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クイズ王に勝利したIBMの「Watson」、学生に実力を披露する

与えられたトピックに関する質問に解答するために最も適したテキスト資料を特定する「知識源拡張アルゴリズム」と、解答候補が正しい可能性が高いことを認識する能力を向上させる「スコアリングアルゴリズム」はどのような用途に使えるのだろうか。

» 2011年04月11日 19時56分 公開
[Nicolas Mokhoff,EE Times]

 IBMは2011年3月末、米国ピッツバーグ市に立地するCarnegie Mellon University(CMU)でシンポジウムを開催した。IBMのスーパーコンピュータ「Watson」に用いたOpen Advancement of Question-Answering Initiative(OAQA)技術が、医療や法律、ビジネス、コンピュータサイエンス、エンジニアリングなどのさまざまな分野にもたらす可能性について、学究的な関心が集まり、学生たちとのアイデア共有が進んだ。

 CMUコンピュータサイエンス学部のLanguage Technologies Institute(言語技術研究所)に所属するエリックナイバーグ(Eric Nyberg)教授が率いる研究グループは、IBMと共同でWatsonのOAQA技術を開発した。CMUが寄与した技術開発は他にもある。与えられたトピックに関する質問に解答するために最も適したテキスト資料を特定する「知識源拡張アルゴリズム」と、Watsonの解答候補が正しい可能性が高いことを認識する能力を向上させる「スコアリングアルゴリズム」の2つの機能の開発だ。

 今回のシンポジウムでは、CMUと米University of Pittsburghの学生たちで構成されるチームが、Watsonの質問応答技術に関するデモを通じて、OAQA技術の実力を検証した。学生たちにとって、実践的な公開の場でWatsonの分析性能を目の当たりにする機会を得られたのは、今回が初めてとなる。

 IBMは、これまでのWatsonの開発において、Carnegie Mellon Universityが大きく貢献したこともあり、Watsonに関する大学シンポジウムを初めて開催する場所としてピッツバーグを選んだ。University of Pittsburghも長年にわたり、IBMとの間で強力な協力関係を築き上げており、クラウドコンピューティングやカーボンナノチューブ、流行病の発生や組織再生に関連する高度なヘルスケア分野などで、さまざまな共同研究プロジェクトを手掛けてきた。

Watsonの能力は何に役立つのか

 IBMは今回、大学コミュニティーにWatsonの技術を提示した目的を説明している。次世代の技術を革新したり、起業家となる学生たちに、Watsonがどのような形で社会に利益をもたらすことができるのかを考えてほしいためだという。

 IBMでイノベーション部門および大学プログラム部門の副社長を務めるBernie Meyerson氏は、「未来を担うリーダーたちにWatsonを間近で見てもらうことで、彼らのアイデアを刺激し、共により良い世界を築き上げていくことができる」と述べている。

 Watsonの名称は、IBMの創設者であるトーマス・ワトソン(Thomas J. Watson)氏にちなんで名付けられた。IBMの科学者たちは、自然言語で提示された質問に応答するという人間の能力に対抗できるコンピュータを実現すべく、Watsonを開発した。Watsonは先日、アメリカのクイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ!)」で、3人のクイズ王と対戦し、勝利した。しかし、クイズに答えるための手掛かりを得るには、微妙な意味合いや皮肉、なぞかけなど、言語の持つ複雑性を踏まえて分析する必要がある。勝負には勝ったが、Watsonに残る根本的な課題を露呈する結果となった。こうした能力は本来、人間の方がコンピュータよりも優れている。

 Watsonが備える処理能力や自然言語認識、機械学習などは、IBMのWatson研究チームと、CMUをはじめとする学術コミュニティーとが共同で開発した機能だ。CMUで開催されたシンポジウムは、オンラインで視聴できる。

<修正あり>記事初出時にタイトルに誤りがありました。本記事は、すでに修正済みです。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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