インタビュー
» 2012年07月27日 08時00分 UPDATE

ディスプレイ技術 タッチパネル:「I Love You」はペン入力でこそ伝わる、モバイルUI開発の今を聞く (1/2)

スマートフォンやタブレットPC、ノートPCといったモバイル機器を、いかに直感的で分かりやすく使いこなすか。イスラエルに本社を構えるN-trigは、マルチタッチパネルとアクティブ型ペン入力の双方がUIとして不可欠だと主張する。

[前川慎光,EE Times Japan]

 味気ない「Times New Roman」のフォントで、あなたの思いが伝わるだろうか。メールやTwitter、Facebookといった情報伝達/コミュニケ―ションサービス上に並んだ「タイプされた文字」にあなたの温かみや個性があるだろうか――。

 そんな問題意識を語るのは、イスラエルに本社を構えるN-trig(エヌトリグ)というファブレス半導体企業でCEOを務める Amichai Ben-David氏である。同社が目指すのは、スマートフォンやタブレットPC、ノートPCといったモバイル機器を直感的で分かりやすく使いこなす、情報入力手段の提供である。マルチタッチパネルとペン入力の双方に対応した制御モジュールの開発を進めている。Ben-David氏に、モバイル機器のUIにペン入力が不可欠だと考える理由や、N-trigが提供する制御モジュールの特徴などを聞いた。

図 N-trigのCEOを務める Amichai Ben-David氏(右)と、Vice President&General Manager, APACのYaki Luzon氏(左)

EE Times Japan(EETJ) 現在、モバイル機器に情報を入力する手段として、タッチパネルが広く使われている。どのような市場で、モバイル機器のUIとしてペン入力が重要だと考えているのか?

Ben-David氏 3つの魅力的な市場があると考えている。それは、「教育」、「オフィス(企業)」、「コミュニケーション」だ。

 教育の現場は、これからどのように変化していくだろうか。考えられるのは、タブレットPCの導入だ。数々の教科書がタブレットPCに収まることで、大きくて重いリュックサックを持ち運ぶ必要がなくなるだろう。タブレットPCを使うことで、問題を解いた結果や使った文書を友人や教師にリアルタイムに送り、共有するといったことも可能になる。

 ただ、教育の現場でタブレットPCを使うからといって、ペンを使った文字入力がなくなり、キーボード入力だけになるわけではないだろう。文字を書くことは、内容の理解や記憶といった能力を発達させる上で重要だからだ。数学の授業を考えてみても、数式を記入するときにキーボードは現実的ではないだろう。ペンだからこそ、数式をスムーズにノートに写すことができる。最近では、数式を記入すると、自動で計算してくれるといったモバイル端末ならではのアプリケーションソフトウェアも登場している。

 次は、企業のオフィスの利用シーンを考えてみよう。まず、ドキュメントやプレゼンテーション資料に対するコメントを、印刷せずに自由に記入して作成者に返すことができる。ペン入力を使えば、決済書類に署名するときにも、現在のように印刷して署名し、さらにスキャンして電子化というような作業は不要になる。

 最後はコミュニケーションだ。メールやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は、誰もが使っているコミュニケーションツールだ。ただ現在、このようなコミュニケーションツールで相手の画面に映し出されるのは、キーボードでタイピングされた文字の羅列だ。タイプには、温かみや個性がない。「I love you」というメッセージを彼女に送るとき、「Times New Roman」で表記された文字は何と味気ないのだろう。ロマンチックではない。以上のような利用シーンを中心に、ペン入力というUIはこれからモバイル機器の領域でどんどん使われていくと確信している。

図 N-trigのマルチタッチ/ペン入力制御モジュールの概要

 実は、2006年にN-trigのCEOに就任したとき、私の最初のミッションは「ペン入力だけでは不十分、タッチパネルも必要」ということを機器メーカーやOEMベンダーに分かってもらうことだった。その当時、ノートPCなどのモバイル機器にペン入力のUIが使われることはあっても、タッチパネルは使われていなかった。われわれが、タッチパネルとペン入力を組み合わせたUIを提案しても、多くの企業は、なぜタッチパネルが必要なのか?タッチパネルは不要だと答えた。

 がらっと状況が変わったきっかけは、Appleが2007年に発売したスマートフォン「iPhone」だ。マルチタッチパネルを搭載し、直感的な情報入力や操作を実現したことが画期的だった。iPhone発売以降、多くのモバイル機器で、ペン入力ではなく、タッチパネルが使われるようになったのは周知の通りである。

 われわれが今伝えたいことは、「マルチタッチパネルだけでは不十分、ペン入力も必要」というメッセージだ。魅力的なUIを実現するには、タッチパネルだけでも、ペン入力だけでも足りない。1999年から2006年がペン入力のUIが注目された期間、2007年から2011年がタッチパネルが注目された期間だとすると、2012年からはマルチタッチパネルとペン入力の両者がモバイル機器のUIとして融合する時代に変化していくと考えている。

図 2012年7月に発表した制御モジュールの概要
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