヤーが多く集まる地域だ。携帯電話機業界は、広範な部品不足からの回復に向けて動き出したばかりで、在庫の少ない状態が依然として続いている。当社は2011年の携帯電話機販売台数の成長予測を9%(スマートフォンは48%)としていたが、このまま部品不足が続けば、この成長予測にも影響が生じるだろう。日本からの部品供給が滞った場合、携帯電話機業界で最も打撃を受けるメーカーはノキアだと思われる」と述べている。

 日本には受動部品の大手メーカーが数多くある。Barclays Capitalのリポートによれば、アルミニウム電解コンデンサで世界シェア20%を持つ日本ケミコンは、同社の高萩工場(茨城県高萩市)でコンデンサの主要部材であるフィルムを製造しているが、同地域では震度6強の揺れが観測された。

 日本ケミコンは山形県や宮城県にも主要拠点を構えており、市場シェアの30%を占めるアルミニウム電極や誘電高分子材料を製造している。このほか、EMIフィルタやインダクタを製造する村田製作所の登米工場(宮城県登米市)や、ヒロセ電機の生産子会社の1つでコネクタを製造する東北ヒロセ電機(岩手県宮古市)、アルプス電気が運営する東北地方の工場数社が大きな打撃を受けたという。

 投資銀行であるFBR Capital Marketsでアナリストを務めるCraig Berger氏は、この他にも次のような問題点を指摘している。「当社のアジアでの調査によって、エポキシ樹脂の一種であるビスマレイミド・トリアジン(BT)の不足が深刻化していることが明らかになった。BTは三菱ガス化学がほぼ100%を生産している。この樹脂材料は、台湾Advanced Semiconductor Engineering(ASE)や台湾Siliconware Precision Industries(SPIL)、米国Amkor Technologyなど、半導体後工程の組み立てやテストを手掛ける企業が製造するPBGA(Plastic Ball Grid Array)パッケージなど、多くの半導体パッケージ基板に使われている」(同氏)。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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