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なぜ今、LED照明/不動産業界に無線通信技術が求められているのか?無線通信技術 ZigBee(2/2 ページ)

» 2012年01月24日 18時19分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]
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「Zero Energy Building」の実用へ強力な切り札

 次に、戸田建設は今回のLED照明の無線制御システムを、「Zero Energy Building」を実現する強力なツールと位置付ける。Zero Energy Buildingとは、再生可能エネルギーを最大限活用しつつ、オフィスビルに適した省エネルギー技術を駆使することで、建物で消費するエネルギーを実質的にゼロにするというコンセプトのこと。同社は、2020年までにZero Energy Buildingを実用化すると宣言している。

 同社は、Zero Energy Buildingを実現するためにエレクトロニクスのさまざまな要素技術に注目していた。2011年12月には、エネルギーハーベスティング(環境発電)技術を使った照明スイッチの実証実験を、村田製作所と協業し進めることを発表していた(関連記事環境発電の導入促す風穴となるか、大手建設会社が積極採用を表明)。今回のLED照明の無線制御システムの実証実験は、村田製作所との協業案件の第2弾になる。

 LED照明の無線制御がこれまで使われてこなかった理由について戸田建設の担当者は、「機器メーカーで照明を手掛ける事業部門や照明メーカーにいろいろとヒアリングしたが、全体として様子見の雰囲気だった」と説明した。

写真は、今回実証を進めるLED照明の無線制御システムの概要図。Wi-FiとZigBeeのブリッジ機器を使って、LED照明を一括してオン/オフしたり、調光したりできる。

 最後に、村田製作所である。同社は、自社の無線モジュールや各種センサーの新市場を模索していた。戸田建設や山田照明と協業することで、まだ日本ではまだ立ち上がっていない環境発電システムやLED照明の無線制御システムの市場にいち早く、自社製品を売り込める。

 今回のタスク&アンビエント照明システムに向けて、ZigBee通信に対応した無線通信モジュールと、LED照明用電源モジュールを新たに開発した。同社として、ZigBee対応モジュールの製品化は初めて。Texas InstrumentsのZigBee対応無線チップ「CC2530」や2.4GHz帯のRFフロントエンドIC「CC2591」とともに、チップアンテナや帯域通過フィルタ(BPF)を、18.5×12.0mmのプリント基板に実装した。このモジュールは、汎用品としてサンプル出荷を開始しており、2012年春に量産を開始する予定である。

 一方のLED照明用電源モジュールは、待機電力が0.5Wと以下と小さいことが特徴。前述のZigBee対応モジュールと組み合わせて使うことを想定している。2012年4月にサンプル出荷を開始し、2012年夏に量産を始める予定である。

 LED照明の制御に適した低消費電力の無線通信方式には、ZigBeeの他にも、「IEEE 802.15.4」をベースにした方式や、従来よりも消費電力を減らすことを追求した低消費電力Wi-Fiなどがある。村田製作所はZigBeeを採用した理由を、「メッシュ型など多様なネットワーク構成(トポロジー)が用意されており、タスク&アンビエント照明システムに適している」ことを挙げた。

 現在は、「Home Automation Profile」をカスタマイズしたZigBeeプロファイルを利用している。なお2012年1月には、ZigBee AllianceがLED照明の制御を対象にした新プロファイル「ZigBee Light Link」を策定していることを発表していた(関連記事LED照明もスマホ/タブレットで制御、ZigBee Allianceが新プロファイルを開発中)。これについては村田製作所は、ZigBee Light Link規格が策定されてから採用について検討したいと説明した。

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