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» 2011年11月04日 18時35分 UPDATE

実装技術:「ジョブズの思想を電気CADへ」、図研が設計プラットフォームを刷新

プリント基板設計ツールを中核とする電子機器設計用CADプラットフォームを17年ぶりに刷新した。ソフトウェアアーキテクチャを一新することで処理速度を大幅に高めた他、CADツールとしての操作性を追及し、マウスとは異なる入力デバイスも新たに提案する。

[薩川格広,EE Times Japan]

 電子機器設計用CADツールの大手ベンダーである図研は、新型プリント基板設計ツール「Design Force」を発売するとともに、このツールを中核に据える次世代CADプラットフォーム「CR-8000シリーズ」を発表した。「今の電子機器設計用CADは、当社の製品も競合他社の製品も、15〜20年前に開発されたものだ。もちろん改良や機能追加は続けてきたが、基本設計が古く、当時に比べて飛躍的に進化した最新のコンピュータやITの恩恵を享受できなくなっているのが実情だ。果たして今、電子機器設計用CADはどんな進化をすべきなのか。原点に立ち戻って考え、開発した、新たなプラットフォームである」(取締役技術本部長の仮屋和浩氏)。

 Design Forceの概要自体は、2010年に既に公表していたが、その時点では開発コード「Triforce」で呼んでおり、CR-8000の名称も定まっていなかった。

図1 10月21日に横浜で開催したプライベートイベント「Zuken Innovation 2011」において、取締役技術本部長の仮屋和浩氏が発表した。

設計効率を高める応答性と操作性を実現

 今回発売したDesign Forceの大きな特徴の1つは、ユーザーがプリント基板の設計を直感的な操作でスムーズに進められるようにしたことだ。マルチスレッディングに対応したマルチコアプロセッサの性能を引き出せるように、ソフトウェアアーキテクチャを刷新したという。

 「1995年と2011年のコンピュータを比較すると、プロセッサコアは4倍、クロック周波数は50倍、DRAMの容量は250倍、ビデオRAMの容量は1000倍に増えている。OSも16ビットから64ビットに進化した。それにもかかわらず、プリント基板用CADはそれほど速くなっていない。ソフトウェアのアーキテクチャが古かったからだ」(仮屋氏)。

 Design Forceでは、同社既存CADの「Board Designer」に比べて、データベースからオブジェクトを選択して表示する際の速度が18倍、2次元グラフィックスの描画速度が6倍、グラウンド面補正(面生成)の速度が6倍と、大幅に向上している。

マウスが最善の入力デバイスなのか?

 さらに、操作性を高めて設計時間を短縮するための提案として、新たにタッチパッドも採用した。「いま私たちはキーボードとマウスを使ってCADを操作している。マウスは操作対象を相対座標系で動かす入力デバイスだ。コロコロと転がさなければ、所望の位置に到達できない。プリント基板の設計では、マウスを動かす距離が非常に長くなってしまう。これで設計効率が上がるのか。もっといい入力手段があるのではないかと考えた」(仮屋氏)という。

 タッチパッドに着目した理由については、Appleの「iPhone」や「iPad」を引き合いに出した。「相対座標系で動くマウスは、先日亡くなったSteve Jobsが持ち込んだものだ。しかし彼は、マウスに対しては非常に不満を持っていたはず。マウスが使いやすいとSteve Jobsが思うはずがない。自分が持ち込んだマウスという入力デバイスの限界を感じていただろう。だからこそ彼はiPhoneやiPadを出した。これらに搭載された入力デバイスが、偶然に生まれたはずはない。タッチパッドならば、絶対座標系で何かを指し示すこともできるし、相対座標系で何かを動かすこともできる。両方がうまくミックスされた“感性座標系”だ」(同氏)。

 図研は今回、タブレット大手のワコムと協力し、マウスと独立してCADを操作できるタッチパッドを用意した。これでユーザーは、右手はマウスでオブジェクトの操作に集中し、左手はタッチパッドでビューやメニューを操作するといった使い方が可能だという。「慣れるには少々時間がかかるが、いったん慣れてしまえばこの方が絶対に速い」(同氏)。例えば、DDRバス配線にスキューを設定する場合、同社既存CADではマウスの総クリック数が104回、移動距離が9.4m、操作の所要時間が188秒だったが、Design Forceでタッチパッドを利用すれば、それぞれ20回、2m、31秒で済むとしている。

図2図3 左図はDesign Forceにおける処理速度の向上、右図は新しいユーザーインタフェースである。(クリックで拡大)

 Design Forceではこの他、既存CADでは対応が難しかった、部品内蔵基板やシリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)、SiP(System in Package)などの高度な実装技術にも新たに対応しており、「大規模基板設計や複雑な構造の高密度基板設計において、設計者の作業効率を飛躍的に向上させる」(図研)という。

 Design Forceを新規に購入する場合の定価は、基本構成(Professionalバージョン)で980万円に設定した。3Dビューアなど、既存製品ではオプションだった数多くの機能を標準で組み込んでいる上、既存製品が備えていなかったシグナルインテグリティ/パワーインテグリティ/EMIの解析機能も内蔵する。

 なお、Design Forceの他に、次世代CADプラットフォームのCR-8000シリーズを構成する要素は、構想設計ツール「System Planner」や回路設計ツール「Design Gateway」、製造設計支援ツール「DFM Center」などで、いずれも既に販売を始めている。図研によると、このプラットフォームにより、「上流から下流工程まで、システム視点での設計やレビューが可能な革新的な電子機器設計フローが実現される」という。

図4 次世代プラットフォーム「CR-8000」と既存の「CR-5000」について、それぞれの構成要素と対応する設計工程を示した。

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