インタビュー
» 2011年10月25日 08時00分 UPDATE

ルネサス エレクトロニクス マーケティング本部長 大賀昌二氏:顧客を増やせば市場が見える (1/2)

現在、ルネサス エレクトロニクスは、マイコン事業とアナログ&パワー事業に注力する姿勢を鮮明にしている。これら両事業の成長に重要な役割を果たすことを期待されているのが、2011年4月に設立されたマーケティング本部だ。同本部は、2012年3月末までの1年間で1万社の新規顧客を獲得する事業目標を掲げている。

[朴尚洙,EE Times Japan]

 東日本大震災の影響や欧州金融危機による円高など厳しい事業環境の中で、安定した成長が可能な体制構築を図っているルネサス エレクトロニクス。今後は、SoC(System on Chip)事業の選択と集中を進めながら、世界トップシェアのマイコン事業と、アナログICや電源ICで構成されるアナログ&パワー事業の売上高を伸ばして行く方針だ。これらマイコンとアナログ&パワー製品の拡販を進めるため、2011年4月に設立されたのがマーケティング本部である。本部長を務める大賀昌二氏に、同本部の役割や顧客を増やすための戦略などについて聞いた。

EE Times Japan(EETJ) マーケティング本部の役割について教えてください。

大賀氏 ルネサスに統合する以前、日立製作所や三菱電機、NECの半導体事業部門だった時には独立したマーケティング部がありました。その後、ルネサスとして事業を統合する中で、独立したマーケティング部を設置せずに、各事業本部や営業本部などそれぞれの部署にマーケティング機能を組み込むことになりました。今回設立したマーケティング本部には、これらの分散していたマーケティング機能を1カ所に集約しました。

 従来のように、各事業本部にマーケティング機能が分散していると、マイコンを扱うMCU事業本部ならマイコン、アナログ&パワー事業本部ならアナログICや電源ICといったように、各事業本部が扱っている製品を売るためのマーケティングしか行えなくなります。しかし、当社のマイコンを購入した顧客が、製品開発の際にアナログICや電源ICを用いないということはありえません。その開発中の製品に、マイコン以外の当社のICを適用できる可能性は非常に高いはずです。さらに、マイコンとアナログ&パワー製品の組み合わせによっては、製品のそれぞれの価値以上により高い付加価値を提案することも可能になります。マーケティング本部は、こういった製品の組み合わせによる付加価値の向上とともに、顧客数の増加を目的に設立されました。

ルネサスの大賀昌二氏

EETJ 現在の半導体市場をどのように捉えていますか。

大賀氏 少し前まで、半導体ビジネスで重視されていたのは、“How to make(どのように作るか)”でした。顧客が求める製品を実現するのに必要な半導体技術が大幅に不足していたため、技術開発を進めることにより製品化を果たせればモノが売れたのです。しかし、半導体技術が進展した現在では、顧客が求めるほとんどの製品を実現することが可能になりました。このような状況下で、半導体ビジネスでは“What to make(何を作るか)”がより重要になってきます。

 What to makeに対応するためにマーケティング本部が行う取り組みは2つあります。まず最初に行うのは、ルネサスの持っている製品や技術の価値を高めることです。個々の製品と技術のみならず、先に述べた製品の組み合わせによる付加価値の向上も、この取り組みを行う上で重要な役割を果たすことになります。次に、市場が何を求めているかを探っていきます。ただし、市場の要求を理解するためには、より多くの顧客と接点を持つ必要があります。当社の場合、世界全体で見れば、市場の要求を理解するのに十分な顧客数があるとは言えません。視野を広げるためにも、もっと顧客数を増やす必要があるのです。

EETJ 顧客数を増やすためにどのような施策を進めていますか。

大賀氏 まず、既存の顧客と直接対面して行う営業/マーケティング活動では、やはりマイコンとアナログ&パワー製品を組み合わせて提案する手法が有力になるでしょう。これにより、マイコンの顧客がアナログ&パワー製品の顧客に、アナログ&パワー製品の顧客がマイコンの顧客になる可能性が高まります。

 次に、新規顧客の掘り起こしで重要になるのがWebサイトを使ったマーケティングです。新規顧客が当社のWebサイトにアクセスしたとき、その顧客が開発中の製品などに利用できるICについて、「Find(見つける)、Try(試す)、Buy(購入する)」をWebサイト内で完結して行えるようにしておかなければなりません。既にマイコンについては、自社のWebサイト上で、Find、Try、Buyを完結できるサービスを提供できています。これと同じことをアナログ&パワー製品でも行えるような取り組みを進めています。このほど、アナログ&パワー製品のTryに当たるシミュレータについて、パワーMOSFETの動作特性をWebブラウザ上で解析できる無償ツール「Renesas VP」の提供を開始したところです。

EETJ Webサイト関連の展開における今後の課題は何ですか。

大賀氏 顧客が開発しようとしているアプリケーションを検索入力すれば、それに最適な当社の製品を検索結果として出力するようなサービスの実現です。現在は、PC、民生用機器、ヘルスケア、自動車、産業用機器、モバイルなどのアプリケーション別に、最適なマイコンとアナログ&パワー製品を紹介するWebページを設置しています。とはいえ、顧客にとって便利なのは、アプリケーションから最適なICを検索できるサービスでしょう。顧客が新規に開発を行うときには、当社のマイコンやアナログ&パワー製品ありきで開発することはありません。あくまで、顧客が求めているのは、開発対象に最適なICや部品なのです。そういった要求を満たせる、顧客にとってより使いやすいサービスが必要になると考えています。

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