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» 2012年02月22日 10時00分 UPDATE

Analog ABC(アナログ技術基礎講座):第36回 「相対ばらつき」も考慮してBand Gap Referenceを設計 (1/2)

第33回以降、「Band Gap Reference(BGR)」について解説してきました。第33回ではBGR回路の基本原理、第34回と第35回では温度変化や電源雑音への対策を紹介しました。今回はBGR回路編の最終回として、「トランジスタの相対ばらつきと、BGR回路の起動」に焦点を当てます。

[美齊津摂夫,ディー・クルー・テクノロジーズ]

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 本連載では第33回以降、さまざまな電子回路の基準電圧を生み出すアナログ回路である「Band Gap Reference(BGR)」について解説してきました。まず第33回ではBGR回路の基本原理を解説しました。基本的なBGR回路では、温度変化に対して基準電圧が変動してしまったり、電源電圧に含まれる雑音に弱いといった課題がありました。そこで、第34回では温度変化による悪影響への対策を、第35回では電源雑音への耐性を高める方法を紹介してきました。

 今回はBGR回路編の最後になります。「トランジスタの相対ばらつきと、BGR回路の起動」に焦点を当てます。本連載の「第8回 エミッタ接地回路にばらつき対策施す」では、トランジスタの特性には製造バラツキがあるということを紹介しました。安定した電圧を生成する役割を持ったBGR回路には、この製造ばらつきに対して、十分な対策が必要です。

BGR回路が正常に起動しない!?

 トランジスタの相対ばらつきを疑似的に入れるために、図1のようにオペアンプの入力にオフセット電圧(Voff)を発生させるV2を挿入しました。このオフセット電圧をパラメータにして、BGR回路の起動特性を調べてみましょう。回路の電源電圧を0Vから通常の電圧まで上げることを「回路の起動」と呼びます。設計時、電源は通常状態(例えば3.3V)として計算やシミュレーションをすることがほとんどですが、実際には電源電圧は最初は0Vから通常状態の電圧に変化します。この過程に問題が潜んでいることがあるので、回路の起動は必ず確認する必要があるアイテムです。

図 図1 第33回以降設計してきた「Band Gap Reference(BGR)」 トランジスタの相対ばらつきを疑似的に入れるために、図1のようにオペアンプの入力にオフセット電圧(Voff)を発生させるV2を挿入しました。

 BGR回路の出力電圧(VBGR)の起動特性を図2に示しました。オフセット電圧(Voff)を0、5、10、15、20mVと増やしています。電源を起動する時間が短いと、「いきおい」で起動してしまうことがあります。これを避けるために、図2のシミュレーションでは電源電圧(VDD)を1秒かけてゆっくりと立ち上げました。Voffが10mVまではBGR回路を起動できて、一定の電圧を出力できています*1)。ところが、Voffが15mVと20mVではVBGRが0.2V程度になり、正常な電圧に起動できていません。

*1)起動できていますが、オフセット電圧(Voff)の分だけずれた電圧で起動しています。

図 図2 トランジスタの相対ばらつきがあるBGR回路の起動特性 相対ばらつきに起因したオフセット電圧が高くなると、BGR回路は正常に起動できなくなります。

 なぜこのような現象が発生するかというと、オフセット電圧(Voff)の違いによって、BGR回路を構成するオペンアンプの負帰還の収束点が複数になってしまうからです。

 

 図3に示したBGR回路の基本部分の回路図を使って、詳しく説明しましょう。この基本部分の回路の動作は、本連載の「第33回 Band Gap Referenceの原理を出発点から解説」を参照してください。

図 図3  BGR回路の基本部分の回路図 この回路図を使ってBGR回路の起動時の状況を分析します。

 図3の電流源I1を変化させたときのBGR回路の出力電圧VBGR、Va、Vb、その差電圧(Va−Vb)をグラフにすると、図4のようになります。図4の下図は、「A」、「B」、「C」という3つの領域に分けられます。VaとVbの差電圧が正(Va>Vb)なら吐き出し電流(図3の電流源I1の電流値)を増やしてVBGRを高くし(A領域)、逆に差電圧が負(Va<Vb)なら吐き出し電流を減らしてVBGRを低くする(B領域)ように、BGR回路を構成するオペアンプは動作します。問題となるのは、図4のC領域のときです。

図 図4  BGR回路の出力電圧VBGR、Va、Vb、その差電圧(Va−Vb)の変化 下側のグラフに示した「C領域」がBGR回路が正常に起動しない原因です。

 オフセット電圧(Voff)がゼロのときはC領域は存在しないのですが、Voffがあるために吐き出し電流がゼロ付近のとき差電圧が負となるC領域ができてしまうのです。差電圧が負なので、B領域のように吐き出し電流を減らしてVBGRを下げようと動作するのですが、正常な収束点にどうしても達することはできません。これが、オフセット電圧(Voff)があると正常に起動できなくなる理由です。

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