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FUPETがパワー密度40kW/lのSiCインバータを披露、今後の課題はノイズ低減CEATEC 2011

次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構(FUPET)が、40kW/lのパワー密度を持つオールSiCインバータを開発した。今後はスイッチングノイズを低減するなどして実用化に近づける方針だ。

» 2011年10月12日 16時10分 公開
[朴尚洙,EE Times Japan]

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 次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構(FUPET)は、「CEATEC JAPAN 2011」(2011年10月4〜8日、幕張メッセ)において、全てのパワーデバイスにSiC(シリコンカーバイド)デバイスを用いたオールSiCインバータの最新の開発成果を披露した。

 展示したオールSiCインバータは、出力電圧が400V、出力容量が10kW。容積は250cm3であることから、パワー密度は約40kW/l(リットル)を達成している(図1)。これに対して、2011年9月にFUPETが発表したオールSiCインバータのパワー密度は約30kW/lだった(関連記事)。

図1 パワー密度40kW/lのオールSiCインバータ 図1 パワー密度40kW/lのオールSiCインバータ

 パワー密度を向上できた理由は大まかに分けて2つある。1つは、オールSiCインバータを構成する3個のパワーモジュールの設計を変更したことだ。これにより、パワーモジュールの小型化と低インダクタンス化を実現することができた。小型化については、ヒートシンクを含めたモジュールの容積を約1/4にまで低減することに成功している(図2)。また、インダクタンスは、従来比72%減の5nHとなった。

図2 パワーモジュールのサイズ比較 図2 パワーモジュールのサイズ比較 左側にあるのがパワー密度40kW/lのもので、右側にあるのがパワー密度30kW/lのもの。

 もう1つは、オールSiCインバータの冷却構造を変更したことである。従来は、冷却ファンの直後にパワーモジュールを配置し、その後に大容量の積層セラミックコンデンサを持って来るという構造になっていた。これを、冷却ファンの直後に大容量の積層セラミックコンデンサを配置してから、その後にパワーモジュールを置くという構造に変更した。これにより、冷却ファンの数を4個から2個に減らすことができた。

 FUPETは、オールSiCインバータの開発目標として40kW/lのパワー密度の達成を掲げている。「パワー密度については目標を達成できるめどがついた。ただし、このオールSiCインバータについては、スイッチングノイズの低減という課題が残っている。そのためには、大容量積層セラミックコンデンサとパワーモジュールの間にノイズフィルタ回路を組み込む必要がある。ノイズなどの課題をクリアして実用化段階に近づけたオールSiCインバータについては、30kW/lというパワー密度を目標にしている」(FUPET)という。

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