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» 2011年06月09日 11時12分 UPDATE

Analog ABC(アナログ技術基礎講座):第30回 MOSFETのオペアンプを改善〜FET寸法の調整で入出力特性を向上〜 (1/3)

前回は、MOSFETを使ったオペアンプの構成を紹介し、基本的な特性を解説しました。今回は、前回以降、これまでに設計したオペアンプの幾つかの問題点を、1つ1つ解決していきます。まず今回は、アンプをボルテージフォロアとして使うと、グラウンド電圧や電源電圧の付近において、出力電圧が入力電圧に追従できないという課題に取り組みます。

[美齊津摂夫,ディー・クルー・テクノロジーズ]

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 前回(第29回)は、MOSFETを使ったオペアンプの構成を紹介し、基本的な特性を解説しました。

 設計したオペアンプに交流解析と直流解析を施したところ、直流解析の結果(オペアンプの入出力特性)から、ある問題点があることが分かりました。これまでに設計したオペアンプでは、アンプをボルテージフォロアとして使うと、グラウンド(GND)電圧や電源電圧の付近において、出力電圧が入力電圧に追従できないという問題点です(前回の図4を参照してください)。

 前回は紹介しませんでしたが、回路の状態を把握するのには、交流解析と直流解析の他にも、過渡解析がよく使われます。今回紹介するように、過渡解析の結果からは、2つの問題が生じることが分かりました。今回はまず、過渡解析を施したときに、どのような現象が発生したのか確認します。その後、これまでに設計したオペアンプの問題点を、1つ1つ解決していきましょう。

図1 図1 抵抗R2とR3を使って、オペアンプX1が反転増幅器になるように接続した回路 オペアンプX1の特性を把握するために、この反転増幅回路に過渡解析を施します。

 図1は、抵抗R2とR3を使って、オペアンプX1が反転増幅器になるように接続した回路です。利得は3倍(10dB)です。負荷として、10kΩの抵抗R1と、500pFのコンデンサC1が接続されています。

 オペアンプの負荷の静電容量成分は、通常は寄生容量程度なので、値としては数十pFになることが多いと思います。しかし今回は、その成分の影響を分かりやすく観察できるように、意図的に500pFと大きな値に設定しました。

過渡解析から分かる2つの問題点

 さて、図1に示した回路の状態で、入力端子Vinに3Vppのパルス信号を入力した結果が、図2(a)です。電源電圧は5Vにしました。図を見ると、入力波形に対する出力波形の立ち下がりが遅くなり、非対称な波形になってしまっていることが分かります。

 図2(b)は、入力のパルス信号の振幅を1Vppに下げたときの出力波形です。強いリンギングが発生してしまっていることが分かります。これは、大きな静電容量のコンデンサを負荷に接続していることが理由です。

図2
図2 図2 図1に示した反転増幅回路の過渡解析の結果 図上(a)は、入力が3VPPのとき。入力波形と出力波形が一致せず、出力波形の立ち下がりが遅れていることが分かります。図下(b)は、入力が1VPPのとき。 出力波形に強いリンギング(振幅のばたつき)が生まれています。

 前回紹介したボルテージフォロアの直流解析の結果から、GND電圧や電源電圧の付近まで出力が届かず、入力電圧とのずれが生じていることが分かりました。図2に示した反転増幅回路の過渡解析の結果からは、立ち下がりだけが遅くなって波形が非対称になったり、リンギングが発生してしまうという2つの問題が見つかりました。きちんとしたオペアンプに仕上げるには、まだまだ骨が折れそうです。それでは、それぞれの問題の原因を究明して、特性改善を進めましょう。

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