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» 2011年10月28日 18時04分 UPDATE

電源設計 LEDドライバ:LEDばらつきへの配慮はもう不要、薄型テレビ向け電源設計の新技術 (1/2)

austriamicrosystemsが開発したLEDバックライト向け電源技術を使えば、LEDを選別する手間を軽減でき、電源基板の面積も大幅に削減できるという。

[前川慎光,EE Times Japan]

 高性能アナログICを手掛けるaustriamicrosystems(オーストリアマイクロシステムズ)は、LED素子の個体ことのVf(立ち上がり電圧)のばらつきに起因したさまざまな問題を解決できると主張する、薄型テレビのLEDバックライト向け電源技術を開発した。

 「薄型テレビのLEDバックライトを駆動する電源部の基板面積を大幅に削減し、LEDを実装する際の調整作業も減らせる、利点の多い新技術だ」(同社のPanel Lighting部門のDirectorであるHerbert Truppe氏)と説明する。2013年に製品化するLEDドライバICに採用する予定である。

バックライト電源の発熱対策が容易に

 一般に、薄型テレビのバックライトにLEDを使う場合、LEDを直列に複数接続したストリングを、さらに幾つか並列に接続してバックライト光源として使う。austriamicrosystemsが開発した新技術は、ストリングそれぞれに最適な電圧を印加する技術である。

図 austriamicrosystemsが開発したLEDバックライト向け新技術 LEDバックライトにおいて並列に複数接続したストリングそれぞれに対して、最適な電圧を印加できる。写真の左が現在のLEDドライバIC。電圧降下値が異なるストリングに同じ電圧を印加しているため、差分電圧が損失(熱)になる。写真の温度表示を見ると、ストリングに挿入したスイッチ用高耐圧MOSFETの温度が、異なることが分かる。写真の右は新技術を採用した場合。ストリングの電圧降下値が異なるものの、それぞれに対して最適な電圧を印加できるため、MOSFETの温度は全てほぼ同じになっている。

 例えば、A系統、B系統、C系統という3つのストリングがあるとしよう。ストリングの電圧降下は、それぞれを構成するLED素子群のVfのばらつきによって変わる。ここでは、それぞれ40V、35V、37Vだと仮定する。LEDの輝度を一定にするために、電圧降下値が最も大きな40Vに合わせて、40Vの電圧を各系統に印加するのが一般的である。このとき、A系統、B系統、C系統は並列に接続されているので、何の工夫も施さなければ、同じ電圧が印加される。これに対して、austriamicrosystemsの新技術を使えば、並列に接続したストリングに、A系統には40V、B系統には35V、C系統には37Vの電圧を印加できるという。

図 austriamicrosystemsのPanel Lighting部門のDirectorであるHerbert Truppe氏 2011年10月26〜28日の会期でパシフィコ横浜で開催されたフラットパネルディスプレイの総合技術展示会「FPD International 2011」で、新技術を公開した。一般公開するのは今回が初だという。

 この電源技術によって得られる利点は2つある。1つは、前述の通り、LEDメーカーから調達したLEDを実装するときの選別作業の手間を減らせる点である。LEDメーカーは、LEDの輝度や色調、Vfを検査した後に出荷しているが、LEDのロットごとにこれらの特性にはばらつきがある。そこで、機器メーカーでは、バックライト光源を均一にするために、なるべく特性の似たLEDを選別し、組み合わせて使っている。新技術を使えば、輝度や色調のばらつきへの配慮は必要だが、「Vfのばらつきは全く気にしなくてもよくなる」(Truppe氏)という。

 もう1つの利点は、バックライトを駆動する電源基板の熱対策が容易になることである。前述の通り、LEDのVfのばらつきによって、ストリングの電圧降下はそれぞれ異なる。これまでは、例えば電圧降下が35Vのストリングに対して40Vの電圧を印加しており、この場合は5V(40−35V)という差分電圧が損失になっていたという。具体的には、差分電圧がスイッチ用MOSFETに印加され、「差分電圧×ストリングに流れる電流」の効果で熱が発生していた。「従来、基板上で放熱のために確保していた領域を削減できる。この結果、基板面積を大幅に削減可能だ」(同氏)という。

 開発した電源技術の詳細は明らかにしていないが、それぞれのストリングの電圧降下をモニタリングし、印加する電圧を時分割で制御する技術だという。それぞれのストリングへの通電をオン/オフするスイッチと、ストリングに印加する電圧を生成するDC-DCコンバータの動作を同期させ、A系統に通電するときにはB系統とC系統への通電をオフにするという仕組みを採る。時分割の通電を高速に切り替えることで、人間の目には違和感なくLEDの光を見せることができるという。

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