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ますます人と寄り添う機器へ、エプソンが“ウェアラブル”市場に参入センシング技術 GPS測位

セイコーエプソンがウェアラブル市場を対象にした第1弾として発売するGPS機能付きのリスト型ランニング機器「WristableGPS」。GPSモジュール、位置補正アルゴリズム、薄型フラットアンテナといった、さまざまな要素技術を活用することで、ユーザーの要望に応える製品に仕上げた。

» 2012年08月09日 11時37分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 セイコーエプソンは2012年8月、スポーツ、へルスケア、医療といった分野を対象にしたウェアラブル機器市場に参入し、スポーツ分野に向けた商品の第1弾としてGPS機能付きのリスト型ランニング機器「WristableGPS」を8月23日に発売する。腕に装着することで、ランニングなどの走行距離やペースなどを正確に測定し、記録できる機器である。同社は、2012年2月にGPS機能付きのリスト型ランニング機器を開発したと発表していたが、今回正式に発売時期や商品の詳細を公開した(関連記事)。

図 セイコーエプソンがスポーツ市場を対象にした第1弾として発売するGPS機能付きのリスト型ランニング機器「WristableGPS」

 同社が8月8日に開催した商品説明会に登壇したセイコーエプソン代表取締役社長の碓井稔氏は、「当社が強みとする『省・小・精』をキーワードにした要素技術を使うことで、人とコンピュータを繋ぐウェアラブル機器の製品化が可能になる」と、スポーツやヘルスケア、医療といった同社にとって新たな市場に対する意気込みを語った。ウェアブル機器をいつも身に付けて有用なデータを継続的に収集することで、例えばスポーツ分野では成績の記録やフォームの改善、ヘルスケア分野では生活習慣の改善、医療分野では運動療法支援といった効果が見込める。

図 セイコーエプソンはウェアラブル市場に参入し、スポーツ、ヘルスケア、医療を対象にした機器を製品化する
ウェアラブルについての同社の説明資料

要素技術の向上で可能になる“ウェアラブル”

 セイコーエプソンが2012年に発売するWristableGPSは、(1)長時間稼働、(2)計測精度の高さ、(3)装着性の高さなどが特徴である。いずれも、エレクトロニクスの要素技術をうまく盛り込むことで実現している。

図 ユーザーの要望に応えるためにさまざまな要素技術を活用

 (1)長時間稼働については、消費電力が25mWと低いGPSモジュールを独自に開発することで実現した。WristableGPSの電池容量は200mAhで、GPS測位時の連続稼働時間は14時間である。一般に、GPSモジュールの消費電力と測位精度は深く関係しているが、消費電力を削減しつつも、高い測位精度を維持したという。具体的には、周囲環境にも依存するものの、オープンスカイ(周囲に障害物がない環境)において95%の確率で2m以内である。

 (2)計測精度の高さについては、精度の高いGPSモジュールに独自の位置補正アルゴリズムを組み合わせることで実現した。詳細は明かしていないが、測位精度が非常に高い測位ポイントを基準にして、他の測位ポイントを評価する仕組みを盛り込んだという。

採用した要素技術の説明資料(左)と、搭載した位置補正アルゴリズムの説明資料(右)

 (3)装着性の高さについては、筐体(きょうたい)の設計など幾つかのポイントがあるが、筐体端部にGPSアンテナを配置するのではなく、独自開発した薄型フラットアンテナを採用することも貢献した。具体的には、液晶パネル/基板と電池の間にGPSアンテナを平面状に取り付けている。

 地上に到達時のGPS信号は非常に微弱であるため、GPSアンテナは信号を受信しやすいように見通しの良い場所に配置するのが一般的である。液晶パネル/基板の下部にGPSアンテナを配置するという同社の手法は、GPS信号を受信するという観点ではセオリーから外れる。ただ、通常のGPSアンテナに比べて良好な特性の薄型フラットアンテナを独自開発したことで、液晶パネル/基板の下部に置いたときにも、一般的なGPSアンテナと同等の受信特性を確保できているという。

本文では触れていないが、WristableGPSには特徴あるストライドセンサーを搭載した(左)。右は、独自開発した薄型フラットアンテナの説明。

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