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人材育成、人事部はもう当てにできない!?いまどきエンジニアの育て方(9)(1/2 ページ)

ひと昔前までは、人事部にも技術畑出身の人間がいたものでした。そのため、開発部門にどんな人材を採用すればいいのか、技術研修で新入社員にどんなことを教えればいいのか、人事部はきちんと把握していたのです。OJTを開発現場に任せきりにしてしまう――。エンジニア出身者が人事部にいない企業ほど、そのような傾向があるのかもしれません。

» 2012年08月20日 07時00分 公開
[世古雅人,カレンコンサルティング]

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 入社2年目の佐々木さんに対して、ジェネレーションギャップやコミュニケーションの壁を感じながらも、何とか佐々木さんを“できるエンジニア”に育てたい田中課長。次期新製品の開発においてハードウェア設計の要となることで、一皮むけてもらいたいと願っています。一方、なかなか“バッターボックス”に向かおうとしなかった佐々木さんも、少しずつ田中課長の熱意を感じ始めていました。そのような中、田中課長は、OJT(On the Job Training)を開発現場に任せきりにしている人事部のやり方に対して、疑問と不満を持ち始めます。開発の人材が育たなくて困るのは、現場で働く自分たちだということを誰よりも分かっているからです。

22年前、田中課長が新人だったころ

 田中課長は、自分自身が新入社員だった22年前のことを思い出していました。

田中

3カ月間の新入社員研修を経て開発部に配属されたときは、ワクワクしたなあ。それに、先輩や人事部の課長から「仕事はどうだい?」と声をかけられると、“気にかけてもらってるんだ”とうれしくなったものだ。


田中

当時の新入社員研修では、ハードウェア、ソフトウェアの技術研修はもちろん、製造部門や検査部門でも実習した。あれで会社全体の仕事の流れがつかめるようになったから、後になってすごく役に立ったな。


田中

でも、今は人事部の社員が現場を歩いてる姿はほとんど見ない。新入社員研修にしても、わずか1カ月で終わり、すぐに現場に配属される。これでいいのだろうか……。


 回想するうちに、田中課長自身も、若手のころは“気にかけてもらっている”ことをうれしく思っていたのを思い出しました。いまどきの若手社員と変わらないということに気が付いたのです。

今はなぜ、若手の育成がやりにくくなっているのか

 田中課長は、自分自身の新入社員時代を振り返りながら、若手の育成ができていない原因を考え始めました。

自分のことだけで手いっぱいの開発現場

 製品のライフサイクルが短くなり、特にアジアのメーカーと常にコスト競争が求められる現在では、いかに早く、安く、製品を市場に投入できるかに成否がかかっている。したがって、開発時間を短縮させるために、どうしても“できるエンジニア”に仕事が集中しがちだ。さらに、われわれ管理職は余計な管理業務もやらなければならず、実質、若手の育成は現場に任せきりにしている。でも、みんな自分のことだけで手いっぱいだ。新入社員どころか、同僚にすら、構っていられない……。

 いつから、こんな開発現場になってしまったのだろう? ただし、組織学習を踏まえた「全員参加のOJT」も、少しずつではあるが始まっている。みんながちょっとずつ自分の時間を割いて、若手エンジニアの育成に取り組んでいるのだ。

 技術のことは開発現場で教えられるが、問題はその時間が取れないことだ。一方で、開発が遅れて困るのは自分たちだ。自分の時間を削ってでも、若手のために勉強会などを開くことが必要だろう。

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