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「ミリ波帯の測定限界を押し上げる」、アジレントのハイエンドスペアナが50GHzに対応テスト/計測 ミリ波

アジレント・テクノロジーは、信号解析機能搭載の高性能スペクトラムアナライザー「Agilent PXAシグナル・アナライザ」を拡充し、測定周波の上限が50GHzと高い機種「N9030A-550」と同44GHzの「N9030A-544」を発売した。

» 2011年04月14日 15時39分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

 アジレント・テクノロジーは2011年4月14日、信号解析機能搭載の高性能スペクトラムアナライザー「Agilent PXAシグナル・アナライザ」を拡充し、測定周波数の上限が50GHzと高い機種「N9030A-550」と同44GHzの「N9030A-544」を発売した(図1)。外付けの周波数ダウンコンバータ(ミキサー)として、同社製の導波管ミキサーを使えば最大110GHz、他社製ミキサーを利用すれば325GHz以上の測定にも対応可能である。ミリ波帯を利用するレーダーや監視システム、無線通信システムなどの研究開発に向ける。

 PXAシリーズは、アジレントが2009年に発表した比較的新しい製品群である。ただし既存機種は、測定周波数の上限が26.5GHzにとどまっていた。そのため、30GHzを超えるミリ波帯に対応する高性能スペクトラムアナライザーとして同社はこれまで、2000年に市場投入した比較的古い製品群の「PSAシリーズ」を提供していた。「PSAシリーズは、2000年の発表当初から現在に至るまで、50GHzの上限周波数における測定帯域幅が業界で最も広く、レベル分解能も業界で最も高い。事実上、PSAシリーズの性能がミリ波領域における測定限界になっていた。PXAシリーズの新機種は、PSAシリーズの性能を大幅にしのぐ。これでミリ波帯の測定限界を一気に押し上げる」(アジレント・テクノロジー)。

 PXAシリーズのミリ波帯に対応する新機種で、PSAシリーズから特に大きく改善した性能は、感度と位相雑音特性、帯域幅である。感度については、50GHzにおける表示平均雑音レベル(DANL)を−160dBm/Hzと低く抑えた。「PSAシリーズは−150dBm/Hz前後だった」(同社)ので、10dB程度の改善である。「防衛分野のレーダーでは、ジャマー信号が飛び交う環境で遠方の監視対象を捉える必要があり、感度が特に重要になる」(同社)。

 位相雑音については、50GHzの10kHzオフセットにおいて−110dBc/Hz、1GHzの10kHzオフセットにおいて−128dBc/Hzまで低減した。PSAシリーズではそれぞれ−100dBc/Hz、−116dBc/Hzだったので、10dB以上の改善に相当する。「ドップラー効果を利用して対象物の速度を検出するCW(連続波)レーダーの軍事・防衛応用では、従来の検出対象は最も低速でも自動車くらいまでだったが、今後はほふく前進する人間まで対象が広がる。対象物の速度が低くなるほど、ドップラー効果による周波数の変動は小さくなり、それを検出できるように位相雑音を十分低く抑えることが求められる」(同社)。

 帯域幅については、50GHzの上限周波数まで140MHzを確保した。PSAシリーズでは80MHzだった。「レーダーの空間分解能の向上や、ミリ波利用のポイントツーポイント通信システムの広帯域化が進んでおり、スペクトラムアナライザーも広帯域化の必要性が高まっていた」(同社)。

 2011年4月14日に販売を始め、同年5月に出荷を開始する。価格は、44GHz機が880万円から、50GHz機が970万円から(いずれも税別)。ただし、感度や帯域幅の性能を前述のレベルまで引き上げるには複数のオプションを搭載する必要がある。その際の価格については、「1300万円程度になる。この価格は、帯域幅が80MHzの既存のPSAシリーズに比べて、1割〜2割ほど安価だ」(同社)という。

図1 図1 PXAシグナル・アナライザの50GHz機「N9030A-550」 出典:アジレント・テクノロジー

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