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世界最大の家電展示会「CES」の表と裏 〜世界はスイートルームで動いているんだぜ〜EETweets 岡村淳一のハイテクベンチャー七転八起 ―番外編―(2/2 ページ)

» 2012年02月08日 10時00分 公開
[岡村淳一,Trigence Semiconductor]
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 CESへ出張するもう1つの利点は、世界中の企業の幹部とコンタクトしやすいということがあります。普段ですと、忙しい幹部に技術紹介のアポイントを取るのは至難の業です。ところが、CESの期間中は他の業務に邪魔されないので、直接アピールする機会を得やすいのです。

 実際に今回のCESでも、某大手電機メーカーの技術トップの方から、日本での技術紹介のアポイントを約束して頂いたり、某オーディオメーカーの幹部の方とコーヒーを飲みながらDnoteの商品化について談話できたり、出会う努力をすれば、その費用対効果は計り知れません。

 以上のように、CESは単なる新商品の展示会ではありません。日本にいると新商品の発表や大手機器メーカーの動向にだけ注目が集まりがちです。しかし、CESは華やかな展示の陰で、世界中の中小企業が米国市場に進出するためのパートナーを探し求める、実ビジネスの場でもあるのです。アジアの中小企業はCESをきっかけにして、米国のディストリビュター(代理店)と契約することを目的に大挙して小さなブースを開いています(図5)。

図 図5 アジアのさまざまな中小企業がビジネスパートナーを探してブースを出す

 そして、当社のようにトンデモ新技術を売り込む戦いが、ダウンタウンの高級ホテルのスイートルームでも展開されているのです。新技術を持つベンチャー企業に投資することを目的に、投資会社もまたダウンタウンで網を仕掛けています。技術を取り巻く生態系が効率的に成果を求める場、それがCESなんですよね〜

 どうでしょう、CESの別の顔が想像できるようになりましたでしょうか? ビジネスは言うまでもなく戦いの場です。小生が一番記憶に残っているのは、展示会場の中庭にあるテイクアウト専用の昼食広場。ピザやハンバーガーといったアメリカンフードをほお張りながら、アメリカ人のディストリビューターと中国メーカーの社長さんが喧々諤々(けんけんがくがく)とビジネスの条件をやり合っている姿です。当社もビジネスパートナーへのアタックの手を緩めるわけにはいかない!と力をもらった瞬間でした。みんなも元気出して世界にチャレンジしようよ!

Profile

岡村淳一(おかむら じゅんいち)

1986年に大手電機メーカーに入社し、半導体研究所に配属。CMOS・DRAMが 黎明(れいめい)期のデバイス開発に携わる。1996年よりDDR DRAM の開発チーム責任者として米国IBM(バーリントン)に駐在。駐在中は、「IBMで短パンとサンダルで仕事をする初めての日本人」という名誉もいただいた。1999年に帰国し、DRAM 混載開発チームの所属となるが、縁あってスタートアップ期のザインエレクトロニクスに転職。高速シリアルインタフェース関連の開発とファブレス半導体企業の立ち上げを経験する。1999年にシニアエンジニア、2002年に第一ビジネスユニット長の役職に就く。

2006年に、エンジニア仲間3人で、Trigence Semiconductorを設立。2007年にザインエレクトロニクスを退社した。現在、Trigence Semiconductorの専従役員兼、庶務、会計、開発担当、広報営業として活動中。2011年にはシリコンバレーに子会社であるDnoteを設立した。



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