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» 2011年03月25日 09時54分 UPDATE

無線通信技術:複数の無線通信に対応した機器開発を迅速に、Insight SiPのCEOに聞く

腕時計やシューズ、ヘルスケア機器といった製品にも、無線機能が載るようになった。無線モジュールを手掛けるInsight SiPは、製品開発を迅速に進められるといった観点で、モジュール/SiPを活用が有効だと主張する。

[前川慎光,EE Times Japan]

 「無線接続によって、さまざまな製品は、さらに進化する。当社が目指すのは、エレクトロニクス業界に限らず、さまざまな業界の製品開発者が、無線機能を容易に組み込めるようにすることだ」。こう語るのは、無線モジュールやSiP(System in Package)の設計に特化した事業を展開しているInsight SiPのCEOを務めるMichel Beghin氏である。

 携帯電話機やスマートフォン、タブレットPCといったモバイル機器では、すでにさまざまな無線通信技術が広く活用されている。さらに最近では、腕時計やシューズ、ヘルスケア機器といった製品にも、無線機能が載るようになった。今後も、無線機能とは無縁だった製品への搭載が進むだろう。

 Insight SiPは、機器への組み込みが容易であることや、製品開発を迅速に進められるといった観点で、無線モジュール/SiPを活用が有効だと主張する。

 同社は、特性を維持しつつ小型アンテナを基板に実装する技術や、モジュール/SiPを小型化する設計技術に強みを持つ。Beghin氏と、CTOを務めるChiris Barratt氏に、事業戦略や注目している市場などを聞いた(図1)。

図1 図1 Insight SiPのCEOを務めるMichel Beghin氏(写真左)と、CTOを務めるChiris Barratt氏(写真右)

EE Times Japan(EETJ) SiP/モジュールの事業に注目した理由を教えてほしい。

Insight SiP 無線接続の分野で、モジュール/SiP技術の重要性が今後、ますます高まると考えたからだ。その理由を説明しよう。

 かつては、1つのシステム(機器)に、1つの無線通信方式という構成が一般的だった。これに対して最近では、Wi-FiやBluetooth、GPS、FMなど、1つの機器に複数の無線通信方式が採用されるようになった。市場の要求は、さらに接続性を高める方向に進んでおり、「マルチプルシステム」という言葉が、機器設計のキーワードの1つであることは間違いないだろう。

 複数の無線通信機能を載せた機器を開発するとき、必要な半導体チップや電子部品をほぼ統合したSiP/モジュールを活用することで、機器への無線機能の搭載が容易になり、開発を迅速に進められると考えている。

 SiP/モジュールに採用する半導体チップは、例えば、Wi-FiやBluetooth、WHDIといった特定の無線通信方式に対応したものだ。モジュールまたはSiPに、このようなチップを複数載せることで、複数のシステムに対応できることになる。

 このようなコンボモジュールを設計する上で難しいのは、ごく限られたスペースに、複数の無線通信方式を共存させることである。

 小型のSiP/モジュールを開発することはもちろんのこと、複数の無線通信方式間で干渉を抑えて、データ伝送の効率を維持する設計が難しい。ここに当社の強みがある。すでに、Wi-FiとBluetoothのコンボモジュールを設計した事例がある。今後、3G通信とLTE通信のコンボモジュールを、携帯電話機向けに開発する計画がある。

EETJ SiP/モジュールを使わずに、機器を開発するケースも多い。SiP/モジュールを使う意義を確認したい。

Insight SiP  強調したいのは、当社は、チップベンダーと半導体チップを使って最終製品に組み上げるアセンブリメーカー(または機器メーカー)の間にあるギャップをうまく埋める立ち位置にいるということだ。

 当然のことながら、チップベンダー半導体チップや電子部品を提供する。これを使うアセンブリメーカーや機器メーカーは、無線機能を容易に機器に実装し、より迅速に機器の開発を進めたいと考えている。PCを例にとってみても、1つの機器に膨大な量の半導体チップや電子部品が、詰め込まれている。機器が複雑になるほど、複数の半導体部品や電子部品を統合し、1つの機能を実現したモジュール/SiPを活用する機運が高まるだろう。

図2 図2 Bluetooth Low Energy規格に対応した無線モジュール 8mmx12mmx1.4mmと小型のパッケージに無線通信チップやアンテナ、整合回路を実装した。無線通信チップには、ノルディックセミコンダクターの「nRF8001」を採用した。

EETJ Wi-FiやBluetooth、GPS、FMといった複数の無線回路を、1つのチップに集積したコンボチップが数多く製品化されている。小型化や部品コストといった観点で、SiP/モジュールよりも、コンボチップの方が有利ではないか。

Insight SiP 複数の機能の統合という観点では、コンボチップも当社が手掛けるSiP/モジュールも同じ方向を目指している。

 ただ、市場の要求の移り変わりが、非常に速いという点を考える必要がある。集積度の高いコンボチップの設計はそう簡単ではない。設計に着手した後、量産を開始するまで、数年掛かるのが一般的だ。数年の間に市場の状況は、大きく変わる。

 IEEE 802.11nやWHDIなど、新たに登場した無線通信方式においては、まず、コンボチップではなく、単体の無線チップが世の中に登場する。新たな無線方式に対応した単体チップを載せたSiP/モジュールを使えば、新たに登場した無線通信方式をすぐに採用できることになる。

 半導体チップの集積化も進むが、あるコンボチップが完成したころには、また新たな技術が登場する。新たな技術を採用した最終製品の設計や製造を迅速化するには、SiP/モジュールが適しているだろう。

 もう1点、考慮すべきことは、コンボチップには外付け部品が必要なことだ。ハイパワー、RF、デジタル、アナログと異なる回路ブロックを、1つのチップに集積するのは、そう簡単ではない。現在のコンボチップでは、ベースバンドプロセッサと一部のRFフロントエンドを統合しているが、パワーアンプやアンテナなどは外付けする必要がある。当社のSiP/モジュールであれば、アンテナやパワーアンプ、整合回路も統合されているので、外付け回路を新たに設計する手間が省ける。

図3 図3 高速無線通信規格「WHDI(Wireless Home Digital Interface)」に対応した送信側モジュール CTOのChiris Barratt氏が自作したデモ用のノートPC。送信側の無線モジュールが組み込まれている。送信側の無線モジュールは、PCI技術の標準化団体「PCI-SIG(PCI Special Interest Group)」が規定した「Display-Mini Card」に準拠している。外形寸法は44.4mm×26.8mm×5mm。WHDI用のアンテナは、ノートPCのディスプレイ部に設置している。受信側については、クレジットカードサイズのモジュールの開発が最終段階に入り、2011年4月末にはサンプルを提供できる予定だという。

EETJ 注目している市場を教えて欲しい。

Insight SiP まず従来から対象にしている市場として、PCや携帯電話機、スマートフォン、ゲーム機といったモバイル機器の分野がある。モバイル市場に加えて、今まさに、立ち上がりつつある新市場に注目している。

 これまで無線機能や、エレクトロニクスそのものがあまり絡むことのなかった、例えば腕時計、衣服、くつ、ヘルスケアといった製品だ。無線回路や電子回路の設計経験が豊富ではない企業でも、チップではなく、アンテナも含めた複数の機能を統合したモジュールを使うことで、製品の開発を迅速に進められるだろう。

EETJ 今後の製品計画を教えて欲しい。

Insight SiP 受託設計の他に、Bluetooth Low Energy規格とWHDI規格に対応したモジュールの2つを、自社企画の製品として提供している(図2図3)。今後の具体的な開発計画は公表できないが、2つの方向性がある。

 1つは、低消費電力の無線規格を採用したSiP/モジュールである。低消費電力にとどまらず、エネルギーハーベスタを活用した「ゼロエネルギーデバイス」にも注目している。エネルギーハーベスタやセンサー、無線回路を統合したモジュールは、大きな需要があると考えている。

 もう1つの方向性は、ハイビジョン映像の無線伝送の領域だ。現在、この領域に向けた製品として、ハイビジョン映像を非圧縮かつ低遅延で伝送可能なWHDIモジュールを提供している。ただし、WHDI規格にはこだわっていない。

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無線 | 通信 | WHDI | アンテナ | Bluetooth | Wi-Fi


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