メディア

ARMの性能を超えるか、MIPSが新Aptivプロセッサで全面対抗プロセッサ/マイコン(1/3 ページ)

MIPS Technologiesは、プロセッサIPコアを新コア「Aptiv」の3シリーズに統合し、処理性能を高めた。ARMのIPコアよりも少ない面積に高性能なコアを集積できるという。Android対応と併せて、開発コストの低さ、開発期間の短さもうたう。

» 2012年05月11日 09時30分 公開
[畑陽一郎,EE Times Japan]
ARMを超えるかMIPS、新Aptivプロセッサで全面対抗 コアの内部構成

 スマートフォンやタブレットをはじめ、ネットワーク機器やストレージ機器などさまざまな用途に欠かせないプロセッサ。プロセッサ業界では、米Intelのように自社で設計したチップを主に製造する企業の他に、英ARMや米MIPS Technologiesのようにプロセッサの「設計図」(IPコア)だけを提供する企業の地位が高まっている。

 ARMは、「Cortex-M」シリーズのような低消費電力品から「Cortex-A」シリーズのような高性能品までさまざまなプロセッサIPコアを取りそろえており、組み込み用途のプロセッサを中心に高いシェアを維持している。特にAndroid搭載製品で有力だ。

ARMに対する優位性をうたう

 MIPS Technologiesは、プロセッサIPコアを多数開発、提供しており、例えばセットトップボックス(STB)では高いシェアを有する。同社は2012年5月10日、内部構成を改善することで、大幅な性能向上を実現したという新プロセッサIPコアシリーズ「Aptiv」を発表。ARMに対する優位性を訴求する。「2012年5月から6月にかけて順次提供を開始するAptivシリーズのIPコアを利用すれば、ARMの同等のIPコアよりも高速で小型のプロセッサを各社が製造できるようになる」(ミップス・テクノロジーズ 日本支社長を務める中上一史氏)。

 ライセンスを受ける企業(ライセンシー)にとっても、MIPSコアに魅力があるという。ARMコアはプロセッサの中核部分のIPと周辺部分の複数のIPを別々にライセンスしており、実装する際の最適化はライセンシー側の責任だ。最適化ツールも用意されているが、これもライセンス対象品である。「一方、Aptivコアは最適化が施された状態で一体としてライセンスする。製品に実プロセッサに至るまでの開発コストを低く、開発期間を短くできる。ライセンシー各社は12〜18カ月で製品化が可能だ」(中上氏)。

 Android市場への備えも万全であるという。「Google Placesで提供されているAndroid用アプリケーションのうち、8割弱はそのままMIPSコアを採用したタブレットなどで動作する。例えば高いグラフィックス性能を実現する際には、ARM、MIPSにかかわらずAndroidのNDK(Native Development Kit)を使ってグラフィックス機能を直接利用する必要がある。このNDKについてもMIPS版の提供を開始した」(中上氏)(関連記事「Googleが「MIPS版」Androidにてこ入れ」)。

 さらにAptivシリーズは従来と同じMIPS32命令セットを利用しているため、旧コア、Aptivコアで同一のプログラムが動作する。「IPコアシリーズごとに命令セットが異なる(サブセットになっている)ARMと比較すると、当社のプロセッサ向けのアプリケーションプログラムは、市場が分断されないというメリットがある」(中上氏)。

高性能をうたう

 プロセッサのライセンスを受ける企業にとっては、開発の容易さと併せて実際にどの程度の性能を実現できるかが重要だ。

 Aptivは従来コア6シリーズを性能ごとに、3シリーズに再編した改良版のIPコアファミリーだ。処理性能が高い「proAptiv」(従来の1074Kシリーズ、74Kシリーズの後継)の他、マルチスレッド対応を進めた「interAptiv」(同1004K、34K、24K)、低消費電力をうたう「microAptiv」(同M14K)である*1)

 「どのシリーズも対応するARMコアと比較して処理性能が高い。整数演算性能だけを比較したDMIPS値では違いが分かりにくいが、実処理に近いCoreMark値*2)で比較すると、同一動作周波数で最大50%も上回る。」(中上氏)。

*1) Aptivは「Active」を意識した造語。3つのコアIPの頭文字を並べると、MIPSの最初の3文字「mip」となる。今回発表されていない「s」は、64ビット対応のコアIPである。なお、interAptivでは、proAptivと同様の構成を採りつつ、ハードウェアスケジューラによりマルチスレッド対応を強化した。複数の命令キューを実行パイプラインに自動的に再配置することで、プログラマがマルチスレッド用にプログラムをリコンパイルすることなく、高い処理性能が得られるという。

*2) DMIPS(Dhrystone Million Instructions Per Second)値はプロセッサの整数演算性能を調べるためのベンチマークテストプログラムの測定値。バイナリサイズが2Kバイト以下と小さく、プロセッサの入出力性能を測定できない。さらに測定結果がコンパイラの性能に依存する。CoreMark値は、EEMBC(Embedded Microprocessor Benchmark Consortium)が開発したベンチマークテストプログラムの測定値。8ビット、16ビット、32ビットの処理を、それぞれほぼ同量ずつ実行する複数のコア関数から構成されている。リンクトリストやCRC演算、行列操作などより実処理を反映した内容になっているため、DMIPS値と比較して実際の処理性能を反映していると考えられている。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.