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「筐体を震わせて音を伝えます」、KDDIが新聴覚スマートフォンを展示CEATEC 2011

KDDIの新聴覚スマートフォンは、内蔵した圧電素子を使って筐体(きょうたい)全体を震わせる。騒音のある場所でも音声を聞きとりやすく、耳栓やイヤフォン、ヘッドフォンをしていてもその上にスマートフォンを当てることで通話できるという利点がある。

» 2011年10月05日 08時30分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

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 KDDIは、「そっと耳に触れるだけで音を聞ける」をコンセプトにしたスマートフォンを開発し、エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN 2011」(2011年10月4日〜8日に幕張メッセで開催)でデモを披露した。

 一般に、携帯電話機やスマートフォンでは、内蔵スピーカーを使って音を空間に放射し、音を空気の振動として人体の鼓膜に伝える。これに対して新聴覚スマートフォンでは、内蔵した圧電素子を使って筐体(きょうたい)全体を震わせる。筐体の振動で耳内を振動させ、最終的に鼓膜に伝えることで音として認識させる仕組みである。

図 スピーカの空気穴の部分に耳を当てなくても、音を聞ける新聴覚スマートフォン 

 このような仕組みを採ることで、騒音のある場所でも音声を聞きとりやすく、耳栓やイヤフォン、ヘッドフォンをしていてもその上にスマートフォンを当てることで通話できるという利点が得られるという。この他、スピーカー用の空気穴を不要にできることから、デザイン性や防水性を高められるという利点もある。「音声を伝えるという、携帯電話機やスマートフォンの最も基本的な機能の改善を狙った開発だ」(同社)。

 筐体を振動させるため、従来の一般的なスピーカーに比べて音の周波数特性が劣化するのではないか、筐体形状に応じて周波数特性が変化するのではないかという疑問が生まれる。同社のブース担当者は、「圧電素子を使うため低周波領域を出しにくいという点はあるが、基本的には従来のスピーカーと同様の周波数特性が得られる。むしろ、音質は従来よりも高めやすい。確かに、筐体形状に応じて周波数特性は変わるものの、設計の段階で調整できるので問題にはならないだろう」と説明した。

 新聴覚スマートフォンの基本原理そのものは、補聴器に使われる軟骨伝導という技術と同じだという。この軟骨伝導技術を基に、スマートフォンに特化した圧電素子を開発した。

図 新聴覚スマートフォンの特徴と音声伝達の仕組み 

 同社は、新聴覚スマートフォンを2012年度に商品化することを目指している。一般的なスピーカの駆動に使われているD級アンプICではなく、圧電素子用のアンプが必要になるといった回路の変更点はあるものの、すべてのスマートフォンに展開可能な技術だという。

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