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1回充電で333km走行可能、SIM-Driveが先行開発車を完成エネルギー技術 電気自動車

電池容量を増やさず走行距離を伸ばした。エネルギー利用効率が高いインホイールモーターなどの独自技術を実装した他、エネルギーの損失を低くする材料や構造や回生エネルギーを高効率で生み出す仕組みを採用することで実現した。

» 2011年03月30日 22時00分 公開
[畑陽一郎,EE Times Japan]

 SIM-Driveは2011年3月29日、電気自動車(EV)の先行開発車「SIM-LEI(Leading Efficiency In-wheel motor)」が完成したと発表した(図1)。自動車メーカーや部品メーカー、材料メーカー、商社、地方自治体など34の企業や機関が参加し、2010年1月19日から開始した先行開発車事業第1号の成果である。2013年の量産化を目指す。

 SIM-LEIの性能目標は航続距離300kmである。ガソリン車と同等の使い勝手を得るために、300kmの連続走行を目標に設定して開発したという。完成車をJC08モード*1)で走行試験したところ、333kmを連続走行できた。100km/hの定速走行時では305kmだった。

*1)国土交通省が定めた燃費測定方式である10・15モードに替わって採用された燃費測定方式。市街地を対象とした10・15モードよりも実際の走行パターンに即した燃費を表すことができる。

電池を増やさずに航続距離を長く

ALT 図1 航続距離333kmを実現した先行開発車「SIM-LEI」 車体寸法は4700mm×1600mm×1550mm、車体重量は1650kg、定員は4人である。全長は中型車、全幅は小型車に相当する。最高速度は150km/h、100km/hまで加速するのに要する時間は4.8秒と短い。出典:SIM-Drive

 走行距離が伸びた理由は3つある。第1にエネルギー利用効率が高いインホイールモーターとコンポーネントビルトイン式フレームというSIM-Driveの独自技術を実装したことだ。第2にエネルギーの損失を低くする仕組みとして、オール鋼鉄製モノコックボディーを採用したことによる車体重量の軽量化、超低空気抵抗ボディーによる空気抵抗低減、超低転がり摩擦タイヤの採用による転がり摩擦の低減、を実現できたことである。第3にパワー密度が高い電池を利用したことで、車の運動エネルギーを電力に変換して利用する回生エネルギーを高効率で生み出すことができた。

 この結果、交流電力消費率77Wh/kmを実現した。この数値は、ガソリン消費換算で70km/lに相当するという。交流電力消費率が高いため、SIM-LEIが搭載する電池容量は24.9kWhと、他社の電池容量と同等水準に保つことができた。電池を大量に搭載することで走行距離を伸ばしたわけではない。

全てのガソリン車の置き換えが可能

 SIM-Driveによれば、交流電力消費率が高く、長距離走行が可能であるため、通常のガソリン車よりもエネルギー効率が高まる。夜間に充電すれば、発電所の増設は不要だと主張する。SIM-LEIが採用した電池は充放電回数が6000回と多い。充電した電力を昼間に放出して他の電機製品で利用すれば、現在問題になっている昼間の電力不足にも貢献できるという。


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