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写真で振り返るCEATEC、ワイヤレス給電技術の“今”をここに集約CEATEC 2011 フォトギャラリー(3/5 ページ)

» 2011年10月14日 15時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

存在感が高まる、電界結合方式

 次に紹介するのは、向かい合った2つの電極の電界結合によって電力を送る「電界結合方式」。特徴は、消費電力が異なる複数の機器の共存や、ワイヤレス給電台の大面積化が容易であること、デザイン性に優れていることなど。2010年7月に、村田製作所がこの方式を採用したワイヤレス給電システムの事業化を目指していることを明かにした。

 2011年9月には、日立マクセルが2011年11月25日発売予定のiPad2向けワイヤレス給電セットにこの方式を採用することを表明するなど、「ここ1年で実用段階にまで技術開発が進んだ」(村田製作所)という。

「ぽんと置いてiPad2を手軽に充電」、村田製作所がワイヤレス給電モジュールを製品化

iPad向けを目下開発中、村田が電界結合方式のワイヤレス給電を事業化(前編)

iPad向けを目下開発中、村田が電界結合方式のワイヤレス給電を事業化(後編)

 現在村田製作所が製品化しているのは、出力電力が最大13Wの送電側モジュールおよび、受電側モジュール。同社の開発者は、「このモジュールを開発するに当たって、電磁界の漏えいを抑えたり、電界を電極間に閉じこめたりといったノウハウを蓄積した。各種の防護指針や安全性を守りつつ、出力電力を50W程度まで高められる感触を持っている」と高出力化にも自信をみせる。

 電界結合方式の普及に向けては、この方式を採用して技術開発や製品開発を進める企業が少ないという課題もある。CEATEC JAPAN 2011でも、製品段階の試作品を展示したのは村田製作所のみだった。「協力企業を募り、仲間作りを進めていきたい。現在、異なる企業間のワイヤレス給電機器の相互接続を意識した技術開発を検討している」(同社)という。それでは、CEATEC JAPAN 2011でどのような展示があったのか紹介しよう。

村田製作所、システム拡張が容易でデザイン性が優れることをアピール

図 村田製作所が日本写真印刷と共同で試作した、スマートフォン向け筐体(きょうたい) 昨年は、電界結合方式の原理紹介というコンセプト展示にとどまっており、デモも原理を実証する簡単なものだけだった。これに対してCEATEC JAPAN 2011では、3つの進歩があったという。1つ目は、送電側/受電側モジュールの小型化、2つ目は日立マクセルの最終製品に採用されたという実用化、3つ目は、すぐにでも商品化できる試作品を多数用意していること。「システム拡張が容易で、デザイン性が優れているという電界結合方式の2つの特徴を絡め合わせて強く普及を促していきたい」(同社)。ここでいうシステム拡張が容易とは、送電側を大面積化しやすいことと、消費電力が異なる機器を1つの送電台で対応させやすいことを指す。
左の写真は、現在開発中のモバイル機器向けワイヤレス給電シートと、20W出力のノートPC向けワイヤレス給電台。右の写真は、モバイル機器向けのワイヤレス給電シートを拡大したもの。このシートの特筆すべき点は、消費電力が異なる複数のモバイル機器に対応すること。送電電極が升目状に配置してあり、モバイル機器が置かれた位置を検出して、その位置の電極にのみ電力を供給する。さらに、例えば3W、5W、10Wと消費電力が異なる機器を1つの給電シート上に共存させる仕組みを今後盛り込む(クリックすると拡大します)。

左の写真は、電子書籍を充電しているワイヤレス給電台。2系統の出力があり、出力電力はそれぞれ5W。2系統の送電側電極はそれぞれ複数の電極で構成しており、電子書籍が置かれた付近の電極にのみ電力を供給する。このような仕組みを採ることで、大面積化したときにも、送電効率の低下を防げる。右の写真は、携帯型オーディオプレーヤやスマートフォンを充電している様子(クリックすると拡大します)。

左の写真は、開発中の5W受電モジュールと10W受電モジュール、スマートフォンにワイヤレス給電システムを実装するための筐体(きょうたい)。右の写真は、村田製作所のブースの様子。昨年に比べて、展示スペースが大きくなっており、ワイヤレス給電の試作品の展示数が大幅に増えていた(クリックすると拡大します)。

ローム、自社開発のSiCトレンチMOSFETをワイヤレス給電システムに適用

図 ロームが開発した電界結合方式のワイヤレス給電システム 写真は、壁に張り付ける有機EL照明。壁に送電モジュールが、有機EL照明に受電モジュールが組み込まれており、有機EL照明を張り付けることで、任意の場所に照明を配置することができる。電界結合方式では、電源部のスイッチング周波数を高く設定するほど、送電/受電結合部のキャパシタンスの抵抗(損失)成分を減らせる。しかし一方で、スイッチング周波数が高くなると電源部のスイッチング回路の損失が高くなるというトレードオフの関係がある。そこでロームは、送電側インバータのスイッチング素子に、Si材料のスーパージャンクションMOSFETではなく、自社開発のSiCトレンチMOSFETを採用することで、この問題の解決を狙った。ロームのSiCトレンチMOSFETは、スイッチング周波数が6.78MHzのとき、変換効率が最大95%と高い。
左の写真は、1つの送電台から複数のデバイスに電力を非接触で供給しているデモ。送電側の出力電力は100W、スイッチング周波数は6.78MHz。右の写真は、SiCトレンチMOSFETを採用した高周波・高効率インバータの基板(クリックすると拡大します)。

ロームが展示していたパネル。左の写真が、SiCトレンチMOSFETを採用した高周波・高効率インバータをワイヤレス給電に応用した利用イメージを紹介したパネル。右の写真は、SiCトレンチMOSFETを採用したインバータの紹介。回路構成や変換効率、想定する利用シーンが掲載されている(クリックすると拡大します)。

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