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» 2012年06月11日 08時00分 UPDATE

EETweets 岡村淳一のハイテクベンチャー七転八起 ―番外編―:ベンチャーキャピタルから投資を受ける、「ワイルドだろう〜」 (1/2)

フルデジタルオーディオ用信号処理技術「Dnote」の事業化を目指している当社は、Intel Capitalから大規模な投資を受けることになりました。起業家とベンチャーキャピタルはどのような関係を構築すべきでしょうか。いわば「ポケモン」と「ポケモントレーナー」のように、相互の信頼関係の上に同じ夢を描けることが重要です。

[岡村淳一,Trigence Semiconductor]

@trigence」のつぶやきを出発点に、企業経営のあれこれや、エレクトロニクス業界に思うこと、若い技術者へのメッセージを連載中!!→「EETweets」一覧

 皆さん、こんにちは! この原稿は出張先の中国から成田に戻る飛行機の中で書いています。EE Times Japanの編集担当者から、当社(Trigence Semiconductor)がIntelの戦略投資部門であるIntel Capitalから投資を受けたという、2012年5月29日のニュースリリースに合わせて、ベンチャーキャピタル(VC)とベンチャー企業に関する話題を番外編として書いてはどうか? という依頼を頂いたからです(ニュースリリース関連記事)。MBAの教育を受けたことのない小生が、ベンチャー投資やVCについてまとめるのは正直気が引けるのですが、小生の実体験が少しでもエンジニアの皆さんの今後のチャレンジの助けになればと思い、筆を取りました。

 ただ、「VC投資とは……」とか、「VCの効用とは……」といった話は専門家に任せます。このような内容を皆さんに偉そうにお話しするほどの知識を持ち合わせていないからです。小生がお話できるのは、あくまで自分自身が実際にやってきたこと。日本や米国のVCに自分自身でプレゼンテーションをしてきた経験しかありません。加えて、国の助成金を得た時の経験も交えながら、開発資金を第三者から調達して事業を立ち上げるチャレンジについてお話しましょう。

図 Trigence Semiconductorが開発したフルデジタルスピーカー向け信号処理技術「Dnote」用の専用LSI

海外も含めて20社近いVCに技術説明

 言うまでもなく、開発と資金は切っても切れない関係です。企業の中でエンジニアとして働いていると、開発予算という資金の枠組みが組織に与えられるので、その資金自体を集めてくるという仕事に直接従事することはあまりないと思います。一般には、中小企業やベンチャー企業が自らの手元資金の中から開発資金を準備することは難しい。その一方で、世の中には十分な資金を持っていて、その資金を有効に生かして世の中に貢献する方法や、新しい事業を興す手段を探している人もいます。VCの役目は、エンジニアが考えたアイデアや新技術と資金を持つ人間の橋渡しをすることです。と、ここまでは教科書のお話です。

 それでは、どのタイミングでVCと付き合うのか? というと、教科書を見ると資金需要や事業計画を立てた時点で……というのが一般論として書かれていますよね。当社の場合は、デジタルオーディオ用の信号処理技術「Dnote」という大学発の新技術を担いで事業化しようと考えた時点で既に、常に頭の片隅に第三者から開発資金を調達するという目標がありました。ですから、Dnoteの開発とプロモーションを本格的に開始した2008年には、机の引き出しにしまっておいた名刺の束をひっくり返し、投資系の金融関係者や事業的に関連ありそうなエンジニア、過去にインタビューや記事を執筆してもらった記者といったできる限りのコネクションを対象に大掛かりなプレスリリースを決行しました。目的は当然、Dnote技術に興味がある機器メーカーとのコネクションを作ることですが、同時に将来必ず不可欠となるVCとのコネクションを作ることでもありました。

図 Trigence Semiconductorの開発の歴史

 それ以来、チャンスや問い合わせがあれば、具体的な資金計画や事業計画もまとめていない段階から、海外も含めて20社近いVCにDnote技術を説明してきました。一般論から言えば時間の無駄かもしれません。VCの立場から見たって、「事業計画もあやふやなのに、お門違いも甚だしい!!」って憤慨されても仕方ありません。事実、そういうお叱りをエンジェルファンドの元経営者の方から受けたこともあります。だけど小生にしてみれば、「場数を踏む」ことほど、本番で勝負する際に役に立つことはありません。強い相手と練習試合をすることほど、成長するために有効な訓練はありませんよね。

 「VCに対する技術説明では、ユーザーになる機器メーカーの技術者に対するプレゼンテーションとは全く異なる視点や切り口のアピールが必要だ」ということ学んだのは、このような練習試合のおかげです。事業化や技術の応用に関する思いがけないアイデアの種を生みだす方法や、英語を使った技術説明に必要な言い回し、琴線に響くアピールの仕方、関連する事業部門への紹介方法などなど、練習試合から肌で学んだことは語り尽くせないほどたくさんあります。小生が強調したいのは、まずは行動して練習試合や対外試合を積むことが、何より必要だということです。教科書や座学で得られる知識は、しょせんは限定的で応用が利かないと感じています。

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