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» 2011年07月11日 08時00分 UPDATE

エネルギー技術 エネルギーハーベスティング:普及間近の環境発電、センサーとの融合で省エネと快適を両立へ (1/4)

太陽光や振動、熱、電磁波―。われわれの周囲には、普段意識されていないものの、さまざまなエネルギー源が存在する。このような微弱なエネルギーを有用な電力源として抽出する「エネルギーハーベスティング(環境発電)技術」に注目が集まっている。欧州や米国を中心に、環境発電技術を使った空調制御や照明制御スイッチの導入が進んでいるが、日本国内ではほとんど使われていないのが現状だ。それはなぜか。環境発電技術に特有の技術的な難しさや、最近の動向をまとめた。

[前川慎光,EE Times Japan]

 節電の暑い夏が続いている―。空調を28℃に設定してある割りには、体感温度はそれ以上だ。どうもおかしいと思い温度計で計ってみると、空調付近では確かに28℃になっているが、座席付近は30℃を軽く超えていた(汗)。

 エレクトロニクス技術の進歩に伴って、われわれはさまざまな恩恵を受けてきた。身の回りを見渡すと、数年前に比べて薄型化/小型化しつつも、さまざまな機能が搭載された多くの電子機器を見つけられるだろう。これ以上便利になった姿を想像するのが難しいほど、電子機器は急速に進化してきた。しかしその一方で、3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、日常生活のさまざまな場面で「どうにかならないものか……」という新たな課題が浮き彫りになっているのも事実である。

 冒頭で紹介した日常のひとこまもその一例だ。東京電力の電力供給能力が低下したのに伴って、各企業は、節電のために空調の設定温度を上げたり、照明を最低限に抑えたりといった対策を進めている。ところが、消費電力量が下がったのと同時に、快適性も落ちている。「暑い上に、暗い」といった具合だ。

 新たな課題という観点では、原発事故の影響を正確に把握したいという要望も強い。可能な限り多くの地点で放射性物質の数値を直接測定することはもちろんのこと、風速や風向き、温度といった気象データを原発付近の数多くの地点で測定すれば、原発事故の影響が周囲にどのように伝わるのかを、予測することができるだろう。

 これだけではない。大規模な地震によって、建築物や道路、橋といった構造物が受けたダメージを知りたいという要望も生まれている。外観には何の変化が無かったとしても、内部では機械的な劣化が進んでいるかもしれない。

 以上に挙げた幾つかの事例に共通しているのは、その時々の状況を正確に把握することの重要性である(図1)。状況を正確に知ることで、機器を最適に制御できるだろうし、何らかの対策を事前に講じることができる。オフィスの空調制御システムを例に挙げるなら、空調付近だけではなく、複数の地点の温度や湿度を考慮してシステム全体を最適制御することで、快適性を維持しつつ、省エネを進められる。

図 図1 環境発電の用途は多彩 センシング技術と無線通信技術、環境発電技術を融合することで、今までは導入が難しかったさまざまなアプリケーションを実現できる。

 状況を把握する上で欠かせないのが、各種のセンシング技術である。しかし、屋内または屋外のさまざまな場所に数多くのセンサーを設置して状況を監視するというアイデアはシンプルだが、実現はそう簡単ではない。センサーに電力を供給し、測定したデータを収集するにはケーブルを接続する必要がある。これでは、屋内または屋外に設置する際の導入コストは膨大になってしまう。設置できるセンサーの数も限られてしまう。

 もちろん、センサーに無線通信機能を搭載し、動力源として一次電池(充電できないタイプの電池)を使うことも可能だ。ただ、電池が寿命を迎えたときにどうするかという課題が残る。設置した数多くのセンサーの電池を1つ1つ交換するとなると、維持コストが莫大(ばくだい)になってしまう。

 無数のセンサーそれぞれにケーブルを接続するのは現実的ではないし、かといって一次電池を動力源にするのも、長期的なメンテナンスの観点で難しい。このような課題を解決する要素技術が、今回焦点を当てる「エネルギーハーベスティング(環境発電)」である。複数のセンサーで測定したデータを無線で収集する「ワイヤレスセンサーネットワーク(WSN)」の今後の広がりに不可欠な技術だ。

 本稿では、今後ますます注目を集めるであろう環境発電技術の現状を解説する。まず、環境発電技術に特有の技術的な課題をまとめる。その後、環境発電技術の導入動向や、日本での採用動向を紹介する。

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