インタビュー
» 2011年10月07日 11時51分 UPDATE

Freescale Semiconductor 最高経営責任者 Rich Beyer氏:独自コア統合せず突き進む

さまざまな機器が高度化し、相互につながる「コネクテッド・インテリジェンス」の時代。この新たな時代に求められる組み込みプロセッシングの姿とは――。Freescale Semiconductorの最高経営責任者(CEO)であるRich Beyer氏に聞いた。

[前川慎光,EE Times Japan]

 「組み込みプロセッシングソリューションのグローバルリーダー」を目標に掲げるFreescale Semiconductor。同社の最高経営責任者(CEO)を務めるRich Beyer氏は、「今まさに、x86アーキテクチャを軸にしたPCの時代から、『Internet of Things(モノのインターネット)』に代表されるように、さまざまな機器が高度化し、相互につながる『コネクテッド・インテリジェンス』の時代に移りつつある」と語る。新たな時代に求められる組み込みプロセッシングの姿とは何か、同氏に聞いた。

EE Times Japan(EETJ) コネクテッド・インテリジェンスの時代には、どのような組み込みプロセッシング製品が求められるのでしょうか。事業戦略を教えてください。

Beyer氏 機器設計者の多様な要望に応じて、幾つものプロセッサコアの選択肢を用意できることが当社の強みです。この強みをそのままに、さまざまな市場それぞれに適したプロセッサコアのファミリを拡充していきます。

 これまで、インターネットと切り離されていたいろいろな機器が、接続性を有するようになる――。このようなコネクテッド・インテリジェンスへと移りゆく流れは、特定の機器や市場に限ったことではなく、社会全体で動きが始まっています。

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 コネクテッド・インテリジェンスの時代を象徴する一例として、タブレットPCを挙げましょう。タブレットPCのひとつの姿は、デスクトップPCやノートPCの置き換えを促すデバイスです。ただ、それだけではなく、タブレットPCの姿にはさまざまな変化形があります。電子書籍としての機能に特化したタブレットPCや、医療現場の情報表示、レストランのメニュー表示に特化したタブレットPCといった姿も考えられます。これまでインターネットと無縁だった領域に、機能を特化したタブレットPCが入り込み、新たなアプリケーションが爆発的に増えていくでしょう。

 自動車分野に目を向けると、インターネットに接続することで、自動車の魅力をさらに引き出せるでしょう。例えば、ナビゲーションやアクティブセーフティの機能を強化できます。数年後には、全ての自動車がインターネットに接続するという時代が到来すると予想しています。

 インターネットへの接続性を共通点にしつつも多様な機器の登場は、半導体ベンダーにとって新たな挑戦です。機器の種類それぞれに最適な半導体製品が求められますので、広範な製品群が必要になります。ここに、当社が成功を収める鍵があると考えています。

EETJ もう少し具体的に教えてください。

Beyer氏 当社は、自動車やネットワーク、産業、民生といった広範な製品分野それぞれに適した組み込みプロセッシング製品をとりそろえていますので、新たに生まれた機器にも適した半導体製品を提供できます。

 当社の主力事業である自動車分野に対しては、長年の実績を有する独自コアがありますし、ネットワーク市場に向けては、「Power Architecture」コアがぴったりだと考えていますので、今後も開発元のIBMと協力して開発を進めます。例えば、Power Architectureコアを採用したプロセッサには、フェムトセルから規模の大きな無線基地局まで対応した製品群「QorIQ Qonverge」があります。

 1年ほど前には、ARMの「Cortex-M4」コアを採用した32ビット汎用マイコン「Kinetis」を製品化しました。2011年9月には、Kinetisの新たなファミリである「K10」「K20」を発表するなど、この製品群を拡充しています。独自コアを採用した8ビットマイコン「S8」や、16ビットマイコン「S12」、32ビットマイコン「ColdFire」も用意しており、機器設計者はそれぞれの要望に合った製品群を選ぶことができるでしょう。このように多くのプロセッサコアを有している半導体ベンダーは当社だけです。

EETJ 汎用マイコンの分野では、独自コアの開発をやめてARMコアに移行する動きや、8ビットと16ビットの汎用マイコンのプロセッサコアを統合するという動きがあります。今後も、現在のプロセッサコアのラインアップをそのまま維持するのでしょうか。

Beyer氏 当社の製品群の中心にあるのは、マイコンやアプリケーションプロセッサ、DSPといった組み込みプロセッシング製品ですので、これらを強化するのが、当社の基本的な戦略です。当社は企業規模も大きく、経営的な体力もありますので、それぞれの分野ごとに最適なプロセッサコアを提供し続けることができます。

 さらに、ソリューションとして提供してほしいという顧客の要望が強くありますから、ハードウェアに加えて、リアルタイムOSやさまざまな階層のソフトウェアを提供しています。

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EETJ 最近、プロセッサやマイコンのみならず、高周波(RF)部品や、アナログ、電源、センサーといった周辺製品も強化しています。その理由を教えてください。

Beyer氏 それらの周辺製品は、当社の組み込みプロセッシングソリューションを構成し、競合他社と差異化を図る重要な存在です。自動車とネットワーク、産業、民生という4つの注力市場に対して、プロセッサ/マイコンと周辺部品を組み合わせて提供するプラットフォーム戦略を採っています。

 まず、それぞれの市場において最も適したプロセッサ/マイコンは何かを考え、市場に投入します。その上で、処理性能の向上やコスト削減、開発期間の短縮といった観点で、プロセッサ以外にどのような半導体製品を顧客に提供できるのかを考えます。電子書籍を例を挙げましょう。この製品分野に向けて、アプリケーションプロセッサ「i.MX」を用意しました。それだけではなく、i.MXに最適化した電源管理ICやセンサーを開発しました。重要な点は、i.MXプロセッサと電源管理IC、センサーをそれぞれ個別に開発したのではなく、統合的に開発した点です。

 プロセッサ/マイコンと、RF部品、アナログ、電源、センサーと役割が異なる製品を組み合わせて使うときに、それぞれが調和的に動作するかを評価するのは、非常に手間の掛かる作業です。当社のプラットフォームを採用すれば、それぞれの相性を評価する手間が省け、開発期間の短縮につながります。

EETJ 自動車、産業、ネットワーク、民生のそれぞれに適したプラットフォームを提供するのには、顧客のことを良く知る必要があります。顧客の課題を知るために、どのような取り組みを進めていますか。

Beyer氏 これは当社独自の組織だと思いますが、「システムアーキテクト」の技術者で構成したグループが社内にあります。このグループの技術者は、半導体業界の出身ではありません。例えば、自動車業界の第1階層(ティア1)企業の出身、通信事業者出身といった、それぞれの業界出身のメンバーで構成しています。

 システムアーキテクトのグループと、当社の半導体の設計者、顧客企業のエンジニアが一緒になって課題の解決を進めており、このコンビネーションが非常に威力を発揮しています。顧客が現在直面している課題のみならず、2年後、3年後、4年後に迎えるであろう技術的な課題を明確に理解しています。恐らくほとんどの半導体企業は、このような組織を持っていないのではないでしょうか。もちろん、数名というレベルではいるかもしれませんが、当社は顧客の要求を組み上げるのに十分な規模のシステムアーキテクトが社内にいます。

Rich Beyer(リッチ・ベア)氏

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2008年3月にFreescale Semiconductorの最高経営責任者(CEO)に就任。National Semiconductorの最高執行責任者や、VLSI TechnologyとElantec Semiconductorの社長、IntersilのCEOを経て、現職に至る。現在、Credence SystemsおよびXceiveの取締役でもあり、Semiconductor Industry Association(米国半導体工業会)のボードメンバーも務めている。米国海兵隊にて3年間将校を務めた経歴も有する。米ジョージタウン大学でロシア語の学士・修士号を取得、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)を取得した。

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