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» 2011年07月12日 19時08分 UPDATE

電子部品:プレス加工では不可能な電子部品を実現、オムロンが「電鋳」技術でコネクタを量産

電鋳技術を使えば、電子部品の金属端子部を小型化するとともに、電気的な特性や機械的な特性の改善も進められるという。まず携帯電話機用コネクタに適用した。

[薩川格広,EE Times Japan]

 オムロンは、電気めっきを利用した鋳造法(電鋳(でんちゅう)、電気鋳造)を使って電子部品の接触端子を微細に加工する技術を確立し、その端子を組み込んだ小型コネクタの量産を開始したと発表した。同社によると、コネクタの端子部分はプレス加工によって製作するのが一般的だが、既存のプレス加工技術では機器メーカーがコネクタに求める小型化の要求に応えることが難しくなっていた。電鋳技術を使えば、小型化とともに電気的な特性や機械的な特性の改善も進められるという。このように電鋳技術を電子部品の量産に応用したのは世界初だと主張する。

 同社が2011年7月12日に東京都内で開催した報道機関向け発表会では、同社エレクトロニック&メカニカルコンポーネンツビジネスカンパニー コネクタ事業部 事業部長の田中秀典氏が登壇し、電鋳技術を量産に応用した背景や、同技術の特長、今後の展望について説明した(同社の報道発表資料)。

図1 図1 電鋳技術を導入した背景について説明する田中秀典氏 オムロンのエレクトロニック&メカニカルコンポーネンツビジネスカンパニー コネクタ事業部で事業部長を務める。

 背景については、「携帯電話機が従来のフィーチャーフォンからスマートフォンへと移行し、高機能化と薄型化が同時に進んでいることから、電子部品にもさらなる小型化が求められている」ことが大きな要因だ。ところが既存のプレス加工技術は次のような課題を抱えており、今以上の小型化は困難になりつつあるという。具体的には、素材となる金属板を加工する際に、板厚よりも狭い幅で型抜きしたり、曲げ半径を板厚の2倍以下に小さくしたりすることが難しい、プレスで破断面やカエリ(破断面の小さなまくれ)が生じるといった課題である。

加工精度と自由度が大幅に高まる

 そこで同社が目をつけたのが電鋳技術だ。電鋳とは、電気めっきによって金属の構造物を形成する鋳造技術である。電気が流れる領域と流れない領域からなるマスター(母型)を用意し、それを電解液に浸して電気を流す。するとマスター上の電気が流れる部分に金属が析出して成長し、構造物を形作る。マスターを電解液から引き上げて剥がせば、その構造物を取り出せる。

図2 図2 電鋳による金属構造物の形成の流れ まず、マスターを作製する。次に、めっき法でマスター内に金属を析出させる。続いて、マスターを電解液から引き上げて、剥離するという流れだ。出典:オムロン

 この手法ならば、幅が板厚の1/3程度と細い形状を作れる上、曲げ半径についても、板厚に依存せず40μmと微細な形状の曲げ加工が可能だという。高精度かつ高い自由度で形状を作り出せる。しかも、プレス加工とは異なり、破断面やカエリも発生しない。接触相手を機械的に傷つけにくい接触面を形成することが可能だ。さらに電鋳では、プレス加工とは異なり、めっきプロセスを調整すれば形成する構造物の材料物性を調整できるというメリットもある。電子部品に求められる特性に応じて、材料物性を最適化することができる。「電鋳そのものは、金型の製作などにこれまでも使われていた技術だが、小型部品の量産に使うという発想はこれまでなかった。従来のプレス加工技術による部品製造の概念を、根こそぎ変えるインパクトがある」(田中氏)。

図3 図3 電鋳で形成した金属構造物の例 厚みが250μmで幅が80μmと、プレス加工では不可能なアスペクト比の形状を作ったり、同じ厚みで80μm幅のスリットを設けたりすることも可能だという。出典:オムロン

まずはコネクタから量産品に適用

 オムロンが電鋳技術を利用して量産する電子部品の第1弾は、携帯電話機用のコネクタである。フレキシブル基板(FPC)用コネクタと内蔵バッテリパック用コネクタで、いずれも接触端子の製造に電鋳技術を適用した。両コネクタともに、既に市販の携帯電話機に搭載されているという。

図4 図4 電鋳技術で接触端子を形成したコネクタ 携帯電話機のバッテリパック用コネクタである。出典:オムロン

 FPC用コネクタでは、電鋳技術で実現可能な形状の自由度が高いことを生かし、接触端子のばね性を高める形状を採用した。プレス加工では実現できない形状で、同社従来のプレス加工品に比べて、接触力を30%高められたという。さらに、接触端子の材料物性を最適化することで、接触抵抗を30%低減することにも成功した。「この品種については、接触力の向上に主眼を置いたため、コネクタとしての小型化は重要視していない。もし接触力が従来品と同等でよいという品種ならば、接触端子を小型化してもその接触力を確保できるので、コネクタ全体の小型化も可能だ」(田中氏)。バッテリパック用コネクタについても、同様に接触端子のばね性を高めるように形状を工夫した結果、落下による衝撃を受けた際にバッテリパックの端子からコネクタの端子が離れてしまう瞬断が生じないようにした。

 電鋳技術を適用した場合の量産コストについては、「プレス加工で実現できるような形状を同じように電鋳で作製するのであれば、プレス加工の方が有利だ。しかし当社は、プレス加工では不可能だったり、コストや時間がかかり過ぎてしまったりする形状を実現するために電鋳技術を使う。そして前述の通り、携帯電話機用のコネクタに適用し、実際に携帯電話機メーカーが採用したという実績がある。大量生産の民生機器用途で使えるという証左だ」(同氏)と述べている。

 同社はさらに、小型化と接触信頼性の両立を図ったコネクタを開発中だという。また今後は、電子機器や半導体チップなどの検査治具や検査装置などの接触端子にも、この電鋳技術を適用していく考えだ。

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