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(続報)TIのNational Semiconductor買収、アナリストはこう見るビジネスニュース 事業買収

アナログIC最大手のTexas InstrumentsによるNational Semiconductorの買収。両社はいずれも発表資料の中で、2社の製品ラインアップが補完的な関係にあると述べている。エレクトロニクス業界のアナリストらも、同様の見方を示す。

» 2011年04月06日 11時49分 公開
[Dylan McGrath,EE Times]

 アナログIC最大手のTexas Instruments(TI)が同大手のNational Semiconductor(ナショナル セミコンダクター)を買収すると2011年4月4日(米国時間)に発表した(参考記事)。両社はいずれも発表資料の中で、2社の製品ラインアップが補完的な関係にあると述べている。エレクトロニクス業界のアナリストらも、同様の見方を示している。

 市場調査会社のガートナーでアナログ半導体のアナリストを務めるSteve Ohr氏は、この買収でTIは急成長の手段を手に入れるという。ただし、TIが獲得する製品ラインは、必ずしも同社が社内で開発できなかった類のものではないと指摘する。

 同氏は、TIとナショナル セミコンダクターは何らかの面で互いに補完的になるだろうと述べる。また、この2社は企業文化の面で非常に似通っているという。「両社は、人材や強みにおいて非常に似通っている」(同氏)。

 また別の市場調査会社であるDatabeansでアナリストを務めるSusie Inouye氏は、「両社の製品ラインに重複はたくさんあるが、それは全く問題にならないはずだ。TIの真の狙いは、ナショナル セミコンダクターの顧客を取り込むことで、自社の顧客基盤を広げることにあるのではないか」との見解を示す。同氏は、今回の買収でTIは特に工業分野の市場で新たな顧客層を手に入れることになるという。

 「TIは派手に買収を繰り広げるような会社ではないが、生産能力や技術を獲得するために企業を買収している」と同氏は述べる。今回の買収については、「主な狙いは、ナショナル セミコンダクターの顧客基盤と営業部隊を獲得することではないか」(同氏)とみる。

 Databeansによれば、ナショナル セミコンダクターはアナログASSPの分野で2009年に第5位に着けていたが、不況後のリバウンドで市況が上向いた2010年には競合の数社が成長率で同社を上回ったため、第7位にシェアを下げていた(図1)。Databeansによると、ナショナル セミコンダクターは汎用アナログ製品では2009年と2010年ともに第3位にランキングされているという。

図1 図1 アナログIC市場における各社の2009年と2010年の売上高アナログIC全体の売上高のランキングである。ナショナル セミコンダクターは、この表中では「Other」に含まれる。出典:Databeans

一見重複に見えても実際のアプリケーションは異なる

 TIのアナログ事業部門でシニアバイスプレジデントを務めるGreg Lowe氏によれば、TIはナショナル セミコンダクターの製品ラインを詳細に検討し、両社の製品ラインがほぼ補完的な関係にあると結論付けた。一見、真っ向から競合するように見える製品でも、実際には異なるアプリケーションで使われているという。

 同氏は、1つの例として、スイッチング電源用ICを挙げた。TIはFET内蔵型のスイッチング電源IC「SWIFT」を提供しており、主に低電圧のアプリケーションで使われている。一方でナショナル セミコンダクターは、スイッチング電源向けIC製品群「SIMPLE SWITCHER」を供給しているが、これは主に高電圧のアプリケーションで利用されている。

 同氏によれば、TIは数多くの製品分野にわたってこのような検討を実施し、一見競合するような製品でも実際には補完的な関係にあることを見出したとする。

 ナショナル セミコンダクターのCEOであるDon Macleod氏は、今回の買収に関する発表資料の中で、「TIとナショナル セミコンダクターは極めて良好な相互補完関係を持っている」と述べ、さらに「TIはより広範な製品ラインアップと世界規模の大きな営業陣を擁しており、市場で非常に大きな存在となっている。ナショナル セミコンダクターの強固で収益性の高いアナログ部門での能力、特にパワーマネジメント製品での能力は、今後の意義ある成長を実現する基盤を提供する」と語っている。

東芝を抜き、インテル、サムスン電子に次ぐ第3位へ

 ガートナーのOhr氏によれば、TIは直近の不況が収束に差し掛かっている今の時期に、売り上げ規模が1億米ドル〜3億米ドル規模の複数の企業について買収を検討していたという。

 ガートナーによると、TIは世界の全半導体企業の売上高ランキングで2010年に第4位に着けており、同年の売上高は119億米ドルだった。これにナショナル セミコンダクターの売上高を加えれば、2010年の実績で2社の合計は同ランキング第3位の東芝を上回り、インテルとサムスン電子に次ぐ第3位に着けることになるという。ナショナル セミコンダクターの2010年度の売上高は14億2000万米ドルだった。

 市場調査会社のIHS iSuppliは、この買収によってTIは特に、電圧レギュレータ市場での優位性を高めることになると指摘する。IHS iSuppliによると、TIは2010年に同市場で17億米ドルの売り上げがあり、市場シェアは18.1%で第1位である。一方、ナショナル セミコンダクターは第3位で、15.2%のシェアを有している。

【翻訳/編集:EE Times Japan】



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