連載
» 2011年12月09日 08時00分 UPDATE

エンジニアのための市場調査入門(1):リサーチ専門会社の業務を知ろう (1/3)

市場調査というと、企業の中のごく一部の部署だけに関係することだと考える方も多いかもしれません。しかし、市場調査の考え方や基本的な手法は、エンジニアの皆さんの日々の業務に直結する有益な情報になります。そこで、矢野経済研究所の田村一雄氏に、エンジニアのための市場調査の入門講座を連載していただくことにしました。

[田村一雄 ,矢野経済研究所]

「エンジニアのための市場調査入門」連載一覧

新しい研究開発テーマを早急に見つけ出す必要がある――。

上司に業界全体の動向を資料としてまとめるように言われた――。

自社製品の売り上げがなかなか上がらないので、改善策を打ち出したい――。

 もしあなたがこのような状況に置かれたとき、どのような情報を基に行動するのでしょうか? これまでの経験というのも確かに有効ですが、それだけでは最善な方法とは言えないかもしれません。上に挙げたような状況で最適な判断を下す支えとなるのが、市場調査の結果です。市場調査というと、企業の中のごく一部の部署だけに関係することだと考える方も多いかもしれません。しかし、市場調査の考え方や基本的な手法は、エンジニアの皆さんの日々の業務に直結する有益な情報になります。

 そこで矢野経済研究所の田村一雄氏に、エンジニアのための市場調査の入門講座を連載していただくことにしました。同氏は、化学、材料や電気、光学といったエンジニアリング分野の市場調査に長年携わってきました(詳しいプロフィールは、本連載の最後のページをご覧ください)。「エンジニアのための」という視点に立って執筆してもらう予定です。

 まず数回に分けて、リサーチ(市場調査)を専業にしている同社の事業内容や考え方を通して、企業が市場調査をする目的や、市場調査とマーケティングの違い、材料/エレクトロニクス分野における市場調査の基本などを解説します。その後、市場調査の各工程である「ヒアリング」、「分析、予測」、「調査後」に分けて、手法などを紹介していく予定です。(EE Times Japan編集部)

リサーチ会社の事業とは?

 当社(矢野経済研究所)は、リサーチ(市場調査)を専門とする会社である。ひと言でリサーチ会社といっても事業はさまざまだ。リサーチ会社が独自に企画し、調査する従来型の「自社企画リポート(MR:Market Report)」や、民間企業や官公庁などから個別に依頼を受けて実施するカスタム調査(依頼調査)、マルチクライアント調査、会員制ライブラリー(データバンク)といった事業に加えて、近年は国内外の大小企業を顧客にした事業買収(M&A)や技術・資本提携のお手伝い、コンサルティングといった「ソリューション的」な色彩の事業も強めてきている。ソリューション事業は、特に海外企業からの引き合いが強い。

 「リサーチ」としての媒体は、前述の自社企画リポート(MR)制作と、シングルクライアントによる依頼調査に大別される。企業における市場調査の目的は、その結果をベースにさまざまな事業戦略を策定する基礎データとすることだが、リサーチに対しての考え方や予算によって、「MRを購入することで十分」と考えるか、「シングルクライアント調査を委託するか」など、選択肢は変わってくる。リサーチ業界も多くの企業が事業を展開しているので、当社も常に競合他社と比べられることになる。

図 「リサーチ」としての媒体は、自社企画リポート(MR)制作と、シングルクライアントによる依頼調査に大別できる 図は、リサーチ会社が独自に企画して調査する自社企画リポートの表紙の例。

 依頼調査を委託するほど予算がなく、ピンポイントの情報よりは幅広い情報を収集したい場合には、主にMRの購入が選択される。MRの設計にも依存するが、MRだから浅く幅広い情報を掲載しているというわけでは必ずしもない。かなり深いところまで掘り下げて記述しているケースも多い。筆者が所属する当社CMEO事業部では、深く掘り下げて記述することを意識してMRを作成している。

 一方で依頼調査には、以下のような目的があることが多い。

(1)新製品を開発したので、どういうところにどのようなチャネルでいくらくらいで売ればよいか調べたい

(2)新商品を開発したいが何を開発するべきか、市場のニーズはどうなっているのか調べたい

(3)既存商品の売り上げアップ(市場シェアアップ)を図りたいが、何を改善すべきなのか(価格設定、販売チャネル、商品そのもの……)調べたい。また、そのための市場ニーズを探りたい

(4)同業他社の動向を探りたい

(5)市場撤退のために上層部(あるいは提携先)を納得させるためのデータをそろえてほしい

目的が1つだけの場合だけではなく、幾つかの複合形を含めてさまざまなケースがある。昨今は、これらが複雑・高度・ニッチ化している傾向にある。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2014 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

All material on this site Copyright © 2005 - 2014 ITmedia Inc. All rights reserved.
This site contains articles under license from UBM Electronics, a division of United Business Media LLC.