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スマート家電の本格普及を見据え活動、国内企業10社がHEMSアライアンスを発足エネルギー技術 HEMS

HEMSアライアンスでは、実際のHEMSサービスの導入を見据え、複数の企業の機器を1つのHEMS上で動かすための枠組みやガイドラインを策定する。事務局は東京電力。

» 2011年07月12日 16時56分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 HEMSの本格普及を見据え、導入を促すきっかけ作りの場にしたい――。KDDIとシャープ、ダイキン工業、東京電力、東芝、NEC、パナソニック、日立製作所、三菱自動車工業、三菱電機の10社は、HEMSの市場確立と普及を目的にした共同検討体制(HEMSアライアンス)を立ち上げた。

 HEMS(Home Energy Management System)とは、宅内にあるさまざまなエレクトロニクス機器をネットワーク接続し、電力消費量の監視・制御といったさまざまなアプリケーションを実現する宅内の電力管理システムである。省エネの要求を背景に、実用化に向けた機運が高まっている。現在、さまざま企業がHEMS向け機器を独自に開発したり、HEMS向け機器の実証実験を進めたりしているという状況だ。

 同アライアンスでは、実際のHEMSサービスの導入を見据え、複数の企業の機器を1つのHEMS上で動かすための枠組みやガイドラインを策定する。その範囲は、異なる企業の機器間認証をはじめ、安全性やセキュリティを確保するための仕様、リスクマネジメントの観点でのガイドライン、アプリケーションソフトウェアの開発を促したり、開発したアプリケーションを流通させる枠組みなど幅広い。

 現在、HEMSに接続する家電(スマート家電)を相互に接続するための技術標準規格を策定する活動が、さまざまな団体で進められている。同アライアンスでは、機器間を接続する通信プロトコルの技術仕様の策定には取り組まない方針である。「通信プロトコルの技術標準は大事だが、それだけではHEMSの導入は進まない。HEMSアライアンスでは、実際に導入する際に困る部分に焦点を当て、枠組みやガイドラインの策定を進める。3年をメドに何らかの成果を出したい」(東京電力 グループ事業部の部長を務める馬場博幸氏、図1)という。

図 図1 東京電力 グループ事業部の部長を務める馬場博幸氏

HEMSの普及には課題多し

 「未来の家」を考えたとき、宅内のさまざまな家電や機器を把握・制御するHEMSは必要不可欠の技術だ。家庭で使用する電力を太陽電池で生みだし、蓄電池や電気自動車に貯め、さまざまな家電で使うといった一連の流れを考えたとき、これらの各ブロック間をうまく連携させるHEMSコントローラが必要になる。

 前述の通り、HEMSの実現に向けて、各企業が独自の取り組みを進めており、機器間を接続するさまざまな通信プロトコルの準備も整ってきた状況だ。ところが、HEMSを広く普及させるには、まだ多くの課題が残っている(図2)。

図 図2 HEMSの階層構造 今回のアライアンスでは認証や情報セキュリティ、アプリケーションソフトウェアの階層も含めガイドラインや枠組みを策定する。

 HEMSアライアンスは、課題の具体例を4つ挙げた。1つは、異なるメーカーの機器の相互接続が確保されていないこと。現在、さまざまな実証実験が実施されているが、基本的には同一メーカーの製品を使っている。通信プロトコルという観点では、異なる企業の機器を相互接続できるものの、安全性や信頼性の観点で相互の接続は積極的には進んでいない状況だという。

 2つ目の課題は、スマート家電やHEMSを維持・保守する枠組みが明確になっていないこと。スマート家電に不具合が発生したときに、HEMSのアプリケーションソフトウェアの不具合なのか、機器そのものの故障なのか分からない状況が生まれてしまうという例を挙げた。

 3つ目の課題は、HEMS上で動かすアプリケーションソフトウェアの開発を促す枠組みが無いこと。4つ目の課題は、HEMSの利用者とアプリケーションソフトウェアの開発者をつなげる場(マーケットプレース)が無いことである。

 HEMSには、消費電力の見える化や節電を促すアプリケーション、家電の制御といった現在考えられているアプリケーションのみならず、さまざまな用途に活用できる。しかし、そのためには電力会社や機器メーカー、通信事業者だけではなく多様な業種の企業がアプリケーションソフトウェアを開発し、提供できる基盤が必要である。

事務局は東京電力

 HEMSアライアンスは、上に挙げた4つの課題の解決を目標に、ガイドラインや枠組みの策定作業を進める。事務局は東京電力が務める。メンバー企業は10社に限定し、HEMSの実現を目指した認識のすり合わせや、実際の策定作業を進める計画である。既に、HEMSに関するさまざまな団体があるが、そこでの議論内容とHEMSアライアンスの議論内容は、現時点では競合しないという。今後、競合する内容が生まれれば、情報交換を進めていく。

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