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塗るだけで発電する「ペンキ」の実現かエネルギー技術 エネルギーハーベスティング(2/3 ページ)

» 2012年06月20日 16時30分 公開
[畑陽一郎,EE Times Japan]

スピンゼーベック効果を利用

 NECによれば、今回の成果は大きく2つあり、熱電素子として働く適切な磁性体を発見したことと、塗布プロセスを開発したことである。しかし、ゼーベック効果をそのまま使っていては、塗布プロセスは利用できない。同社は、ゼーベック効果ではなく、近年発見されたばかりの「スピンゼーベック効果」を利用した。

 スピンゼーベック効果は、強磁性材料に温度差を付けることで磁気の流れとしての「スピン流」が起こる現象だ(図2)。スピン流とは電流が流れることなく、スピンだけが流れる現象。通常の電流では上向きスピンの電子と下向きスピンの電子が同数、同じ方向に移動する。この場合、スピン流は生じない。上向きスピンの電子と下向きスピンの電子を逆方向(反並行)に動かすことができれば、見かけ上電流は流れていないものの、スピンは移動する。これがスピン流だ。

 「今回のスピンゼーベック効果は、磁性体と金属の界面で起こる現象だ。磁性体と金属の接合部(界面)でスピンが流れる。スピン流は金属層の電子と磁性体の磁気モーメント(スピン)の温度が違う場合に発生する」(東北大学金属材料研究所で助教を務める内田健一氏)。

図2 スピンゼーベック効果の概念図 強磁性金属の両端に温度差を与えることで、逆向きのスピンが両側から流れ出す。スピンゼーベック効果は内田健一氏の卒業研究の一環として2008年に発見された「新」現象である。出典:東北大学

 開発した素子の構造はどうなっているのだろうか。1mm角の半導体対が並ぶのではなく、基板の上に2層の材料を積層した単純な構造を採る。まず、基板の上に磁性体を塗布法で成膜し、焼き付けた。磁性体の材料はビスマス(Bi)をドープした60nm厚のイットリウム鉄ガーネット(YIG、Y2Fe5O12)である。その上部に10nm厚の白金(Pt)を配置した。「白金を用いた理由はスピン流を生み出すのに、適した性質を備えているからだ。高価な白金の代わりに、銅に微量な別の元素をドープした材料でも同じような効果が得られることが分かっている」(内田氏)。

 スピン流から電流を作り出すには、2006年に東北大学で発見された逆スピンホール効果を利用したという。金属に入ったスピン流と直交する方向に電流を取り出すことができる。

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